八頭身
泉獺 H16.10/27
(1)
モナー族は、管理人の目に悪とされることを行なったので、管理人は彼らを40年間、オニギリ族の手に渡された。
その名をモナ夫という一人の男がいた。彼はモナー族で、埼玉の出身であった。
彼の妻は不妊の女で子を産んだことがなかった。
ギコエルが彼女に現われて言った。
「藻前は不妊の女で子を産んだことがなかった。だが、みごもって男の子を産むぞゴルァ。その子のシッポを切ってはならない、さもないと逝ってよしだゴルァ。彼は、オニギリ族の手からモナー族を解き放つ救いの先駆者となるぞゴルァ」
やがてこの女は男の子を産んだ。その子は手足が異常に長かったので、八頭身と名づけられた。八頭身は成長し、驚異的な身体能力を発揮した。
(2)
八頭身は多摩に下って行ったが、その多摩でオニギリ族の1さんに目をひかれた。彼は父母のところに上って行って、
「多摩で、オニギリ族の1さんに目をひかれました。どうかこの1さんと結婚させてください」
と言った。
父母は言った。
「モナー族の中に、1さんがいないとでも言うのか。オニギリ族から妻を迎えようとは」
だが8頭身は父に、
「この1さんとの結婚を認めてください。わたしはこの1さんが好きです」
と願った。
父母にはこれが、オニギリ族からモナー族を解き放つきっかけになることがわからなかった。当時、オニギリ族がモナー族を支配していた。
(3)
八頭身は父母と共に、多摩へ向けて下って行った。多摩のニュータウンまで来たところ、山に食べ物がなくなって人里に出てきた熊と遭遇し、熊が襲いかかってきた。そのとき八頭身は激しくビンビンであったので、彼は手に何も持たなくても、うまい棒をへし折るように熊を殺した。しかし、彼は自分の行なったことを父母には言わなかった。彼は、1さんのところに行って、プロポーズした。八頭身は1さんが好きであった。
しばらくして八頭身は1さんを拉致し、小脇に抱えて戻って行ったが、あの熊の屍を見ようと1さんを置いて脇道にそれたところ、熊の死骸には蜜蜂の群れがいて、蜜があった。彼は手で蜜をかき集め、歩きながら食べた。また父母のところに行ってそれを差し出したので、彼らも食べた。しかし、その蜜が熊の死骸からかき集めたものだとは言わなかった。
(4)
やがて八頭身たちはオニギリ族の慣習に従い、結婚パーティーを催した。それは一週間「オニギリワッショイ」をするというものであった。パーティーには30人のオニギリがやってきて八頭身と同席させた。
八頭身はこう言った。
「あなたたちに謎をかけたい。パーティーの続く7日の間にその意味を解き明かし、言い当てるなら、わたしはユニ○ロのフリース30着、ユ○クロのシャツ30着を差し上げる。もし解き明かせなかったなら、あなたたちがユニク○のフリース30着と、○ニクロのシャツ30着を差し出すことにしよう。」
彼らは、
「謎をかけてもらおう。聞こうではないか。」
八頭身は言った。
「食べるものから食べ物が出た。
強いものから甘いものが出た。」
彼らは3日たっても、この謎が解けなかった。
(5)
そこで彼らは1さんに言った。
「八頭身をうまく言いくるめて、あの謎の意味を我々に明かすようにしてほしい。さもないと、火を放ってあなたを家族もろとも焼きオニギリにしてやる。まさか、我々から剥ぎ取るために招待したわけではないだろう。」
1さんは、八頭身に泣きすがって言った。
「君はただキモいだけで、僕を少しも愛してくれなくて、僕の同族にかけた謎の意味を、この僕にも明かしてくれないんだね。」
八頭身は、答えた。
「父にも母にも明かしていないのに、1さんに明かすわけがないだろう。それより僕と…ハァハァ」
パーティーが行なわれた7日間、1さんは八頭身に泣きすがった。1さんがしつこくせがんだので、7日目に八頭身は1さんに明かしてしまった。
1さんは同族の者にその謎を明かした。7日目のこと、日が沈む前に30人のオニギリ族は言った。
「蜜蜂より甘いものは何か。
熊より強いものは何か。」
すると8頭身は言った。
「僕の1さんを使わなかったら、この謎は解けなかっただろう。」
そのとき彼は激しくビンビンになり、彼は秋葉原に行って、そこでキモオタ30人を打ち殺し、彼らの服を剥ぎ取って、謎を解いた者たちに与えた。
八頭身は怒りに燃えて自分の父の家に帰った。
1さんは、八頭身に付き添っていた友のものとなった。
(6)
しばらくして青竹がしなやかにそり立つころ、八頭身は米俵を担いで1さんを訪ね、
「1さんと一発ヤらせてください。いや、一発とは言わずに10発でも20発でも。」
と言ったが、1さんの父は家に入らせなかった。父は言った。
「わたしはあなたがウチの子を嫌ったものと思い、あなたの友に嫁がせた。」
八頭身は言った。
「今度はわたしがオニギリに害を加えても、わたしには罪がない。」
八頭身は出て行って、オニギリ族の稲や民家に放火して回った。
オニギリ族は、
「誰がこんなことをしたのか」
と言い合った。
「あの手足の長い八頭身がした。彼が好きだった1さんが他の者と結婚したからだ」
と答える者があった。オニギリ族はそこで、1さんとその父のところにやってきて、火を放って焼きオニギリにした。
八頭身は彼らに、
「これがお前たちのやり方なら、わたしはお前たちに報復せずにはいられない」
と言って、彼らを徹底的にブッ殺し、江戸川のマンスリーマンションに移り住んだ。
(7)
オニギリ族は、モナー族に向かって軍隊を出動させた。
モナー族は、
「なぜ我々に向かって軍隊を展開するのか」
とただしたところ、彼らは、
「出動したのは八頭身を拘束もしくは『死亡を確認』し、我々に対する仕打ちのお返しをするためだ」
と答えた。
そこでモナー族3000人が江戸川のマンスリーマンションに行き、八頭身に言った。
「我々がオニギリ族の支配下にあるのを知らないのか。なんということをしてくれた。」
八頭身は答えた。
「彼らがわたしにしたように、彼らにしただけだ。」
彼らは八頭身に言った。
「我々は、お前を縛ってオニギリ族の手に渡すためにやってきた。」
八頭身は言った。
「あなたたちはわたしに害を加えないと誓ってくれるか。」
彼らは言った。
「我々はただお前を縛って彼らの手に渡すだけだ。殺しはしない。」
彼らはこうして、アダルトショップで買ってきた縄で八頭身を縛り、マンションから連れ出した。
(8)
八頭身がオニギリ族の陣営に着くと、オニギリ族はワッショイして彼を迎えた。そのとき、八頭身は激しくビンビンになったので、縛っていた縄はプッツリと切れて落ちた。
八頭身は、真新しい金属バットを見つけ、手を伸ばして取り、これでオニギリ族千人を殴り殺した。
「金属バットで、死体がひと山、ふた山。
金属バットで、千人をブッ殺した。」
こう言い終わると、彼は手に持っていた金属バットを投げ捨てた。こうして、その場所は金山(かなやま)と呼ばれるようになった。
(9)
八頭身は西川口に行き、飾り窓に1さんがいるのを見て、「小料理や」に入った。西川口の人々は、
「八頭身がキタ―――――――――(゚∀゚)―――――――――!!!」
との知らせを受けると、一晩中彼を取り囲み、町の門で待ち伏せ、
「夜明けまで待って、彼を殺してしまおう」
と言って、一晩中声をひそめていた。
八頭身は夜中まで寝ていたが、夜中に起きて、跳躍して町の門を飛び越え、その足で富士山に登った。
(10)
その後、八頭身は祖師谷にいるモララー族の1さんを愛するようになった。
オニギリ族の有力者たちがこの1さんのところへやって来て、言った。
「八頭身をうまく言いくるめて、そのパワーがどこに秘められているのか、どうすれば彼を打ち負かし、縛り上げて苦しめることができるのか、探ってくれ。そうすれば、我々はお前に福沢諭吉を1100枚与えよう。」
1さんは八頭身に言った。
「あなたのパワーがどこに秘められているのか、教えてください。あなたを縛り上げて苦しめるにはどうすればいいのでしょう。」
八頭身は、
「乾いていない新しい釣り糸7本で縛ればいい。そうすればわたしは弱くなり、並みのモナー族のようになってしまう」
と答えた。
オニギリ族の有力者たちが、乾いていない新しい釣り糸を7本、1さんに届けたので、1さんはそれで八頭身を縛った。
奥の部屋には待ち伏せる者を置いて、1さんは、
「八頭身、オニギリ族があそこに」
と言った。
ところが八頭身は、釣り糸をまるで麻の紐が火にあぶられて切れるように断ち切ってしまった。その力の秘密はまだ知られていなかった。
1さんは八頭身に言った。
「あなたはわたしを侮り、嘘をついたでしょう。あなたを縛り上げるにはどうすればいいのか、今教えてください。」
八頭身は、
「まだ1度も使ったことのない注連縄(しめなわ)でしっかりと縛れば、わたしは弱くなり、並みのモナー族のようになってしまう」
と答えた。
1さんは新しい注連縄を持ってきて、それで八頭身を縛り、
「八頭身、オニギリ族があそこに」
と言った。
奥の部屋には待ち伏せる者がいたが、八頭身は腕の縄をまるで糸のように断ち切ってしまった。
1さんは八頭身に言った。
「あなたは今度もわたしを侮り、うそをついたでしょう。あなたを縛り上げるにはどうすればいいのか教えてください。」
八頭身が、
「わたしのチン毛を織り込んだ紐で縛ればいいのだ」
と言ったので、1さんは八頭身のチン毛を抜いて紐に織り込み、それで縛って、
「八頭身、オニギリ族があそこに」
と言った。
ところが八頭身は眠りから覚め、紐をプッツリ切ってしまった。
(11)
1さんは八頭身に言った。
「あなたの心はわたしにはないのに、どうしてお前を愛しているなどと言ってハァハァできるのですか。もう3回もあなたはわたしを侮り、パワーがどこに潜んでいるのか教えてくださらなかった」
来る日も来る日も1さんがこう言ってしつこく迫ったので、八頭身はそれに耐え切れず死にそうになり、遂に心の中の一切を打ち明けた。
「ギコエルが母の前に現われて、わたしのシッポを切ってはならないと言った。もしシッポを切られたら、わたしの力は抜けて、わたしは弱くなり、並みのモナーのようになってしまう」
1さんは、八頭身が心の中を一切打ち明けたことを見て取り、オニギリ族の有力者たちに使いをやり、
「お越しください。今度こそ、八頭身は心の中を一切打ち明けました」
と言わせた。
オニギリ族の有力者たちは福沢諭吉を携えて1さんのところに来た。
1さんは膝を枕に八頭身を眠らせ、人を呼んで、彼のシッポを切らせた。こうして彼の力は失われた。
1さんが、
「八頭身、オニギリ族があそこに」
と言うと、八頭身は眠りから覚め、
「いつものように出て行って暴れてくる」
と言ったが、パワーが失われたことには気付いていなかった。
こうしてオニギリ族は八頭身を捕え、両目をえぐり出して、巣鴨に連れて行き、塀の中に監禁した。しかし、八頭身のシッポは切られた後、少しずつ再生し始めていた。
(12)
オニギリ族の有力者たちは六本木ヒルズの森タワーに集まって、八頭身の捕獲を喜び祝った。又、多くのオニギリ族が六本木ヒルズに繰り出して、共にオニギリワッショイした。
彼らは上機嫌になり、
「八頭身を呼べ。見せ物にして楽しもう」
と言い出した。
こうして八頭身は牢獄から引き出され、彼らの前で某消費者金融のダンスを踊らされて笑いものにされた。
柱の間に立たされたとき、八頭身は自分の手をつかんでいた若者に、
「わたしを引いて、この建物を支えている柱に触らせてくれ。寄りかかりたい」
と頼んだ。
建物の中は男女でいっぱいであり、オニギリ族のみならず、モナー族・モララー族・ギコ族もこれに加わっていた。建物の外にも三千人もの男女がいて、モニターに映し出された八頭身を見ていた。
八頭身は心の中で言った。
「わたしのシッポは少しだけだが生えてきた。シッポよ、今一度わたしに力を与え、オニギリ族に対してわたしの二つの目の復讐を一気にさせてくれ!」
それから八頭身は、森タワーを支えている真ん中の柱の二本を探りあて、一方に右手を、他方に左手をつけて柱にもたれかかった。
そこで八頭身は、
「私の命とひきかえに、オニギリどもをブッ殺す!」
と言って、力を込めて押した。建物はオニギリ族の有力者を始めとする建物内にいた者たちだけでなく、外にいたすべての民の上に崩れ落ちた。八頭身がその死をもって殺した者は、生きている間に殺した者より多かった。
彼は20年間、2ちゃんねるに常駐した。
(おわり)
元ネタ:「士師記」13−16
筆者註:六本木ヒルズの惨劇で指導部を失ったオニギリ族の痛手は大きく、これによってモナー族への支配体制が揺らぎ、モナー族独立の端緒となるのである。まさにギコエルの預言が成就したのである。しかし、ここから先は別の物語である。
※この物語はフィクションです。
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