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「闇の中」ページ1


何も見えない。呑まれた、闇に。くそおっ…
おれの力はこんなものなのか…ダークのカードは強力なカードだ。
だが こんなに簡単に呑まれてしまうなんて。
おれの力はそんなものでしかないのか?

あいつは 大丈夫なんだろうか。
あいつは大丈夫だ。絶対。

突然 直前の記憶が映像化して 硬直する。
いまにも触れそうな唇。体温と重み。そして 何故こんなにも簡単に呑まれてしまったのかを漠然とだが理解する。

おれは……

だがあいつは何も感じないのか。あいつは本当に呑まれてないのか?
あいつは……
いや あいつ自身が呑まれていなくても真っ暗なはずだ。こんな闇の中にひとりっきりになったら あいつ 間違いなく泣いている。 むやみに走り回って 脅えているはずだ。

泣くな!考えるんだ!

思わず叫んでいる。聞こえるはずがない。クロウ リードの魔力で封じ込めらている以上 いかに強い魔力を持つ彼でも メッセージを送ることはできない。 そのことは 誰よりもよくわかっているのだ。だが叫んでいる。本当は 彼女が解決法を見つけることだけが 彼自身をこの闇から救い出すことなのだが 彼は 彼女を闇から救うことしか考えていない。彼も走っている。どこへ かも 何のために かも彼にだってわかるはずがない。

走りながら 手が法玉を捜している。おれはこの闇を切れるだろうか?手がじっとりとしている。

手が止まる。愕然とする。足も とまっている。
ない! ポケットがないのだ。玉がはいっている制服のポケット。今オレは制服を着ていない。大道寺!!!あいつ 制服脱がせてた…のか?!
恥ずかしいドレスを着せられていることに意識が集中していて 服を剥がれていることに気づいてなかったのだ。
あいつ なんであんなに手際いいんだ???

再び 到底魔力を使えそうもない状態に陥ってしまう。魔力どころか 通常の思考力すらない。

もう走ることさえできない。このみっともない服を着た自分。そして 制服を脱がされている自分をつい 想像してしまう…
あたまが真っ白になっている。

真っ白なまま 時が過ぎる。魔力の闇の中に封じられていても 彼の中では 相当に長い空白の時間が過ぎていく。何もできないまま 確実に疲弊していく。何もできない時のほうが 全力で何かをしている時よりも はるかに消耗するものだ などという考えが ぼんやりとよぎっていく。

突然あいつの声が響く。戻ったんだ。良かった。
あいつは 無邪気におれを抱きすくめている。
おれは…無力だ。