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第十一話 磨羯宮・山羊座の花穂

 

石田 「もうだいぶ暗くなりましたね!残り時間は3時間ですよ!」

兄 「目の前が十番目の花穂の家だな!このままつっこむぞ!!」

石田 「おかしい、何の気配も感じませんね・・・。」

?? 「キャアッ!!」

 こてん!

兄 「な・・・何だ今の声は!?」

石田 「うっ!!危ない!!」

 ドドドォォン!!

兄 「なにい!?」

石田 「いきなり大地が裂けたぁー!!」

兄 「うわぁーーっ!!お、落ちるーっ!?」

 ガシッ!

石田 「大丈夫ですか!?」

兄 「う・・・すまない。石田くんが腕をつかんでくれなかったら、危うく奈落の底に落ちるところだった・・・。」

?? 「だ・・・大丈夫、お兄ちゃま?」

兄 「うっ!?」

石田 「あ・・・あれは、山羊座(カプリコーン)の花穂!!
     そして、およそ2年前、自らが転ぶ事で、多くの兄たちをお兄ちゃまへと転ばせた妹だ!!」

兄 「な・・・なんだって!?・・・痛ッ!アイタタタ・・・。」

石田 「ど、どうしたの、お兄ちゃま!?」

兄 「う・・・今の衝撃で膝をすりむいたみたいだ・・・痛たた・・・。」

花穂 「お、お兄ちゃま!今、救急箱を持ってきたよ!・・・キャッ!」

 こてん!

兄 「うっ!?」

 ガン!

石田 「な・・・花穂ちゃんが転んだ拍子に救急箱が飛んで、おにいたまの頭に直撃だーっ!!」

兄 「ぐぁーっ!!」

石田 「な・・・なんと言うドジっぷりだ!
     しかも、ただ救急箱を当てるだけでなく、しっかりと角を直撃させるとは・・・!」

花穂 「お・・・お兄ちゃま、ごめんなさい!今すぐ、お薬を塗るから!」

兄 「うわぁーっ!!か、花穂!それは『キンカン』だ!!」

花穂 「ああ〜ん!花穂また失敗しちゃった・・・。」

兄 「うう・・・これが他の兄までも転ばせる花穂の魅力か・・・。
   い・・・いや、魅力と言うよりはむしろウイークポイントのはずなのだが・・・。
   花穂のドジっぷりはまるでピンポイントで兄の心を貫く剣のようだ!」

石田 「やっと分かりましたか。
     そうです、花穂ちゃんの両手両足は、すべて必然的にミスをするように仕組まれている。
     そのミスの質・量は、黄金妹十二人の中でも最強なのです!
     特に、あの転倒の仕方は、いかなる兄でもやられてしまう、
     「ドジっ子聖剣(エクスカリバー)」と呼ばれているのです!!」

花穂 「お・・・お兄ちゃま?」

兄 「う・・・だが、ここでやられる訳にはいかないんだ!行くぞ、花穂!!」

 お に い た ま 昇 龍 覇 !!

花穂 「キャッ!!」

 こてん!

兄 「うっ!?」

 ロ ー リ ン グ ス コ ー ン !!

石田 「なにぃ!?花穂ちゃんがバランスを崩して倒れた拍子に、
     勢いよく上がった足が、おにいたまの股間に『スコーン!』と直撃だ!!」

兄 「はうぅ!!悶絶!!」

 ドシャッ!!

 

兄 「ああ!・・・『おにいたま昇龍覇』を見事に返され、急所を真っ二つにされるとは・・・。」

花穂 「お・・・お兄ちゃま・・・ごめんなさい・・・花穂、お兄ちゃまの大事な所を・・・」

兄 「うう・・・花穂の萌えの力がここまでとは・・・。
   これまでいろんな妹と接してきたが、ここまで危なっかしくてみてられない妹は初めてだ・・・。
   転べば転ぶほど放って置けなくなる!まともに接していては、太刀打ちできない・・・。」

石田 「なんという手ごわい妹だ・・・これではキーを入手するのは骨が折れそうですね・・・。」

花穂 「えっ・・・キーってなんのこと!?」

兄 「なっ・・・知らないのか!?花穂は非血縁エンドを迎えるために戦っていたんじゃないのか!?」

花穂 「えっ・・・お兄ちゃま、何の話なの?花穂、わかんないよ〜。」

石田 「あれ・・・?郵便受けに例のキーが入ってますね。」

兄 「な・・・キーが届いていた事に気付いてなかったのか!?なんというドジっぷりだ!!」

石田 「・・・って事は、花穂ちゃんと戦う必要はもうないわけですよ。さあ、次に行きましょう。」

兄 「うう・・・だが、ここで花穂を放って置くのはどうも心配だな・・・。」

石田 「そうですね・・・今日の花穂ちゃんはありえないほど転んでますからね。」

兄 「う〜む、せめて転ばないようになってくれれば安心して、次へ行けるのだが・・・。」

石田 「ですが転ぶ原因がわかりますかねぇ・・・。
     仮に原因があるとしても、調べるために近づくのでしたら、相当のダメージを覚悟しないといけませんね。」

兄 「確かに・・・。」

花穂 「お兄ちゃま、どうしたの?」

兄 「・・・よし、一か八かだ・・・やってみるか!!」

石田 「ど、どうする気ですか!?」

兄 「いくぞ、花穂!!」

 お に い た ま 昇 龍 覇 !!

石田 「危ない!おにいたま昇龍覇には欠点があるんだ!
     無意識だが、昇龍覇を放つ際の集中力で五感が過敏になり、相手の萌えの力をモロに受けてしまう。
     おにいたまのハートは、まるで無防備の状態になるんだ!!」

花穂 「キャッ!!お・・・お兄ちゃま、花穂のこと見捨てないでね・・・。」

 ザシャアッ!!

兄 「うわぁ・・・な・・・なんて可愛いんだ・・・!!」

石田 「ああ・・・やっぱり花穂ちゃんの萌えの力の前に、ハートを貫かれてしまった!?」

 ドシャッ!

兄 「う・・・立ち上がれない・・・。だ・・・だが、単にダメージを受けたわけではない・・・。」

石田 「!?」

兄 「花穂・・・今日の花穂は何でよく転ぶのか、今やっと分かったよ・・・。」

花穂 「え・・・?」

兄 「花穂・・・足元を見てごらん。」

石田 「あ・・・あれは!?」

兄 「ほら、花穂・・・靴が左右逆なんだよ。」

花穂 「ええっ・・・そ・・・そんなぁ。花穂、小さい子みたい・・・。」

石田 「な・・・それでは、花穂ちゃんの転ぶ原因を調べるために、
     あえて昇龍覇を放ち五感を高め感覚を鋭くしたというのですか!?
     バカな!?あえて弱点をさらすような真似をし、背水の陣を張ったというのか・・・。」

兄 「は・・・ハハハ・・・妹のために頑張るのは、兄として当たり前じゃないか・・・うっ・・・。」

石田 「無理をしない方がいいですよ、今のダメージでおにいたまの心臓は相当のダメージを受けています。
     これ以上動くと鼻血が噴出しますよ!」

花穂 「お・・・お兄ちゃま!だ、大丈夫!?」

兄 「うう・・・もうダメかも・・・。」

花穂 「そ・・・そんなぁ・・・お兄ちゃま、起きて!あ〜ん、花穂のせいでこんな事に・・・。」

 カッ!!

花穂 「キャッ!!」

 こてん!

花穂 「な・・・なに?このピリピリした空気・・・あっ!あれは!?」

 ドドドオオオン!

花穂 「あれは竜!?・・・竜崎先輩!? お兄ちゃまの後ろに先輩が!!」

竜崎 「花穂さん、なんですか、この様は!」

花穂 「せ・・・先輩・・・。」

竜崎 「あなたは、お兄さんの力になりたくて、チアリーディング部に入ったんじゃ、なかったのかしら?」

花穂 「は・・・はい・・・。」

竜崎 「それなのに・・・力になるどころか、お兄さんは力が抜けて立てない状態・・・これはどういうことかしら?」

花穂 「ご・・・ごめんなさい。花穂、こんなつもりじゃなかったのに・・・。」

兄 「ち、違うんだ・・・花穂だけのせいじゃないないんだ。僕はここまでに何人もの妹と戦っていて・・・それで・・・」

竜崎 「いえ、それでも頑張っている人を後押しするのが、我々チア部の務め。
     それができなかった花穂さんは、チア部失格です。」

花穂 「ええ〜っ!?」

竜崎 「そして、部員の不始末は、部長である私の不始末。ここは私が責任を持って対処させて頂きます。」

兄 「な・・・それは一体・・・。」

竜崎 「さあ、花穂さん、もう一度イチから練習のやり直しですよ!」

 ガシッ!!

花穂 「キャッ!せ・・・先輩、は・・・離して・・・!」

石田 「むぉぉ!こ・・・この技は!?」

竜崎 「花穂さんのお兄さん、お力になれず申し訳ありません!」

 竜 崎 拘 留 覇 !!

 

ダダダダダッ!!

石田 「な・・・竜崎さんが花穂ちゃんを抱え、西の方角に向ってまっすぐ駆け出していってしまいました!!」 

兄 「花穂・・・拘留されたか・・・
   花穂・・・お前は自分のためよりも義のために生きる妹・・・人のために一生懸命になれる妹・・・。
   情のためよりも義のために生きる事は素晴らしいが・・・なんつーか、大変だな花穂よ・・・。」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ダダダダダッ!!


花穂 「あ〜ん、せ・・・先輩!は、離してください!先輩の腕が疲れちゃいますよ!」

竜崎 「あら、花穂さん。ごめんなさいね。
     私花穂ちゃんのお兄さんに、花穂ちゃんを鍛えなおすって約束しちゃったから、離すわけにはいかないわ。」

花穂 「そ・・・そんなぁ〜。なんのために花穂のためにそこまでするんですか!?
     貴重な時間を使って、私のためだけに指導するなんて、何の価値もないですよ!?」

竜崎 「フッ・・・花穂さん、チア部ならわかりきった事・・・頑張る人のためよ!!」

花穂 「あっ・・・。」

竜崎 「私たちチア部は大切な人の勝利を信じ、これまで応援してきた。
     そして、先ほどのお兄さんの姿を見て確信したわ!」

花穂 「ええっ!?」

竜崎 「花穂さんのお兄さんは、花穂さんを含め12人もの妹がいるという・・・。
     お兄さんはこれからも、その妹達を守るために戦わなければならない大事な人。
     お兄さんが私たちの応援によって元気が出て、12人の妹にも幸せが訪れるのなら・・・
     この私の時間なんて安いものよ・・・!」

花穂 「そ・・・そんな・・・竜崎先輩みたいな人が、この世にいるなんて・・・。
     花穂はみんな自分の好きな人だけに応援するのだと思っていた・・・。
     だから、たとえ応援が上手じゃなくても、お兄ちゃまの力になれればそれでいいと思っていた・・・。
     でも・・・花穂の考えは間違ってたんですね。チア部として・・・ましてや竜崎先輩の後輩としては失格です・・・。」

竜崎 「花穂ちゃん・・・でも、花穂ちゃんが好きな人のために一生懸命になれるのはとても素敵な事だと思うの。
     あなたのような部員にこそ、しっかり練習して、頑張る人を応援し続けて欲しいの・・・。」

花穂 「せ・・・先輩・・・。」

竜崎 「さあ、花穂ちゃん!今からみっちり特訓しますからね!しっかりついて来るのよ!」

花穂 「は・・・はい!先輩、よろしくお願いします!」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

山田 「・・・また出番がなかった。」

 

 

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