魔界村　無血開城・ロースコアプレイ　「アルゴスの戦士の奇妙な冒険｣

　おぅ、俺だ、アルゴスの戦士だ。みんな俺のことを独眼鉄先輩などと呼ぶが、俺はヒゲはウォーズマンと同じで毎日そっているし、片目のヤブ睨みではないし、ましてやゴンダクレなどでは決してないぞ。ただ、愛用の武器、トゲ付きヨーヨーが同じ物であるだけだ。あっちは高校生だしな、アルゴール守って何十年の俺とは闘いの年季が違うぜぇ。くれぐれも間違いのないように頼むぜ。よーろしくぅ！

　…ところで、最近妙なことがあってな、話しておきたいと思っていたところだったのさ。聞いちゃあくれねえか？

　…この前、ついうっかり足を滑らして海に転落し、戦死してしまったんだ。何、そんなに驚くことじゃない。いつものことさ、すぐに巨大なジジイ（インドラ）の光で蘇生してもらえる。もらえるはずだったんだが…。どうやら黒潮に流されてしまったようだ。アルゴールから遠く離れたその地は、世間ではラクーンシティとか呼ばれているらしい。どう見ても村だったが…。ともかく俺は持ち前の大和魂で目覚めた。が、どうも体の調子がおかしい。巨大ジジイに蘇生してもらう前に、ナントカウィルスとやらに感染してゾンビとなってしまったようだ。加えて愛用の赤タイツやバンダナ、何より1番大事なトゲ付きヨーヨーがない。替わりに臭くて重い鎧を着せられ、下着も趣味の悪いイチゴ柄、ヒゲも伸び放題、手元には投げるにはデカすぎる槍がある。アルゴールに戻らなくちゃなんねえが、まずこの辛気臭え村を出る必要がある。どうやらこの村には妖怪どもがしこたま巣食っているようだが、こんなヘボい武器じゃあ如何ともしがたい。しかたがねえ、突っ走るぜ！槍を放り捨て、俺は妖怪どもの群れの中へと突っ込んでいった…。

　…ん、何でアルゴール出身の俺に大和魂があるのかだと？　キン肉星出身のキン肉スグルが持ってるんだ、俺にあっても不思議じゃあないだろう？　細かいことを気にしてると、腕力や胸力が伸びないぜ！

　 村の出口を目指す俺に、さっそくキョンシーどもが群がってくる。霊験導師は何をしているんだ！　まったく…。まず背後から来る奴を跳び越し、そのあと前の2体を跳び越す。同時に3体湧き出てくるが、それぞれ速さが違うようだ。それぞれのゾンビ間にスペースを作り、そこに飛び込むように進めば楽勝だぜ。

　…おっと、こんなところにわらいぶくろ（おどるほうせき）がいるじゃねえか。ドラクエ3あたりで金稼ぎのカモにでもなっていりゃいいものを…。もちろん跳び越えてしまう。じっとしてるだけとは、芸のねえ奴だ。

　土手が見えてくるあたりで、カラスの野郎が俺の屍肉を突付こうと待ち構えていやがる。タダ食いはさせねえ。周りにゾンビがいないときを見計らってカラスに挑めば、跳び越すのは楽だ。

　しかし、このまま土手の下側を進むのは得策ではない。パックンフラワーの吐く弾とゾンビの複合攻撃を無傷で抜けるのはおそらく無理だろう。最初のはしごを登り、土手の上にゾンビを出現させてから土手から降り、守りの薄くなった下段を突っ走る。しょせん腐った脳ミソでは、俺の作戦は見破れまい。沙羅曼蛇1面のボスぐらいの脳ミソを持ってくるんだったな、カーカカカ。

　鼻歌交じりの俺だったが、奇妙な人影を見て背筋が凍りついてしまった。なんだぁ、あの赤い奴は!?　赤すぎる！　神戸大学ゲーム研究会のニクリとニクラ嬢は、「（サントリーウィスキー）レッドを飲むのにコップは要りません！」と言ってラッパのみするほどに超レッドだが、この赤い奴も強敵に違いない。相手にとって不足はねえ！

　赤い奴と闘う前に、傍のカラスを片付けることにする。そろりと近づいて行くと、カラスだけが突っ込んでくる。軽く跳び越え、今度はおまえだ、赤い奴！

　あぐらをかく赤い奴の直前にわらいぶくろが控えているので、跳び越えて奴に突っ込む。奴はビビッて後ろに飛び退るが、上空からこちらめがけて突っ込んでくる。こちらの身体をかすめるぐらいのときを見計らって後ろに跳べば、奴の渾身のタックルをかわせる。その隙に前進し、浮島に飛び乗り後半へ。

　もう結構走ったが、まだ赤い奴は追ってくる。官憲はどうした。ストーカー規制法とかあるんじゃないのか。俺はかなりの精神的苦痛を被っているというのに。まあいい、とことん付き合おうじゃないか。後半しばらく行くと、完全武装のヨロイ男（俺もだが）が襲い掛かってくる。浮かんだ時に下を抜ければよいが、赤い奴が追ってきているため立ち止まる余裕がない。3体連なって跳んでくるうちの、先頭の奴が下に沈んだタイミングを見計らって、1体目と2体目の隙間をジャンプで抜ける。ありゃあ、リンクとかいうボーズに殺されたタートナックの怨念か何かだったのか？

　ヨロイ男ラッシュをくぐり抜けると、パックンフラワーが居やがる。奴だけならまだしも、奴の直後にはわらいぶくろが2体も転がっているじゃあねえか！　赤い奴の追跡も相変わらず。仕方ねえ、ここまで温存してきた技を使うしかねえな。いくぜ、瞬脱装甲弾！　パックンフラワーに接触し、ヨロイが弾けた際に生まれる無敵時間を利用して全てすり抜けてしまえ。こうすればわらいぶくろがスコアに加算される(？)こともないしな。全国1億2千万のアルゴスの戦士ファンにパンツ一丁の姿をさらしてしまうことになるが、背に腹は変えられねえ。そうそう、パックンフラワーに突っ込む時には背面飛びで行くことを忘れずにな。ヨロイが弾けたときには背後に飛ばされるが、それを利用しない手はない。少しでも距離を稼いでおけ。

　溝を飛び越えると、今度はチクワが飛んでくる。獅子丸に喰われたり、ジンゾウに鉄アレイと一緒に放り投げられたチクワ達の霊だろうか。何故かネギを投げてくるが、チクワとネギ。なかなか良い食い合わせじゃあないか。しかしここを乗り切るのは、並大抵の戦士には無理だろう。相変わらずの赤い奴の追っかけに加え、空とぶチクワ、乱れ飛ぶネギ、パックンフラワーは痰を吐いてくる上にわらいぶくろまで俺の邪魔をする。ここの敵には決まった出現パターンはなく、その場その場で対応してゆくしかない。チクワが頭上をかすめ飛ぶ時にはすかさずしゃがんでかわし、低空から突っ込んでくるときには大きく跳び越える。その間にも赤い奴のへの注意を怠ってはならない。襲いくる敵の隙間に光明を見出したとき、迷わずそこに飛び込め。

　なんとかチクワを振り切り、村の出口に辿り着いた。が、俺を待っていたのは旅の終わりではなく、ガニ股の鬼だった。どうやらこいつがこの村をシメている奴らしい。こいつを殺さなければここから出られそうもない。仕方ない、カッコ悪いがヤリで闘うことにしよう。トゲ付きヨーヨーとはずいぶん勝手が違う。赤い奴とチクワに邪魔をされうまく立ち回れないが、もたもたしているとガニ股鬼が突っ込んでくる。ヤバそうな時にはジャンプし、鬼のジャンプを誘い時間を稼ぐ。

　死闘の末、赤い奴もチクワも傷つけることなくガニ股鬼だけを撃破できた。男と男の勝負に割って入るとは、赤い奴も意外と外道だったのかも知れんな。ガニ股鬼の得点が2000点、天から降ってくる（誰がくれるんだろう）鍵の得点が1000点。しめてたったの3000点で村の出口をくぐることとなった。なんて報われない結末だ。俺の蘇生を忘れやがったインドラのジジイを恨むぜ。

　…以上が、俺の日常を掻き乱した出来事の全てだ。このあと、無事にアルゴールへと帰還できたわけだが、このままじゃ俺の腹の虫がおさまらねえ。巨大ジジイ（インドラ）をしばき上げたろうと奴の部屋に向かったが、なんだか高い所に居やがって俺のトゲ付きヨーヨーもとどかねえ。あーイライラする。仕方ねえ、腹いせにライガー（最終ボス）でも倒しに行くか。じゃあ、みんなも腕力と胸力鍛えろよ！　……胸力って何だ？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　文責　アルゴスで戦死