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ヒッキーの言葉(4)

泉獺 H16.10/13

わたしの生まれた日は消えうせよ。
男の子を身ごもったことを告げた夜も。
その日は闇となれ。
捨てる神はあれど、拾う神はなく、光もこれを輝かすな。
暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい。

黒雲がその上に立ち込め、昼の暗い影に脅かされよ。
闇がその夜をとらえ、その夜は年の日々に加えられず、
月の一日に数えられることのないように。
その夜は、嬉しいことは一つもなく、笑い声も上がるな。
自分に呪いをかけたもの、自分の人生を呪われたものにした者が
その日を呪うがいい。
その日には、家の明かりも光を失い、
待ち望んでも光は射さず、
星々の瞬きを見ることもないように。
その日が、わたしを身ごもるべき腹の戸を閉ざさず、
この眼から労苦を隠してくれなかったから。

なぜ、わたしは母の胎にいるうちに死んでしまわなかったのか。
せめて、産まれてすぐに息絶えなかったのか。
なぜ、学校があってわたしは行かされたのか。
なぜ、塾があってわたしは行かされたのか。
それさえなければ、部屋に引きこもって
こんな苦しい辛い思いをしなくてすんだのに。
なぜわたしは、葬り去られた中絶の子、
光を見ない子とならなかったのか。
産まれてこなければよかった。

なぜ、苦痛に呻く者に生命があり、
悩み嘆く者が生かされているのか。
わたしは死を待っているが、死は来ない。
徳川埋蔵金や山下の隠し財宝にもまさって死を探し求めているのに。
墓穴を見いだすことができれば、喜び踊り、歓喜して飛び込むのに。

行くべき道が隠されている自分の四方八方は
あらゆる障害物で塞がれている。
毎日のメシのように鬱がわたしに巡ってくる。
湧き出る水のようにわたしの焦燥は止まらない。
恐れていたことが起こった。
危惧していたことが襲いかかった。
静けさも、やすらぎも失い、
憩うこともできず、わたしはわななく。


元ネタ:「ヨブ記」.2−26 ヨブの嘆き
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