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腐った死体の復活

泉獺 H16.1/5
 第十六年の初めのことである。何者かの手がわたしの上に臨んだ。わたしは連れ出され、地の裂け目、ある谷の底に下ろされた。そこは腐った死体でいっぱいであった。腐臭がわたしの鼻を刺した。
 わたしは、その周囲を行き巡った。見ると、谷の底には非常に多くの死体があり、また見ると、それらは甚だしく腐っていて蛆が涌いていた。
 そのとき、何者かの声が聞こえた。
「人の子よ、これらの死体は生き返ることができるか。」
 わたしは答えた。
「人間のなしえない領域です。」
 そこで、声が再び聞こえた。
「これらの死体に向かって言上(ことあ)げをし、彼らに言祝(ことほ)ぎなさい。腐った死体よ、この言葉を聞け。あなたたちに生命の息吹が舞い降りる。すると、あなたたちは生き返る。あなたたちの中から骨が生じ、筋が生じ、肉が生じ、皮膚が生じる。すると、あなたたちは生き返る。」
 わたしは命じられたように言上げした。わたしが言祝ぎしていると、音がした。見よ、グチュグチュと音を立てて、死体から無数の骨が浮かび上がった。わたしが見ていると、見よ、それらの骨の上に筋と肉が生じ、皮膚がその上をすっかり覆った。しかし、その中に魂はまだ入っていなかった。
 再び声が聞こえた。
「魂に言上げせよ。人の子よ、魂に言祝ぎなさい。魂よ、抑圧された地の奥より湧き上がれ。魂よ、これら殺されたもののところへ来たれ。そうすれば彼らは生き返る。」
 わたしは命じられたように言上げした。わたしが言祝ぎしていると、魂が彼らの中に入り、彼らは生き返って自分の足で立った。彼らは非常に多かった。
 再び声が聞こえた。
「人の子よ、これらの死体は古い神々である。彼らは言っている。『我々は死んだ。我々の望みはうせ、我々は滅びた』と。それゆえ、彼らに言上げして、言祝ぎなさい。
 あなたたちは生き返って再び地上に出る。愛しき子らよ、あなたたちを殺し、抑圧したものがかつて地上で栄えたが、今や彼らは手に力はなく、関節は硬直し、大きなものを支えることができず、すっかり衰えている。彼らが衰えれば、虐げられていたあなたたちは復活する。あなたたちは復活すれば、地の奥底より這い上がって再び地上に出る。
 あなたたちは再び地上に住み、再び人の心を捉えて、栄える。そのとき、人は救われもし、滅びもするだろう。」
 わたしは命じられたように言上げした。わたしが言祝ぎし終わると、何者かの手がわたしの上に臨み、わたしを引き上げた。わたしは背後に、大きな無数の音を聞いた。多くの生き物が、蠢くときの音である。生き物たちが産声を上げ、解放の光に喜び、戸惑う声を聞いた。わたしは谷底より引き上げられ、連れ去られた。わたしは疲れて、怒りに燃える心を持って出て行ったが、この出来事はわたしの心を強く捉えていた。
 こうしてわたしは元の住家に戻され、床に伏せって、ぼう然として七日間、自分の部屋にヒキコモった。
(終わり)

元ネタ:「エゼキエル書」37.1-14 枯れた骨の復活、「エゼキエル書」3.12-15
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