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作品No.60  現代ノベル

【作品紹介】ある男の回想から話は始まる。その男の正体とは・・・・・・・?

ストーリー大賞出品「夢の系譜」

?2「(・・・・あれ?・・・おれ・・・なにやってんだ?・・・
   ・・というか・・・ここは・・・どこだ?・・・・・・・・
   ・・なんかへんだな・・・みょうにからだがダルい・・・・
   ・・・なにか・・・かんがえようとすると・・・・あたまが
   ・・いたくなって・・・・・・・なに・・も・・・・かん・
   ・・がえ・・・ら・・・れ・・な・・い・・・・・・・・・
   ・・・・・おれ・・・・は・・・・いったい・・・・どう・
   ・・・しち・・・・・まった・・・・ん・・・だ?・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ・・もう・・・・・だ・・・め・・・・・だ・・・・・・)」
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俺の生まれ故郷は・・・実は俺自身にもよく分からない。物心が着い
た時にはもう1人きりだったからだ。だから親の顔もよく覚えていな
い。たぶんろくでもない親だったんだろう。なぜかは分からないが、
そんな気がした。そして頼れる家族も親族もいない天涯孤独のガキ
が、生業に「強盗」を選択するのはごく自然な成り行きだった。
こうして俺は少年時代の大半を血生臭い犯罪者として
過ごす事となった・・・・・・・・・・・

俺がその人と出会ったのは16の時だった。一番バカやってた時だ。
今思えばあの頃の俺は無茶苦茶だった。強盗、恐喝、リンチ・・・
一通りの悪事は何でもやってた。あの頃の俺に怖いものなんて
何一つ無かったから。バカやり続けた。ただひたすらに。
そしてその日もいつもと同じ様につるんでいた強盗団の仲間と共に、
狩りをする・・・はずだった。が、不意に現れたたった1人の男に
よってその計画はものの10分でぶち壊された。
総勢50人の強盗団が。たった10分で。たった1人の男の手に
よって・・・・・・・壊滅させられた。
・・・俺は一応その強盗団のリーダーだった。だから俺には仲間を
守る義務があった。家族のいない俺には仲間だけが唯一の心の拠り所
だったから。俺はその男を仲間から引き離す為に全速力で反対方向へ
走り出した。男は俺の後を余裕で着いて来た。俺はそれを脅威に
感じながら、ひたすらに走り続けた。そしてとあるスラム街の路地裏
に辿り着くと俺は覚悟を決めて背後を振り返った。
・・・男は息も切らさずに佇んでいた。どこか楽しげな様子で。
?2「(バケモノかよこいつは!!・・いいぜ・・・相手になって
    やるよ・・・・かかって来い!!!)」
俺は腹を括ると気合を入れて男に挑んでいった・・・・・・・

一撃だった。たったの。俺は抵抗一つできずに男のパンチ1発で
叩き伏せられてしまった。そして気が付くと・・・俺はベッド
の上にいた。驚いて起き上がり周囲を見回して・・・更に驚いた。
頭上に輝くシャンデリア、様々な家具、調度品・・・・その全てが
最高級クラスの物ばかりだったからだ。
俺がそうやって驚いていると部屋の入り口のドアが開いて、1人
の男が入ってきた。そいつは俺を叩き伏せたあの男だった。
周囲の状況が把握できずに、茫然自失オている俺を尻目にして
男は俺に向かって楽しげに話し始めた。
?1「おっ!目ぇ覚めたか!・・・どうだ?具合は?・・・って
   いいわきゃねぇよなぁwわりぃわりぃwつーかよ、俺相手 
   にタイマン挑むなんざぁおまえも根性座ってるよなぁw」
?2「・・・あぁ!?ケンカ売ってんのか!!?」
?1「プッ・・・・クククク・・・・・」
?2「な、なんだよ?・・・何かおかしい事言ったか?」
?1「いや・・・だっておま!・・ププ・・・さっき俺に一発
   で・・・ククククク・・おまけに介抱までされて・・・
   ウププ・・それでケンカ売ってんのかって・・・・・・
   あ〜ダメだ!!我慢できねぇ!!ギャハハハハハハハハ
   ウワハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!」
?2「野郎!!!」
俺はすかさず男の顔面目がけてパンチを放った・・・が、その
拳はむなしく空を切った。気が付くと一瞬前まで俺の真ん前に
いたはずの男は、いつの間にか俺の斜め後ろへと移動していた。
?1「フハハハハ・・・・・あ〜久しぶりに笑わせてもらった
   わ。サンキュなw・・・・・んで本題なんだけどよ。
   お前、ハンターやってみないか?」
?2「・・・・・・・は?」
?1「いや、は?じゃなくてハンターだよ。ハンター。名前
   ぐらい聞いた事あるだろ?」
?2「ああ、そりゃまぁ・・・じゃなくて!!何で俺がハンター
   にならないといけねぇんだよ!!訳分かんねぇだろうが!!」
?1「ああ・・・んな事か。簡単簡単。俺はプロハンターで今の
   仕事にどうしても活きのいい助手が欲しくて、都合のいい事
   に目の前には強盗するしか能が無いくせに、血の気だけは
   人の100倍有り余った根性ある悪ガキが1匹いる・・・
   とくりゃあ、こりゃお前スカウトしない手はねーだろ?」
?2「はっ!おまえが?プロハンター?・・・わりぃが何か証拠
   でも見せてもらわねぇととてもじゃないが信用できねぇな。」
俺がそういうと男はやれやれ・・・といった感じで仕方なく懐から
1枚のカードを取り出して俺に見せた。
?2「・・・何だ、それ?」
?1「ハンターライセンスつってな。プロハンターにとっての
   身分証明証みたいなもんだ。とりあえずこいつがあれば
   ほとんどの国はフリーパスだし、たいがいの公共施設は 
   タダで使えるわけよ。それにハンターとして仕事をこな
   しまくれば金は嫌ってほど懐に転がり込んでくるからな。
   だからよ、強盗なんか辞めてハンターやろうぜ。な?」
?2「1つ・・・・・聞いてもいいか?」
?1「ん?何だ?」
?2「何で・・・俺なんかを誘ってくれるんだ?俺はあんたが
   言う通り、強盗するしか能の無いただのガキだぞ!?
   大した学も特技も持っちゃいないこの俺なんかじゃなく
   ても他にいくらでも都合つくやつがいるんじゃないの
   か!?・・・・・何で俺なんだよ・・・・・?」
?1「・・・・・・・目だよ。」
?2「・・・目?」
?1「ああ。そのどこまでも貪欲でなおかつ高潔さを併せ持った
   気高い目は一流のプロハンター特有のものだ。
   ・・・賭けてもいい。お前は犯罪するしか能の無いガキ
   なんかじゃないよ。自分の身を犠牲にしてまでも仲間を
   守り抜こうとする立派な男だ。そしてその気高い精神はプロ
   ハンターには必要不可欠なものだ。だからもっと自分に
   自信を持て・・・・っておい・・あら・・・ちょっと・・
   お前・・・ひょっとして・・・・」
?2「・・ちげぇよ・・・こ、こっち見んなよ・・・・ウウッ
   ウウウッ・・・ヒック・・・・ヒック・・・・・・・・」
そう・・・俺は不覚にもその男の話を聞きながら涙を流して
しまっていた。・・・・・・初めてだった。俺という存在を
真正面から受け止めて認めてくれた人は・・・・・。
?1「いや〜そうかそうか!俺の話にそんなに感激しちまった
   か!!本当に嬉しいよ!!wあんがとよ!!w
   ププ・・・クククククク」
?2「んだよ・・・笑いたきゃ笑えよ・・・・・・」
?1「いや・・・すまんすまん。お前があんまり素直な反応
   示すもんだからおかしくっておかしくってさぁ・・w
   ふぅ・・・ま、バカ騒ぎはこのぐらいにして・・・・
   んじゃ改めて自己紹介でもしておくか。一応師弟関係
   になるわけだしな。」
?2「え?もう?ってか俺まだ返事してないけど・・・」
?1「ん?ここまできてハンターやりたくないとか言うわけ?」
?2「いや・・・・・・・やりたいっす。」
?1「そうそう。ガキは素直が一番。って事で自己紹介な。」
そして男と俺は同時に言った。


     
   ?1「俺はジン・フリークスだ。・・・よろしく。」
   ?2「カイトっす。・・・よろしくっす。」
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?2「(・・・・・あれ・・・・まただ・・・・・・・
    ・また・・・・いしきが・・・はっきり・・して
    ・・・なくて・・・・あたまが・・・・ぼうっ
    ・・・・とする・・・・・・・・・・・・・)」
?A「おはよう、ユピー。」
?2「(ゆ・・・ぴー・・?・・・だ・・・・れ・・・だ・・・?
   き・・き・・おぼ・・・え・・が・・・・ない・・・・・
   ・・そ・・・れに・・・・がっき・・・?・・・・・・・
   ・・ばい・・お・・りん・・のねいろが・・・・・だ・・れ
   ・・・だ・・・・・・・・・・?)」
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カイト(以下カ)「うわぁ・・・よくこんなでかい島をゲームの
         舞台に選びましたねぇ・・・何つーんすか?
         この島の名前は。」
ジン(以下ジ)「グリードアイランドだ。結構苦労したんだぞ、
        ここにするのはよ。金もかかったしな・・・」
カ「何言ってんすか・・・トリプルハンター同然のジンさんが
  買えないものなんかこの世にないでしょうに・・・・・・」
ジ「・・・・・・・あるよ。」
カ「へっ!?・・・・な、何なんすかそりゃ?」
ジ「人の想い、夢・・・陳腐な表現だが言葉にするなら・・・
  ま、そんなとこだろうな。」
カ「ゆ、夢っすか・・・・・?」
ジ「ああ。このゲームもそうだ。こいつはある一人の男の為に
  作ったようなもんなんだがな。そいつがハンターになって
  ここに来るかどうかは・・・正直分からん。そもそもそい
  つがハンターになるかどうかも・・・な。
  だが、俺には確信がある。そいつがハンターになってここ
  を訪れるという確信がな。そしてここをクリアした時に
  そいつは飛躍的に実力を上げて、自分の夢へ向かって
  更に前進し続けるだろうよ・・・そしていつか俺と同じ
  場所へ来て同じ目線に立って同じ夢を抱く・・・そう
  なると確信したからこそ、このゲームを作ったのさ。
  ・・・そいつの夢の礎を築くためにな・・・・。」
カ「・・・・・・・・・・・・・」
ジ「おまえの写真もそういう事だろ。スピンちゃん
  にスティンくんだっけ?融資してやったんだろ?」
カ「ああ・・・このコクチハクチョウの群れと一緒に撮った
  写真に写ってるこいつらの事ですか?・・・大した事
  じゃないっす。昔俺がジンさんにしてもらった事を
  こいつらにもしてやっただけですよ・・・・・。」
ジ「・・・・・それだよ。俺が言いたいのは。」
カ「え?」
ジ「俺が伝えたかった事をお前はしっかりと受け止めて
  次のやつらにきっちりとその想いを伝えてくれた。
  ・・・いいか、カイト。いい機会だからきっちり
  言っておくぞ。俺たちハンターにとって最も大切
  な仕事は賊を壊滅する事でもなければ、金儲けでも
  ない。最も大切なのは・・・人と人の想いを繋いでいく
  事なんだよ。そして誰かの想いや夢を次の世代へ
  正しい形で継承させていき、夢の系譜を作り上げる事こそが
  俺たちハンターに課せられた最大の使命だ。
  その事をくれぐれも忘れないでくれ・・・・・・・」
カ「・・・分かりました。これからも伝えていきます。」
ジ「・・・・・頼んだぞ・・・・・・・・・・」
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?2「(ま・・・た・・・か・・・・こん・・どは・・・・・・
    ・・・あ・・れ?・・・・こい・・つは・・・・・・・
    ・お・・れ・・は・・・こ・・い・・・つを・・しって
    いる・・・・な・・つか・・し・・いな・・・・)」
俺は既にまともな思考ができなくなっていた。
その状態で俺の方に近づいてくる少年の名前を思い出そうと
俺は必死になっていた。
?3「カイト・・・もう大丈夫。大丈夫だよ。」
?2→カ「(・・・ゴ・・ン?・・・・ゴン・・・か?
      ・・・もう・・・すこし・・・ちかく・・
      に・・きてくれ・・・お・・まえ・・に・
      つ・・たえ・・たい・・想い・・・が・・
      ある・・・)」
俺の体は俺の意思に反して、接近してきたゴンを殴り始めた。
?3→ゴン(以下ゴ)「あの時以来だね。カイトに殴られるの・・・
           あれは痛かったなァ・・・・・」
そしてゴンが俺の攻撃を掻い潜ってカイトの体を抱きしめた。
カ「(ゴ・・・ン・・・・いい・・か・・・これから先・・・・
   なにが・・・あろう・・・と・・じぶん・・の・・・・・
   ・・し・・んねん・・を・・つ・・・らぬく・・んだぞ・
   ・・お・・れは・・・もう・・・こう・・やって・・・・
   想いを・・・つた・・え・・る・・・こと・・し・・か・
   で・・・き・ない・・・けど・・・・がんばれよ・・・・
   ・・・・・ゴン・・・・!)」
ゴ「ごめんねカイト・・・オレ達のせいでこんな・・・・・・・
  少し・・・休んでいいよ・・・後はオレ達に任せて・・・・」
気休めかもしれない。偶然かもしれない。だが俺は確信した。
ゴンに俺の想いが確実に伝わった事を。
俺の夢を託せた事を。
カ「(こ・・・れ・・で・・・いい・・・ん・・です・・・よね?
   ジ・・・ン・・さ・・ん・・・おれ・・・ちゃんと・・・・
   つ・・・た・・え・・ました・・・よ・・・・・・・・)」
ゴンはいずれネフェルピトーと呼ばれたキメラアントを倒す
だろう。そして俺は・・・・再び死ぬ事になるだろう。
おそらく俺の体は今度こそ永遠に土の中で眠る事になるだろう。
・・・だが俺にもう悔いは無い。伝えられたのだから。
託せたのだから。・・・・・俺は満足だった。
例えこの身が朽ち果てようと、例え俺の存在が忘れ去られようと、
俺やジンさんやそのまた前のハンター達の夢や想いが、
ゴンやキルアやそのまた後の世代へ受け継がれて
夢の系譜を作り続けていくかぎり、
   


         
        
       俺の夢は、終わらない。


          
  


  

   

      
2005年2月07日(月) 07時09分25秒
原稿用紙: 19 枚
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幻影旅行(visit8) さんからのメッセージ

またまた長くなってしまいました・・・。
何とか短くまとめようと頑張ってはみたんですが。
難しいですね。
さて、今回の話はいかがだったでしょうか?
主役はカイトです・・・が、ある意味「ハンター」という
職業に対して私が考えていた理念の真髄こそが真の主役
かもしれません。このお話。
私も小説を書いていてつくづく思います。
「私が言いたい事ちゃんと伝わってるんかな?」
・・・と。
人と人は完全には分かり合えないわけですが、
だからこそ相手に自分の想いや考えがきちんと
伝わる様に日々努力していきたいです。
この話を読んでくださった皆さんの中に
私の想いや考えが伝わる事を信じて・・・。
それではまた。