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キャラメル☆ラバーズ

作・一葉ひよ





「お散歩に行きませんか?」

 という双樹ちゃんの提案で、俺たち(俺と双樹ちゃんと沙羅ちゃん)は昼下がりの公園にやってきた。
 ひとしきりぶらぶらし、じゃあ休憩しようか、ということになり3人並んでベンチに座る。

 ちなみに右から、俺、双樹ちゃん、沙羅ちゃんという形だ。

 普通こういう場合は『両手に花』ってな感じになるんじゃないかと思うんだが、沙羅ちゃんが双樹ちゃんにくっつき、
双樹ちゃんが俺にくっつくので、いつも結局、双樹ちゃんを俺と沙羅ちゃんで挟むような格好になる。
 まぁそれはそれで良いんだけどさ。・・・・・・口惜しくなんかないやいっ。

 ベンチにもたれかけて空を見上げると、突き抜けるような一面の青。その中を綿菓子みたいなぽわぽわした雲が流れている。
 爽やかな初夏の風が、なにやら甘い香りを運んできた。これは・・・・・・クレープだな。どこかに店が出てるんだろう。

「あ、あの、お兄さん」

 どうやら双樹ちゃんも気がついたみたいだな。急に落ち着きがなくなってる。

「あ、あの、喉、渇いてませんか? 双樹、何か買ってきます」

 俺が行ってくるよ、とは言ってみたものの、双樹ちゃんが自分で行くと言って聞かなかったので、じゃあコレを、と多目にお金を渡す。
 双樹ちゃんは遠慮したけどこれくらいは甲斐性だし、俺らの分もいっしょに好きなもの買ってきて、といって送り出した。
 残った俺と沙羅ちゃんは、しばらく黙って双樹ちゃんの帰りを待つ。と、

「おい、・・・・・・ちょっと、いいか?」

 不意に沙羅ちゃんが口を開いた。

「なんだい?」
「・・・・・・あのな、いつも言ってるけど、私にとってオマエは、あくまで双樹のオマケなんだからな」

 そう、沙羅ちゃんにとって、一番大事なのは双樹ちゃんだもんな。

「だ、だけど・・・・・・」

 そこまで言って、沙羅ちゃんは俺から視線を外してうつむいた。
 言葉を続けるかどうか迷っているんだろう、膝の上で自分の指を玩んでいる。
 やがて、決心したのかグッと手を握り締めると、いつもより小さめな声で、ボソッと呟いた。

「オ、オマエにとっても私は・・・・・・双樹の、オマケなの・・・か?」

 ぷぷっ。

 いつものふてぶてしい態度はどこへやら。今の妙にもじもじしている様子は、なんというか・・・・・・すごくカワイイなぁ。
 俺は左手を沙羅ちゃんの頭に伸ばして、クシャクシャっと少し強めに髪を掻き撫でながら言った。

「俺には、沙羅ちゃんも双樹ちゃんも、同じくらい大事だよ」

 その言葉を聞いた途端、沙羅ちゃんの顔が真っ赤に染まった。

「そ、そんなこと言っても、わ、私は、う、嬉しくないからな! そ、それに、気安く髪に触るな。わ、私の髪に触っていいのは、双樹だけだっ!」
「まぁいいじゃん。沙羅ちゃんの髪、さらさらしてて気持ち良いよ」
「う、うるさいっ」

 なんて感じでじゃれ合っていると、

「ああ〜っ、二人ともずっるーいっ!」

 と声がした。
 声の主はもちろん、両手いっぱいにクレープと飲み物を抱えた双樹ちゃん。

「双樹も沙羅の髪に触る〜」

 そう言いながら手に持ったクレープ等を沙羅ちゃんに押し付け、隣に座って髪に頬ずりする

「はぁ〜、沙羅の髪って、気持ちい〜」
「だよね〜」
「こ、こら、双樹止めろ! オマエも調子に乗るなぁ!」

 しかし両手をふさがれ抵抗できない沙羅ちゃんは、しばしされるがままになるしかなかったのであった。

 ・・・・・・と、そんなこんなで今日もまた、のどかに一日が過ぎていくのであったとさ。





【終】



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