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国民、移民を求める

泉獺 H17.11/15
 東の豊かな国では少子高齢化社会が進み、高齢者も働かなくては生きていけなくなった。そこで国民は中央の政府のもとに来て、陳情した。
「わたしたちは既に年を取り、息子たちはニートとなって働こうとしません。今こそ、ほかの先進国のように、我々のために低賃金で3Kの仕事をしてくれる移民を受け入れてください。」
 自分たちのエゴで移民を受け入れよという彼らの言い分は、政府の目には悪と映った。そこで役人は政府要人にお伺いを立てた。政府要人は役人に言った。
「国民の言うままに、国民に従いなさい。さもないと、選挙で負けてしまうのだから。ただし、後でとやかく言われないために、彼らにはっきり警告し、移民が流入するとどんな弊害があるかを教えておかなければならない。」
 政府要人は移民を要求する国民に向かって、移民のデメリットをことごとく伝えた。自らの説明責任を果たすために、並びに国民に政策を選択した責任を負わせるためである。
「あなたたちの要求する、移民を受け入れることによって起こる現象は次のとおりである。
(1)移民は自分たちの文化・言語・宗教を持ち込む。街の中にモスクが建ち、シヴァ・リンガが立てられ、スカーフをかぶった女性が増えるだろう。『ここは日本だ。郷に入りては郷に従え。日本人に同化しろ。』と言っても、彼らは自分たちの文化・言語・宗教に誇りを持っているので聞き入れない。
(2)移民が流入すると彼らは固まって住むようになり、もといた住民が追い出されて、その地のコミュニティーはズタズタに破壊される。そのため、その地域で培ってきた伝統文化は継承されなくなる。
(3)あなたたちの息子や娘が移民と結婚してハーフの孫が産まれるかもしれない。混血である。それについて表立って反対はしないが、肚の内では嫌悪感を持っている偽善者どもに、これが耐えられるだろうか?
(4)移民による犯罪が起こって治安が悪化する。移民の中には不逞の輩もいるし、貧窮のゆえに犯罪に走る者もいるからである。
(5)移民たちはあなたたち国民と同等の権利を持たせよと声高に叫ぶ。在日韓国人が選挙権を求めているのを見れば、そのことは察せられよう。移民たちはあなたたちと同等の政治的発言力・雇用・福祉・教育などを求める。
(6)あまりにひどく差別されたら、彼らは暴動を起こす。あなたたちは移民をことあるごとに差別するであろうが、移民たちは遠い異郷の地に移住するほどパワフルであり、差別されたら当然であるが怒るからである。」
 国民は政府の警告に聞き従おうとせず、言い張った。
「いいえ。我々にはどうしても移民が必要なのです。我々もまた、他の先進国と同じように移民を受け入れ、タダみたいに安い賃金で、3Kの仕事に従事させてコキ使うのです!」
 政府は国民の言葉をことごとく聞いた。
 政府要人は役人に言った。
「彼らの声に従い、移民を受け入れる方向で検討しなさい。私の説明責任は果たした。これで国民が移民受け入れを後悔しても、その責めは国民が負うべきものであり、政府にはない。」
(おわり)

元ネタ:サムエル記上 8.1-22 「民、王を求める」

筆者註:現在我が国では移民受け入れ論争があり、フランスでは移民の2世・3世による暴動が起こっている。ちなみに低賃金云々は「ポーランドから来た配管工」に想を得ている。それにしても、ここに登場する人物はどいつもこいつも悪人である。
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