不況による荒廃
泉獺 H16.1/20
老人たちよ、これを聞け。
この地に住む者よ、皆耳を傾けよ。
あなたたちの時代に、また、先祖の時代にも
このようなことがあっただろうか。
これをあなたたちの子孫に語り伝えよ。
子は孫に、その孫はまた後の世代に。
うたかたのバブルが残したものを
消費低迷が食らい
消費低迷が残したものを
不良債権が食らい
不良債権が残したものを
デフレスパイラルが食らった。
右肩上がりの夢に酔いしれる者よ、目を覚ませ、泣け。
既得権益の酒におぼれる者よ、皆泣き叫べ。
発泡酒は増税によってお前たちの口から断たれた。
一つの不況がわたしの国に攻め上ってきた。
強大で底知れない不況が。
その歯は14歳の歯、牙は17歳の牙。
社会の秩序を荒らし
年功序列と終身雇用を引き裂き
打ち砕いて見るも無残に投げ捨てた。
泣き悲しめ。
親を惨殺されて取り残された子供のように。
分厚い給与袋と一体感は会社から断たれ
昔のサラリーマンは嘆く。
下っ端は搾取され、庶民は嘆く。
パートは最低限に搾られ
アルバイトは最低限に抑えられ
弱い人たちは病み衰えてしまった。
プー太郎は恥じ、ヒキコモリは泣き叫ぶ。
勤勉と貯蓄、かつての美徳は失われた。
貯蓄は枯れ尽くし、親方日の丸は衰え
證券も、土地も、商品も
殆どすべてが花開くことなく
人々の儲けは枯れ尽くした。
経営者よ、喪服を着て嘆き悲しめ。
会社に仕える者よ、泣き叫べ。
会社に奉仕する者よ、喪服を着て夜を明かせ。
ボーナスの袋とかつての喜びは、もはや
あなたたちのふところにもたらされることはない。
戒厳令を布告し、兵員を招集し
忙しい者をはじめこの国の民をすべて
心を一つに合わせて
世に満ちる嘆きの叫びをあげよ。
ああ、恐るべき日よ。
暗黒の日が近づく。
金の亡者による破滅の日が来る。
わたしたちの目の前から幸せは断たれ
わたしたちの故郷からは
自然も伝統もなくなったではないか。
マンションは汚染土壌の上で廃墟となり
資産は枯れ尽くし、精神は荒れ、伝統文化は破壊された。
なんという呻きを人々はすることか。
若者の群れがさまよい
高齢者の群れが苦しむのは
もはや、夢と安心がどこにもないからだ。
不況の炎が地方の諸都市を焼き尽くし、
炎が世の中をなめ尽くした。
流れる水は涸れ
火が地方の諸都市を焼き尽くした。
(終わり)
元ネタ:「ヨエル書」1.2-20 いなごによる荒廃
【戻る】