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フジテレビ「陰陽師☆安倍晴明」

 私は安倍晴明を題材にしたゲームシナリオを製作している。そう言う立場にあるのでこのドラマを観たのだが、間違いが結構ある。ストーリーなんかより、これら間違いを指摘する楽しみがある。その点では間違いなくトンデモドラマである。
 ちなみに、諱(いみな)を呼び捨てにする所については、某国営放送の某ドラマでもやっている為、ここでは敢えて追求しない。

第一話
藤原少将将之の髷(まげ)と服装
 少なくともあの髪型と服装は中世(鎌倉・室町)以降の物である。しかもそれとて少将のような貴族の格好ではない。ほぼ同時代の伴大納言絵詞を見ても、そんな格好をした奴はいない。
朝廷からの使者の言葉
 使者が「朝廷より参りました」と言っているが、この日本語はおかしい。相対的に尊貴な場所から来た場合、「まかり越す」と表現するのが正しい。したがって、「朝廷よりまかり越しました」と発言すべきである。フジテレビには正しい日本語を使える者はいないのだろうか。
晴明と少将が滝の裏側の洞窟へ入った時、全く濡れていない。
 滝の裏側へ行く場合、滝の水を多少なりともかぶらなければならない。それなのに、通過直後の二人の髪も服も、全く濡れていない。安倍晴明が「瞬間ドライヤーの術」でも使ったんだろうか?
帝の寵姫・彩子が鬼に憑かれて散々苦しんだ直後、外に出て弟の将之を介抱する。
 長時間、鬼に憑かれて生気を吸われ続けていたのなら、体力は相当消耗しているはずであり、その状態で外に出て駆け寄るなど、トンデモない。ましてや、鬼のいるところに行くなど、自殺行為である。
 しかも、帝の寵姫ともなれば一級のVIPであり、そういった人間が、鬼と壮絶な戦いをしているという危険な所へ行けるのだろうか。そもそも、平安時代の貴族の女性って、そんなにアグレッシブだったろうか?
鬼の指の数。
 第1話の最後に、少将に斬られた鬼の腕がアップで映し出されるのだが、その時の鬼の指の数が人間と同じ五本であった。
 本来、鬼の指の数は三本である。國學院大学の阿部正路教授(故人)によると、人間の五本の指は愛情・知恵という二つの美徳と、瞋恚(いかり)・貪欲・愚痴の三つの悪をあらわす。人間は三つの悪を二つの美徳で必死にこらえている。しかし、鬼には二つの美徳(愛情・知恵)がない。ただ三つの悪(瞋恚(いかり)・貪欲・愚痴)があるだけである。だから、鬼の指の数は三本なのだという。
 ただし、酒呑童子などの上級の鬼は「智恵」があるため、四本となっている。
第二話
 鬼の指の数は相変わらずであった。将之のチョンマゲも相変わらずであった。誰か指摘したやらないのか。他には特に見当たらなかった。やれやれ…。

【参考文献】
阿部正路『にっぽん妖怪の謎』KKベストセラーズ・ワニ文庫、1992.8.5

(泉獺)


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