白昼。 峠のひっそりとした道路をバスが走ってゆく。 バスの客は数人。その中に青年が一人。 荷物は使い古したバッグ一つと、古ぼけた人形のみ。 バスが停止し、青年はそこで降りる。 何処にでもあるような、山のふもとの田舎町。 ここが青年の目的地であろうか。 「金がもう無い・・・」 否、どうやら交通費が尽きたようである。 『人形使いと人形使い』by 名無しさんだあっ! 「さて、これからどうするか・・・」 青年はのびをしながら今後の事を考える。 懐の金が底をついた以上、一刻も早く資金調達をしなくてはいけない。 先の町へは歩いても行けるが、今の青年は食糧すら持っていなかった。 食事にも金は必要。丁度腹も減り始め。青年は急がなければならなかった。 「とりあえず、人が居る場所を探さなきゃあな。」 目先の目標を定めると、青年は歩き出した。 ------------------------------ 「くぅぅぅぅ・・・」 青年の腹の虫が鳴り始める。 意気込んで動き始めたものの、世間はそうそう甘くはなかった。 暫く歩いていたが、人の集まりそうな場所は中々見つけられない。 青年に空腹と苛々が募る。そんな時だった。 「きゃっ」 歩いてきた人とぶつかってしまった。 「うぉっ・・すまない。大丈夫か?」 「あ・・・はい・・・」 青年は転んでしまった少女をとりあえず起こす。 怪我が無いことを確認すると、顔を叩いて気を引き締め、再び歩き出した。 「ったく、いけねぇな。注意力が無くなっちまってる。早いところ稼いで食わないと・・・  しかし、ありゃあ外国人か?」 少女の髪は金髪で、瞳は青かった。日本人でないのは確かだが、青年は少し疑問に思った。 『なんでこんな田舎に外国人がいるのだろう』と。 ------------------------------ 更に暫くして、やっと人が集まりそうな場所が見つかった。 小さな神社へと続いてる階段のふもとだが、ちょくちょくと人が通る。 青年にとってはそれだけで十分であった。 もはや胃袋は限界だ。青年は有無も言わさずポケットに手を突っ込んだ。 ・・・・・・・・・・ 数十秒して、青年の顔が凍りつく。 「・・・・・無い・・・・・」 そう、いつも彼のポケットに仕舞ってある筈の商売道具が。 「俺の人形が・・・無いっ!!!!!」 無いっ・・・無いっ・・・ないっ・・・いっ・・・っ・・・ 悲痛な叫びが辺りにこだまする。 青年は何処かで商売道具である人形を落としてしまったようだ。 更に不幸なことに、今の絶叫に全ての体力を使ってしまい、 青年の意識はそこで途絶えてしまった。 (何てマヌケなんだ、俺は・・) ------------------------------ 『うぅぅ、腹減った・・・』 『へいらっしゃい!お客さん、何にする?』 『ここはラーメン屋か。女一人で仕切ってるのか?』 『そんなことどうだっていいぜ。それよりお客さん、注文は何だ?』 『ラーメンセット。うんと大盛りのをだ』 『へいお待ちっ!』 『早いな!では・・・(スカッ)ありゃ?』 『お客さん・・・金持ってないだろう』 『バレたか・・・だが悪いな。金よりも食い物の方が大事だ!』 『うおっ!丼をっ・・・』 『ダッシュッ』 『逃がさないぜっ!食らえ!』 『!?バ、バ○ターライフル・・・ぬおぁぁぁぁ!!』 ------------------------------ 「うううっ・・・お、俺のラーメンセット・・・」 「あっ、気がついた」 青年が目を覚ますと、視界に木の天井が写った。 「夜の境内は危ないから、勝手に運ばせてもらったわよ」 どうやら神社の中に運び込まれたようだ。 「・・・そうだ、階段のふもとで倒れてそれから・・・」 ゆっくりと気絶するまでの出来事を思い出してゆく。 少しして、神社に住んでるらしい少女が出てきた。 「目が覚めた?何処か悪いとこでも打たなかった?」 「痛っ・・・特にマズい所は無い・・・が、痛い」 「我慢しなさい」 「そうさせてもらう」 「今日は暗いし、ここで泊まっていくといいわ。  まぁ、出せるもんと言ったらお茶くらいしか無いけど」 「ラーメンセットは無いか」 「そんな高級なもん出せない」 「そうか」 外ももう暗い。この状況では人形を探しに行っても仕方ないので、 青年は暇つぶしに神社の少女の話に付き合うことにした。 「あんた、何であんな所にいたの?」 「金に困ってな。ちょっと芸でもやろうと思ったんだ。」 「うちの敷地内で勝手にねぇ。別に構わないけど・・・何の芸よ」 「人形芸だ。まぁ、肝心の人形を無くしちまったんだがな」 「ガラに合わないわね」 「よく言われる」 「まぁ、どっちにしろここら辺でお金稼ぐなんてやめた方がいいわ」 「何?」 「まともな通貨を持ってる奴を手で数えられるわ。  それに、物は買うより奪い取った方が効率がいいし」 「なんつー物騒な場所だ・・・まぁ、飯にありつけただけ良しとするか。  しかし、そうなるとここに長居はできないな」 「普通の人はそう言うわ」 「奪い取ろうとはしたが、返り討ちにあった。夢の中だがな」 「あんた、ちょっと普通じゃないみたいね」 そんな話で茶を濁していると、外で音が鳴った。戸を叩く音だった。 「こんな時間に・・・だれだ?」 「あいつかしらねぇ」 「お前の友達はこんな夜中でも遊びに来るのか」 「何時もの事よ。」 そう言いながら彼女は玄関に向かった。 「・・・あんたが来るなんて珍しいわね」 玄関から話し声が聞こえる。 「なによ、来たら駄目なの?」 「ま、どうでもいいけど、何の用?」 「今そっちにお客さんが来てない?」 「来てるけど、何でわかるのよ」 「入れさせてもらうわ」 「あ、ちょっと!」 足音が近づいてくる。その音の主は 「!あんたは、昼間の・・・」 「やっぱりここにいたのね。」 青年が昼間出会った外国人少女だった。 「何であんたがここに?」 「この子が教えてくれたの」 少女が取り出したのは、青年の商売道具だった。 「俺の人形・・・」 「あなたとぶつかった時、この子が落ちてるのに気がついて。  声を頼りにあなたの居場所を探してたんです」 「声、だって・・・?」 「こいつ人形使いだからね。人形の声なんかは簡単に聞けるみたいよ」 「なんかとか簡単にとか言わないでよ。人形だって心があるんだから」 神社の少女の横槍に、外国人少女が機嫌を悪くする。 「心、か・・・」 青年はそれを聞いて何かを思い出しているようだった。 「その子の心が強かったから、何とか見つけられたんですよ。  それに、凄い魔力だった・・・何十人分もの魔力が込められています、その子には」 「魔力・・・法力ってことか。とにかく・・ありがとうな、あんた。」 「そんな・・礼には及ばないです。私はその子をあなたに返しただけですから」 そう言うと彼女はほのかに微笑んだ。 「カッコつけちゃって。本当は嬉しいくせに」 「そ、そんなことっ・・・」 神社の少女の横槍で彼女の頬が染まる。 ここは面白い神社だと、青年は思った。 「すっかりご馳走になったな。朝飯まで食わせてもらって」 「あんな軽いものでいいならお安い御用よ」 夜が明け、青年は次の町へいく準備を始めていた。 幸い米を分けてもらった為、数日間は絶叫して気絶するような事は無いだろう。 「そういえばあんた、何で旅してるの?」 「・・・空にいる少女を探してる」 青年がそう言うと、少女達はキョトンとした顔で 「別に珍しくも何ともないわね。そんなのたくさんいるわ」 「私達だってそうだし」 そんなことを言ってきた。青年には訳がわからなかった。 そして、階段のふもとまで下りてきた。 「それじゃあ、世話になったな。」 「こっちも、色々聞けて楽しかったわ」 「その子、これからも大事にしてあげて下さいね」 「当たり前だ。それじゃあな」 そう言いながら、青年は手を振って歩き出した。 「この調子なら、明日には次の町に着くな。稼ぐのはそれからだ」 ここから、青年の旅の続きが始まる。この先の町では、一体どんな出会いがあるのか。 それは誰にも解らないが、一つだけ言えることがある。 青年が出会った人間の中でも、あの少女達は一際特殊だったことだ。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ というわけで、東方とアレをミックスさせてしまいました。 見辛くて申し訳ありません。経験で直します。 ・・・・・あんまりそうは見えませんけど、一応アリス支援・・になるのか? 自分でも微妙な感じになってしまいました。 というか、東方メインにするべきなのに比率が完全に東方<アレになってます。 自分なりに彼女ら性格を解釈して盛り込みましたが、果たして他の人の目にどうとまるか。 ドキドキもので御座います。