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Unbalanced Connection

作・横山 怜さん






 その日は北風の吹きすさぶ、真冬に相応しいと言える日だった。
 冷たい空気は容赦無く襲い掛かり、雲で覆われた空が陽光で癒してくれる事など一切無い。
 自然、人々は家に篭り、暖房を効かせて寒さをしのぐ。そんな日の夜―――。



「うづきママーっ。部屋に着いたから起きてー」

 まことは眠っているうづきを背負って、彼女の部屋へと向かっていた。
 特に祝い事もないのに、ドンチャン騒ぎをした結果がこれである。

「うにゅうにゅ……うづき、そんなに子供じゃないもんっ…」
「ウィスキーボンボンで潰れる時点で、じゅーぶん子供です」

 寝言に軽口で応えてから、まことは部屋に入る。
 ベッドの上にうづきを下ろすと、エアコンを作動させて冷え切った室内を暖める。
 後はタオルケットを掛けてあげるだけだったが、彼はその場にとどまった。

「…………」

 幸せそうに眠るうづきを見つめながら、この一年―――5人のママが家にやってきてからの事を思い出す。
 寂しいけれど自由気ままな一人暮らしと思われた日々は一転、ママ達とのドタバタに振り回されるようになり、まことを飽きさせるようなことは無かった。
 特に彼女、四天王うづきは特別だ。
 子供のような外見、同じく子供のような中身で母親役をこなそうとするも、大体は失敗。
 逆にまことが世話を焼いたり、一緒になって遊んでいることの方が多かった。
 しかし、そんな毎日を過ごすのがとても楽しくて、彼女が傍にいるだけで心が満たされてゆく。
 夏休み前の学校でいじめに遭って涙する姿を見てからは、守ってあげたいとすら思っていた。

(馬鹿みたいだ。相手はママで教師なのに)

 止まらない気持ちは目下のところ、現実の立場が阻んでいる。
 否、現実の立場を自覚していても、それでも自分の気持ちは止められない。

「愛してるよ、うづきママ」

 だから、まことには寝顔にキスをする位しか思いつかなかった。
 寝ている子供なら、秘めるべき想いの発露に気付かないから。
 …いや、気付かない筈だった。

「…その言葉、ホント?」

 去り際に手を掴まれて振り向くと、うづきが上体を起こして尋ねてきた。
 その表情は、いつもまことに見せてくれる笑顔とは遠くかけ離れたカタチをしている。

「うづき、ママ…」
「教えて。その言葉、ホントなの?」

 見知らぬうづきは問いを繰り返す。
 まことはしばらく逡巡したが、思い切って口を開く。

「うん。うづきママの事、好きだよ」

 内心では動揺が収まらないが、まことは正直に答えた。

「だって、うづきって子供っぽいよ? お料理もうまく出来ないし、趣味が変だって言われるし…それにっ、ママと恋愛なんて変だよ!?」
「家事はこれから何とでもなるし、趣味も理解しているつもり。それにさ、子供っぽいのと純粋なのって表裏一体でしょ?
 …俺はうづきママのそういう所を大事にしてほしいし、一人の女の子として守りたいなって思ってる」

 一瞬だけうづきは喜色を顕わにするが、なおも食い下がる。

「信じて、いいの?」
「信じて!」

 力強く即答するまことに、うづきは目頭が熱くなるのを感じる。
 それを完全に見られる前に彼女は答えを出した。

「うづきもね…まことちゃんの事好きだよっ!
 むつきちゃんみたいに家事も出来ないし、やよいちゃんみたいに色っぽくもないけど、まことちゃんと一緒にいたいって気持ちは一番だもんっ」

 そう言い切ってから、うづきはまことの胸の中へ飛び込み、声を押し殺して泣いた。
 まことも釣られて―――叶いそうもない願いが叶って、泣きそうになった。





「本当にコンナコトしていいの?」

 全裸一歩手前な姿になっておきながら、まことは恐る恐る訊ねる。
 確かにうづきが自分の想いに応えてくれたのは嬉しく思ったが、そこから一気にベッドシーンになるとは予想もしていなかったのだ。

「うんっ、みんな酔っ払って寝ちゃってるんでしょ? それに、ここ…」

 下着だけになったうづきが股を広げると、その中心は分かりやすい位に濡れていた。
 これ以上は聞くだけ野暮だろう。

「それじゃ、うづきママ」
「ん…」

 二人は抱き合い、唇を重ねる。
 互いの肌は室内に暖房が効いている事を差し引いても熱い。

「むぐっ……んむ……」
「ん…んンンんっ、ンムっ、んんんッ………ハァッ…」

 一旦離れた二人の口元には、互いの唾液がこぼれている。
 所謂ディープキスというものだ。
 唾液がこぼれ落ちたついでに、まことは頭をうづきの胸元まで沈めていった。

「ぁん……」

 目前にうづきの乳房が迫り、まことはその膨らみに口をつける。
 すでに興奮して乳首が勃起しているのが実に可愛らしい。
 数値上では小さいとされるバストも彼にとっては口に含みやすく、吸いやすかった。

(これが、うづきママのオッパイ…)

 硬くて柔らかな果肉は中毒性でも持っているのか、まことの口はうづきの温もりを求め続ける。

「やっ、やだぁ…オッパイ吸わないでよぉ……」

 利き手で同じくガラ空きの乳房を掴み、揉みしだく。
 やはりサイズは大きくないが、プニプニと音がしそうな胸の弾力には魅了されてしまう。
 揉む手に力を込めて円を描き、出る筈のない母乳を夢想しながら空いた手で尻を撫で回す。
 ショーツにピタリと覆われた部位を押し付けるように撫でると、綿の柔らかさとうづき本来の弾力による触感が返ってくる。
 あるいは、下着の中に手を入れて弄り、生地と柔肌に挟まれる感触を楽しむ。
 見る分にも、触る分にも、下着の存在がまことの欲情を増幅させていた。

「……ッ、………ハァ…っ」

 身体中を触られて、うづきは声にならぬ声を漏らす。
 痴漢に触られて出せない声を出すのとは全然違う。
 彼が胸を揉み、お尻を撫でるたびに、カラダは快感を覚え更なる刺激を欲するようになる。

「まこと…ちゃんっ、ココも、触って…」

 呼吸を千千に乱しながら、うづきはまことの手をへその下、恥丘へと導く。
 まことも乱れた息を整えながら、ウンと頷く。
 キスをする前から濡れていたソコを、始めは下着越しになぞり、次にある部位を探しながら弄る。

「…ぁっ、そこっ、そこ、うづきのクリちゃん、そこ…」

 知識でしか知らなかった陰核を探し当てて、まことは興奮する。
 それと同時に、まことの指はより激しく陰門を擦ってうづきを攻め始めた。

「…ゃぁん、やっ、ヤダ……そんなにしないでよぉ」

 声と愛液をだらしなく漏らしながら、うづきの体はベッドに横たわる。
 それに乗じて、まことはショーツの両端を摘んで一気にずり下ろし、うづきの両足を開かせた。

「…………」
「そんなにジロジロ見ないでぇ…」

 その場所を手で隠そうとするうづきとは反対に、まことの目はカッと見開き、凝視していた。
 その場所には、何も生えていないからだ。
 弄った時に薄々感じていたが、うづきの秘所は生まれたままの姿を象徴するかのように産毛一本生えていない。
 それでいて剥き出しになった陰唇からは愛液がなおも溢れ、陰核はピクピクと震えるばかり。
 そこは、うづきを『子供』に見せると同時に、『大人』にも見せる矛盾した場所だった。

「あっ…、イヤぁぁぁん……ッ!」

 いきなりヴァギナに入り込んできた舌の感触に、うづきは思わず悲鳴をあげる。
 足を閉じようとするが、既に太股を押さえつけられているので、それは叶わない。

「ヒャゥんッ! ちょッ、ちょっと待っ…て、よぉ…ハゥッ!」

 一方のまことはと言えば、夢中になって貪っている。
 うづきの下半身が激しく揺れ動こうと、上半身が頭をポカポカと叩こうと、まことの勢いは止まらない。
 鼻と舌で感じるうづきの秘所は少々キツかったが、それすらもまことには極上の美酒だった。
 うづきも諦めたのか、両足の力を抜いてまことを受け入れ、まことの舌に身を任せた。

「あっ、はっ……ぁん、ぁ…ッ! はぁぁぁぁ…」

 一度ビクッと震えると、うづきの全身から力が抜けてくるのが分かる。
 どうやら軽くイッてしまったようだ。
 名残惜しい気分だったが、まことはうづきの膣口から顔を上げてうづきを解放した。
 もう、そろそろ頃合だろう。
 そう思って、まことは下着を脱ぎ捨てる。

「…うづきママ、そろそろ挿(い)れるよ?」

 うづきの秘所に押し当てているのは、まこと自身。
 うづきを抱くと決めた時から勃起していたソレは、既にガチガチに固まっている。

「まっ、まことちゃん……」

 処女特有の怯えから、うづきも別の意味でガチガチになっている。
 それに関しては、童貞のまことも理解しているつもりだった。

「優しく、するから」

 安心させるつもりで、うづきを抱き寄せる。
 緊張こそ解けてないまでも、うづきはただコクンと首を縦に振って了解した。
 ヌチャリ、と音を立てて陰茎が突き進む。
 膣を押し広げ、膜を食い破る為に。

「くっ、ゥァァァ…」
「うぅっ…はぁぁあぁっ! あっ〜〜〜〜ぁアァアアァッ!!」

 愛液が潤滑油になってくれるものの、挿入は多大な苦痛を伴う。
 うづきは破瓜に泣き、まことは悲鳴に悩まされる。
 先端が終点に達し、一応の安息が得られるまで、かなりの時間が経っていた。

「…は、入っちゃったね」
「ウン…」

 挿入後から言葉を交わすのには、更に時間を要している。
 そこでようやっと初めての性交は始められるのだ。

「それじゃ、動くよ…?」
「待って!」
「………?」
「手、握ってて」

 瞳を潤ませ、うづきは懇願する。
 そこに気まぐれな授業をする教師や、能天気に振舞うママの姿は存在せず。
 まことはただ男性としてそれに応えるだけだった。

「……ぁっ…、あっ…やあぁァぁんっ!」

 啼いている。少女が啼いている。
 その声は少女が出しているにしては、余りにも艶かしい。
 ココロは既に成熟しているというのに、そのカラダが未だに幼いせいだ。
 それが、まことには堪らなく劣情を掻き立てさせる。

 突く。引く。揉む。噛み付く。暴発しそうな自身を必死で制御する。
 挿(い)れたい。犯したい。陵辱したい。征服したい。この少女に自分の全てを注ぎ込みたい。

 体と意識の繋がりが遊離している。
 考えるより先に体が動き、命令が追いつかない有様。
 こうなってくると、ただその気持ちよさに意識を委ねる位しかやる事が無い。

「あんッ! まことちゃん、そんなに腰……ッ!!」

 言われても体は言う事を聞いてくれない。
 どうやら思っていた以上に、乱暴になっているようだ。
 大事にしたいと思っているのに、そんな思いに反比例して、聞こえてくる嬌声の大きさに比例して、まことの勢いは激しくなっていく。

「ハッ…、アッ、アッ……、あぁぁ……ッ! やっ、いやぁっ、いやぁぁぁぁん…」

 少女の啼き声は続く。
 最早まことにとって、うづきはママではなく一人の少女だった。
 “ママを抱いている”という背徳感も少なからずあるが、“少女と結ばれている”という歓喜の方が頭一つ分勝っている。

「あっ、やぁん、ハッ、ハァ…ッ」

 まことの腰は絶え間なく上下し、うづきの両足は天に向かって伸び切っている。
 快楽に緩んだ両者の顔には、何時の間にか何かを堪えるような苦しさも混じっていた。

「…ぅぅっ……うづき、俺もう…ッ!」
「あ、いいよっ。うづきの…、うづきの膣内(なか)にイッパイ…、イッパイ出してぇ……ッ!!」

 止めの言葉を言われて、まことは有らん限りの力を込めて腰を動かす。
 ただひたすらに、両者の『準備』を整える為に。
 オトコノコの礼儀として、向こうがイク前に射精したくはない。

「んぁ…、あっ……やぁ、や、やっ…、ハァァァ……ッ!!」

 その甲斐あってか、うづきの体は大きく震え、まことの背中に爪が立てられる。
 それがフィニッシュの引き金となった。


「「あぁっ、ぁっ、あぁあああぁぁぁぁぁッ……!」」


 二人同時に絶頂の声を上げると、どちらからともなくベッドに崩れ落ちる。
 うづきの子宮にまことの精子が注がれる音が聞こえるが、どちらも他人事のような気分で互いの顔を見つめ合っていた。

「まこと、ちゃん…」

 意識が落ちてゆく中で、まことはうづきの声を聞く。

「これからも、うづきと一緒に…」





「まことさん、起きてますかー?」
「…………」

 返事は無い。どうやら完全に寝てしまったようだ。

「おーおー。上がやけに騒がしいと思ったら、二人してこんな事やってたのか。…ッたく、うづきの奴」
「そっとしておいてあげましょう。ちょっと…妬けちゃいますけど…」
「そうね。…それにしても、こうして見ていると二人とも子供みたいねぇ」

 そう呟くと、四人の母親達は静かに部屋を出た。
 残されたものは、暗闇と静寂、そしてどちらからともなく寄り添って眠るまこととうづき。
 ベッドから覗く二人の寝顔は確かに、幸せそうに眠る『子供』の表情そのものだった。



【了】





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