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HUNTERXHUNTERの謎
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アイコンナイトスパイダー −幻影旅行さん

ナイトスパイダー

「あ〜〜〜・・・・・かったり〜・・・・・・・」
「・・・・しょーがねーだろうが。{七ならべ}のビリ1とビリ2が酒の調達に行くって約束だったんだからよ。勝てなかった俺らが悪い。」
「馬鹿野郎!!俺がビリ1になっちまったのは全部おまえのせいだろうが!おまえがいつまでもダイヤの4をストップしてたから俺がパス4になっちまったんだぞ!!」
「それが戦略ってもんだろ。敵の手を読み、いかにして相手の考えの裏をつけるかを競い合う・・・勝負ってのはそういうもんだぜ。今さら恨み言は言いっこなしだ。」
「はいはい!わかった!わかった!わかりましたよ!・・・ったく・・」
月明かりの元、夜の街を2人の男が歩いていた。1人は長髪のヒゲ面で腰に布を巻いた長物を持参している。もう1人はかなりの巨漢でそのいかつい顔には無数のキズがあり、そのキズが男達が一般人の常識とはかけ離れた闇の世界の住人である事を物語っていた。男達の名は長髪がノブナガでキズ顔がフランクリン。かの悪名高い世界最強の盗賊団「幻影旅団」の一員だった。彼らはつい先ほどアジトで行われた、メンバー総参加の{七ならべ}で敗北を喫し、罰としてヨークシンに滞在中の酒一式を調達するハメになりこうして男2人でむなしく夜の街へ繰り出してきたところだった。


「それ」はちょうどノブナガとフランクリンが酒屋に到着した時に起こった。2人が店の前に立った時、不意に周りに無数の人影が出現したのである。
が。2人は別段慌てる事はなかった。何せ盗賊稼業なぞ続けていれば嫌でも敵は増える。味方なぞいない。その為命を狙われるのは彼らに取って日常茶飯事の出来事だった。だからその人影達が自分達の周りを取り囲んでも動揺するはずもなく、むしろヒマ潰しにはもってこいだと2人は内心密かに喜んだ。
そしてその人影達の中の1人が2人に対してこう言った。
「おじさん達さぁ〜、今金いくらか持ってねぇ?持ってたら貧乏な俺らにちょっくらカンパしてくんね?・・・・してくんないと俺ら暴れちゃうよ?」


その少年達は朝から不機嫌だった。何せ彼らが親と一緒に参加するはずだった裏オークションが急に中止になったのだから。理由はその少年達には知らされなかった。少年達を不安がらせないように、という親達の余計な配慮だった。しかし・・・・結果的にその配慮は裏目に出てしまった。ヒマを持て余した少年達はその晩から街に出て一般人を集団で暴行する「狩り」を始めてしまったのだから。とはいえ少年達には暴力はごく日常的な行為であり「狩り」という名の残虐な行為をしても彼らの良心が痛む事は全く無かった(そもそも良心自体存在しないのかもしれないが)それもそのはずで彼らの親は暴力のプロフェッショナル・・・・マフィアだった。彼らの親は息子達にとことん甘く、少年達もその親の庇護を盾に今まで数々の残虐行為を繰り返してきた。そしてこの日もいつもと同じ様に無抵抗の一般市民を集団(30人)でいたぶった帰りだった。いつも圧勝する「狩り」に物足りなさを感じていた彼らは、これまでとは違って少々手強そうな相手を標的にする事に決めた。彼らはそれまで自分達より遥かに力の劣る者を集団でしかいたぶった事がなく、いわば「実戦経験」が皆無に等しかった。だから本当にやばい相手を見抜く危機感知能力が絶対的に不足していた。そして彼らがこの日からんだ2人の男こそが、その「本当にやばい相手」だった事に最後まで気付けなかった事が彼らにとって最大の不幸だった。

ノブナガ(以下ノ)「・・・・・・・・・はぁ〜〜〜・・・・」
フランクリン(以下フ)「・・・・・・・・やれやれ・・・・・」
2人はその少年達の姿を見て、明らかに落胆していた。実は2人とも気付いていたのだ。酒屋に向かう途中から自分達を尾行している存在に。一体何人の尾行者がいるのか?自分達との距離は?・・・・全て感知していた。熟練のプロハンターでもうかつに手が出せないほどの実力を誇る彼らならば、その程度の芸当は児戯に等しかった。だから尾行者達が姿を現した時は正直期待したのだ。このパシリのヒマ潰しが出来る事に。ところが・・・・だ。
ノ「(勘弁してくれよ・・・・こいつらどっからどう見ても素人のガキじゃねーかよ・・・てっきり腕の立つプロハンターが俺らを仕留めに来たのかと思ったのによ・・・幻影旅団ともあろう俺らが素人のガキ共を相手になんかできるかよ!)」
フ「(ったく・・酒の調達に来て恐喝かまされるなんざぁ、夢にも思わなかったぜ・・・やれやれだ・・・)」
少年達は2人の男が沈黙したのは、恐怖に震えてパニックを起こしているためと判断した。彼らは今まで弱者しか相手にしてこなかった・・否、相手にできなかった。だから知らなかったのだ。圧倒的強者の余裕という感情を・・・少年達は恐喝行為を続行する事にした。結果的にはその判断が生か死かの最終分岐点となってしまった。
少年1「あっれ〜、ひょっとしてブルっちゃってる?マジ?マジで?」
少年2「・・・ど、どうすればいいんだ!こ、こんな大勢の若者に囲まれて・・ど、どうにかして逃げなければ!!・・とか思っちゃってんすか?w」
少年3「お、おまえ、演技うまい!サイコー!w」
少年4「おい!・・・・黙ってねーで何とかいえや!ゴラァ!!」
ノ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
フ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少年達は明らかに動揺していた。何せいくらこちらが挑発しても全く反応を示さないのだ。やがてしびれを切らした少年の1人がノブナガに殴りかかった。
少年5「死ねや!!ウラァ!!!!」
少年は持参していた特殊警棒でノブナガの頭部をかち割った・・・はずだった。しかし、気が付くと今まで少年の目前にいたはずのノブナガがいつの間にか自分の背後に立っていた。少年はパニックになった。
少年5「(な、何だ!今のは・・・・あいつ俺の目の前にいたはずなのに!・・・・こ、こいつら・・ひょっとして、やばい?)」
ノ「・・・・気ぃ済んだか?」
少年達はそのノブナガの一言でようやく事態を把握した。自分達は手を出してはいけない{本物}に手を出してしまった事に。自分達の親よりも更に深遠の闇の世界に潜む住人に手を出してしまった事に。少年達は恐怖した。いくらしてもし足りない程に。そしてその恐怖が彼らにとって最大の過ちを犯させてしまった。
少年5「な、何だ・・・つ、強いんじゃないですかぁ〜。そんならそうと言ってくださいよ〜。あ、ホントお手間とらせちゃってすんませんでした。お詫びにこれお二人にプレゼントしちゃいますね!もらってください!」
そう言って少年はノブナガとフランクリンに小指状の物を差し出した。2人は少年達のあまりの手の返しぶりに嫌気が差しながらもその小指状の物をよく見てみると・・・・それは文字通り{小指そのもの}だった。小指には美しい宝石がはめ込まれた指輪がはまっていた。少年は有頂天になって続けた。
少年5「それ、めちゃくちゃキレイっしょ?この前どっかのババァから盗った物なんすよ。そのババァすっげぇしぶとくてなかなか指輪放さねーんで、めんどくせーから指ごと盗ってやったんすよ。・・・あ、大丈夫っすよ。俺らの親父達、マフィアの幹部連中なんでこの街のポリはみんな俺らの親父のいいなりっすから^^だから遠慮なく貰ってください。俺らも指輪なんか正直ほしくもなかったんすけどね^^何かノリで盗っちゃったんでw」
ノ「・・・・・・・・・・欲しくもなかっただと?ノリで盗っただと?」
少年5「え?いやあれ?どうし」
少年が最後まで言葉を発する事はなかった。少年の首は彼が発言を終える前に胴体と切り離されてしまったからだ。ノブナガの刀で。その場にいた他の少年達は一瞬何が起こったのか全くわからなかった。そして誰も事態を正確に把握できないまま場は終結した。最初の少年の首を切り飛ばしてから2秒かかるかどうかの時間内で残りの30人近くの首をノブナガが跳ね飛ばしてしまったからだ。2人の周りには首を無くした胴体が30体呆然と立ち尽くしていた。

2人は目当ての酒をかっぱらって帰っていた。
フ「・・・・何で殺したんだ?別に無視しちまってもよかったんじゃねーのか?たかが素人のガキのやんちゃだろ?」
ノ「・・・・別に・・殺すつもりは無かったんだけどよ・・」
フ「ん?」
ノ「・・・これは俺の持論なんだけどよ。俺らは盗賊だ。盗むのが生業だ。だから盗む時はそれが本当に欲しい時だけだ。欲しければ命を掛けてどんなものでも盗んでみせる。逆に欲しくなければどんな理由があろうと決して手をださねぇ。それが俺達の矜持であり誇りだ・・・・と俺は思ってる。」
フ「・・・・・・・・・・・・・・・」
ノ「けどよ、あいつらは違った。欲しくもねぇ、どーだっていいもんをただの遊び半分で盗りやがったんだよ。それを目の前で嬉しそうに話すのを聞いてたら・・・何か・・こう・・俺達の{盗賊としてのプライド}を真っ向からぐしゃぐしゃに汚された様な気がしてな。気が付いたら・・・やっちまってた。」
フ「・・・・そうか・・・なるほどね・・・」
ノ「あ、だからってよ!何も俺は正しい事をしようとかそういう事を言ってんじゃねーんだよ!あいつらが親の権力を悪用してどんなやんちゃ行為しても俺には全く興味がねーんだよ。俺らだって立派な悪党だしな。・・・・・ただよ・・・ただどんだけやりたい放題しようが、絶対に守らなけりゃいけない何か・・正義とか悪とか善人とか悪人とかそんな事関係無しに守らなけりゃいけない何かを・・・・あいつらは全く守ってなかった、守ろうとする気すらなかった・・・それがどうしても許せなかったんだよ」
フ「・・ククク」
ノ「な、何だよ?」
フ「いや〜、おまえって意外と正義感強かったんだなと思ってさ。」
ノ「ばっ!!!だ、だから違うっつってんだろーが!!俺はあいつらが・・」
フ「・・・・ま、俺もわからんでもないぜ、その気持ち・・・・」
ノ「・・・・・そ、そうか?」
フ「ああ、俺も筋金入りの悪党だからな。」
ノ「だよな。」
2人は空を見上げた。空には月が浮かんでいた。
そしてその月に一筋の雲がかかろうとしていた。

    
    闇夜を更に暗黒に染め上げる、一筋の黒い雲が。
幻影旅行





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