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ぶどう園と農夫と社会主義

泉獺 H15.10/16
 聖者は、赤い人たちに向かって言われた。
「君たちは宗教を否定するのかね。」
 赤い人たちは言った。
「はい、宗教は阿片ですから。」
 聖者はさらに言われた。
「それなら、宗教を勧める私は、阿片を勧める者かね。」
 赤い人たちは言った。
「はい、宗教は阿片ですから。」

 そこで、聖者は彼らに話し始められた。
「ある人がぶどう園を作り、垣を巡らし、その中に搾り場を掘り、見張りのやぐらを立て、これを農夫たちに貸して旅に出た。
 さて、収穫の時が近づいたとき、収穫を受け取るために、僕(しもべ)たちを農夫のところへ送った。だが、農夫たちはこの僕たちを捕まえ、一人を袋だたきにし、一人を殺し、一人を石で打ち殺した。また、他の僕たちを前よりも多く送ったが、農夫たちは同じ目に遭わせた。
 そこで最後に、『私の息子なら敬ってくれるだろう』と言って、主人は自分の息子を送った。
 農夫たちは、その息子を見て話し合った。『これは跡取りだ。さあ、殺して、彼の相続財産を我々のものにしよう。』そして、息子を捕まえ、ぶどう園の外に放り出して殺してしまった。
 さて、このぶどう園の農夫たちはどうなると思うかね。」
 彼らは言った。
「なんというひどい悪人だ。その悪人どもは司直の手に渡されて、ひどい罰を受けるに違いない。」
 聖者は言われた。
「ところがそのとき、社会主義革命が起こって、そのぶどう園の支配権が主人から離れて、労働者であるその農夫たちに移った。そして、農夫たちは、ブルジョアジーである主人の搾取に抵抗した革命の義士として、共産党から顕彰された。」
 そのとき、赤い人たちは、聖者が自分たちに当てつけてこれを話されたと気付いたので、聖者に危害を加えようとしたが、群衆を恐れて手が出せなかった。群衆は聖者を生き神様だと信じていたからである。
(おわり)

元ネタ:「マタイ福音書」21.33-41、「マルコ福音書」20.1-12、「ルカ福音書」20.9-19
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