・伊予局(いよのつぼね)について
アニメ「一休さん」では、一休の母は伊予局とされている。(声優は峰不二子(Fromルパン3世)の人である。)この人は、実在の人物である。才女にして美人。南朝出身で、藤氏出身である。ここまではいい。 さらに調べると、「藤氏」とは、藤原氏関係の支族を含む総称であり、五摂家(近衛・一条・二条・九条・鷹司)や、花山院・日野・閑院・四条・勧修寺・中御門などたくさんある中のどれかにすぎないのだ。 伊予局は、この「藤氏」の傍系の日野家にあたり、日野中納言資朝の息女、照子姫(てるこひめ)という人が、その正体らしい。これは、一休さんの弟子の祖心紹越筆の「一休和尚年譜」や、同じく弟子の没倫紹等(墨斎さん)筆の「東海一休和尚年譜」(こちらのほうが有名なご様子)などの記述による、南朝方、「藤氏」出身、という情報をもとにしているのだが、それだけで伊予局にしてしまうのは、根拠がうすい。どうやら、江戸時代に書かれた「一休咄」などから伊予の局という人がピックアップされはじめたようだ。 ようするに、一休さんの母親としての真偽はかなり薄く、アニメ化のときももっとも流布されていた伊予局を採用したにすぎないと思われる。 また、アニメ「一休さん」で、母上は京都嵯峨野に将軍様もびっくりするほどボロいあばらやを営んでいるが、これは、水上勉氏もあげているように、一休さんの出生がそのあたりであるとの伝説によるものが出典であろうと思われる。また、よくある一休さん伝説ででてくる一休さんの乳母は「おくろ」というあだ名なのに、ここでは「お春」という名の女性がついていることが特色である。 |