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桑原武夫『論語』 (筑摩書房)

孔子がゴルフ !? フランス文学研究の大家が放つトンデモ本!


 桑原武夫氏はフランス文学研究の大家である。その氏が、『論語』の解説書を著した。題名は『論語』。そのまんまである。しかもこの本の最後に解説を書いているのが、心理学者の河合隼雄
 フランス文学の研究者が、漢文学をやってはいかんと言うわけではない。むしろ、専門外への進出は大いに結構である。しかし、結構であるとは言いながら、桑原氏は漢文学の門外漢だからか、ナイスボケをかましてくれている。

 例えば、宰予(宰我)という弟子が昼寝していたのを孔子が見つけて怒った時の件(公冶長第五-10)の解説で、荻生徂徠の「宰予は女と戯れていた」とする説を引きながらも、「徂徠ほどきびしく女のことなどよみこまず、宰予がまた怠けて明るいうちから寝室にいる、処置なしだ、と嘆いたのだと軽くよんでおきたい。」(108頁)といって女性の事まで踏み込んでいないのに、別の箇所では、
「宰我(宰予のこと)は昼間から女に戯れたりして、孔子に叱られた男だ」(159頁)
 などと言っているのだから、矛盾している。自分の考えはどこかに吹っ飛んでしまったようだ。

 次に、子罕第九-2で、「御を執らん乎、射を執らん乎、吾れ御を執らん。」の解説。ちなみに、「御」とは馬車の運転のことである。
孔子が自分の教えの根幹とした礼と楽をあえていわず、御と射を出したことは、おもしろい。この二つは、教養として体得していなければならないものだが、それを専門とするとあまり立派なことではない。車が動かせ、ゴルフがうまいのはいいが、運ちゃんないしプロ・ゴルファーは、お金が入っても社会通念では上流紳士とはみなされない。それを、専門が必要というなら、僕は運ちゃんだね、とにこやかにいったのである。(P205)
 なんと、孔子の時代にゴルフがあったのか!? …でも、「射」って普通、射撃(弓術)のことなんじゃないの?

 こんな事を書きつつも、桑原先生は、後書きで、
 いま「私と『論語』」を読みかえしてみたが、率直にいって、これでよろしい、という感じである。特に補正したいことは何もない。(P258)
 などと言っているのだから、恐ろしい。

 ちなみに、同氏の『文学入門』(岩波新書)なる著作でも、
茶の湯はジャンルとしては、ダンスの一種であると考えられよう。(P113)
 などと言っている。茶道がダンスだとは知らなかった…。

H14.6/4(安澤出海)

【参考文献】
桑原武夫『論語』筑摩書房1985.12/4
桑原武夫『文学入門』岩波書店1950.5/5
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