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504 :二等辺三角関係(前)・1:2006/06/04(日) 22:37:34 ID:KUnI5Q1B

 日曜日の朝、れいんは琴葉にメールをした。
 その日は生徒会メンバーの殆どが出掛けていて、寮にはれいんと管理人さんしかいなかった。
 同室の小百合も鍛錬に行くと言ったが、れいんはついて行く気にはなれなかった。
 始めは部屋でゲームなどして気を紛らわせていたが、やはり一人は退屈だった。
 そこで、れいんは琴葉を呼び出す事にした。
 小百合がいなければ、堂々と琴葉を自室に呼べるし、ほぼ全員が留守にする事は滅多にない。
 これはチャンスだと思ったれいんは、琴葉に直ぐにメールを送った。
 数分後、琴葉からの返信が来た。
 内容は短く、素っ気無い文章だったが、琴葉はれいんの申し出を受けてくれた。
 れいんは嬉しさのあまりベッドの上を飛び跳ねていた。
 最近は仕事が忙しく、逢えない日が続いていただけに、その喜びは計り知れない。
 れいんは急いで部屋を掃除をした。
 普段は適当に済ませるれいんだったが、今日はいつも以上に張り切っていた。
 そもそも自発的に掃除をする事は少ないので、小百合が見たら驚くだろう。
 此処に小百合がいない事が残念だ。
 れいんは琴葉が来る三十分間、出来る限り部屋を綺麗にした。

「…いくら他の人がいないからと言って、いきなり呼び出すのはどうかと思うが…」
「まぁいいじゃん。こんな機会って滅多にないし、珍しいし、貴重でしょ?」
「…そ、それはそうかもしれないが…」
 琴葉はきっちり三十分後にれいんの部屋に訪れた。
 れいんの用意した麦茶を飲みながら、二人は何をするでもなく、ベッドの上に並んで腰を掛けていた。
 恋人同士になって暫く経つが、こんな風にゆっくりとした時間を過ごす事は初めてだった。
 いつもは昼休みや放課後、互いの仕事が無い時にしか逢っていないから、何を話していいのか分からない。
 ましてや、他人の部屋に来る事のない琴葉は少し緊張していた。
 会話が途切れると、部屋の中を見渡した。
 れいんの部屋は二人部屋だったが、他の部屋と違い、リビングと同じように寝室も共有している。
 二つ並んだベッドの近さに、琴葉は何となく複雑な気持ちになった。
 姉妹のように育ってきた二人の環境を知っているだけに、これを嫉妬と呼んでいいのかは分からないけれど。
 そんな事を考えていると、不意にれいんが琴葉の手に触れた。
 振り向くと、れいんの顔がすぐ目の前にあった。
 れいんは琴葉と目が合うと、両目を閉じて口唇を少し尖らせた。

 

505 :二等辺三角関係(前)・2:2006/06/04(日) 22:38:48 ID:KUnI5Q1B


「な、何だ?」
 思わずれいんの肩を掴み、琴葉は後ろに身を引いた。
「何、ってキスしようとしただけじゃん」
 れいんが目を開けると、微かに赤く染まった琴葉の顔があった。
「い、いきなりしてくる奴がいるか」
 突然のれいんの行動に動揺してか、琴葉は少し大きな声を上げた。
 キスもそれ以上の事も何度かしているが、琴葉は一向に慣れない。
 それを始めは可愛いと思っていたれいんであったが、最近はそれをじれったくも思う。
「いいじゃん、恋人同士なんだしさぁ」
「だ、だからと言って…」
 自分が思うのも何だが、もう少しムードというものを考えたらどうだろうか。
 そんな事を思う琴葉を知ってか知らずか、れいんはムッとして頬を膨らませていた。
「だって、もう一週間もしてないんだよ?」
「は?」
「琴葉が仕事とか、任務とか、忙しいとか言うから、最近全然逢えなかったし…」
 そう言って、れいんは琴葉にしがみ付くように抱き締めた。
 逢えない間の淋しさを埋めるように距離を無くしていく。
「あし、すごく淋しかったんだからね」
 ストレートな感情を口にしながら、れいんは琴葉をベッドに押し倒した。
 突然景色が変わった事に驚きながらも、琴葉は抵抗をしなかった。
「好きだよ、琴葉」
 再び近付いてきたれいんの口唇を、琴葉は今度は避けようとはしなかった。
「…ん…」
 静かに口唇を重ねると、れいんは直ぐに琴葉の服を脱がそうと手を動かした。
「ん、ちょ、れいんっ」
「ふぇ?」
 琴葉は慌ててれいんの手を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待て!」
「何?」
「さっきも言ったが、いきなり…その…」
 具体的な単語を口にするのに躊躇っていると、れいんが溜め息を吐いた。
「もー、早くしないと小百合とかが帰って来ちゃうじゃんー」
 れいんは琴葉の上に馬乗りになって、ティーシャツを捲り上げた。
「わっ、バカっ!」
 シャツの袖を握る手を掴んで脱がされるのを阻止しようとするが、首筋に息を吹き掛けられて、力が抜けた。
 その隙に一気にシャツを剥ぎ取ると、引き締まった裸体がれいんの視界に広がる。
 琴葉は顔を真っ赤にさせながら、両手で胸を隠した。

 
506 :二等辺三角関係(前)・3:2006/06/04(日) 22:39:58 ID:KUnI5Q1B

「琴葉…駄目?」
「べ、別にそんな事は…」
「じゃあ何で隠すの?」
「………」
 恥ずかしいからに決まっているだろう。
 しかし、そんな事を口にしたからといって、れいんが止めてくれるわけではない。
 昼間からこんな行為をするのにはまだ少し抵抗はあるが、ここは同意をするしかないのだろうか。
「…ほ、本気でする気か?」
「あしはいつでもマジで、本気で、真剣だよ?」
「………」
「琴葉ぁ…」
 おあずけをくらう犬のように切なげな声を上げると、琴葉は観念するかのように溜め息を溢した。
「…はぁ……。わ、分かった…」
 琴葉は上半身を起こし、背中に手を回して、ブラジャーのホックを外そうとする。
 カーテンは閉まってるし、お願いすれば電気は消してくれるだろう。
 しかし、まだ昼にもならない時間帯だから、外からの光で部屋の明るさは変わらないのだろうが。
 琴葉は下着を脱ぐと、直ぐに両手で素肌の胸を隠した。
「あー!また隠してるー!」
「い、いいじゃないか!」
「それじゃあ何も見れないし、触れないし、何も出来ないよ」
 一人だけ裸になるのが恥ずかしく、琴葉はれいんにも服を脱ぐように頼んだ。
 れいんは琴葉の言葉に頷いて、ティーシャツと短パンを脱いだ。
 デニム地のスカートのホックを外そうとした時、下着だけになったれいんが飛びついて来た。
「わ、ちょ、まだスカートが…」
「あしが脱がすからいいよ。もういいでしょう?」
 これ以上は我慢が出来ないというところか、れいんはまだ何か言おうとする琴葉の口を塞いだ。
 まるで盛りのついた犬みたいだ、と思った事はれいんには内緒だ。
「んっ…ん」
 口唇を重ねながら、れいんは琴葉のスカートに触れる。
 ホックに手を掛けながら、れいんは琴葉を組み敷いた。
「ん…ふ…」
 短いキスを何度も繰り返しながら、琴葉の抵抗力を弱めていく。
 唾液に濡れた舌で口唇を割り、琴葉の口腔内に滑らせる。
 舌先に琴葉のそれが触れると、れいんは躊躇なく舌同士を絡め合う。
「ぅんっ、ん、む」
 綺麗な歯並びを確認するように、舌を左右に往復させる。
 時々、呼吸の為に口を放すも、空気を吸い込むと直ぐに再び求め合った。

 
507 :二等辺三角関係(前)・4:2006/06/04(日) 22:41:16 ID:KUnI5Q1B

 琴葉がどちらのものか区別のつかない濃厚な唾液を嚥下すると、れいんは満足そうに微笑んだ。
 濡れた紅い唇にもう一度触れてから、れいんが口を開いた。
「気持ちいい?」
「……き、訊くな、バカ…」
「あぁー!またバカって言ったー!」
 情事の最中の甘い会話とは程遠い言葉のやり取り。
 けれどそれはいつもと同じ、自然の口調だった。
「たまには素直に気持ちいい、って言ってくれてもいいのに…」
「……っん」
 れいんは琴葉の首筋を指でそっとなぞりながら、その後を追うように口唇を寄せる。
 焦らすように、少しずつ下に向かっていく指を、琴葉は黙って見つめていた。
 鎖骨に辿り着くと、れいんは強く口唇を吸った。
 微かな痛みが体内に走る。
「っ…!」
 チュッ、と音を立てて離れると、吸った箇所が紅く染まっていた。
 同じようにその周りにいくつかもの痕跡を残しながら、れいんは琴葉の白い乳房に触れた。
「っんぁ…」
 覆い被せるように掌で包み、ゆっくりと円を描く。
 れいんの動きに合わせるように、柔らかい乳房の形が変わる。
 指で優しく揉みながら、追いついた口唇でその先端に触れる。
「ぅ、ぁ…」
 敏感な突起に触れた為か、呻くような嬌声が琴葉の口から漏れてきた。
 れいんはもっと喘がせようと、舌で乳輪をなぞる。
 徐々に勃起しだした乳首を口に含むと、飴を舐めるように優しく転がした。
「あっ、や…」
 反射的に拒絶の言葉を吐き出しながら、琴葉は身体を捩った。
 口唇で扱いた乳首がピンと上を向いている。
 それを舌で弾くと、琴葉の身体もビクンッ、と反応した。
「んぁっ!」
「琴葉の身体は、素直に、正直に、気持ちいいって言ってるよ?」
「くっ…そ、んなこと…」
 気持ちいいと感じても、それを正直に伝えるのが癪で、琴葉は未だに否定の声を発する。
 そんな態度が面白くないのか、れいんはもう片方の乳房にも手を伸ばす。
 微かに汗ばむ、しっとりとした肌に指を這わせて、その先端を軽く摘まんだ。
「あっ…」
 摘まんだ乳首をくりくりと指の中で転がしながら、空いた手で太腿をそっと撫でた。
 いつの間にか脱がされていたスカートは、ベッドの下に落ちていた。

 
508 :二等辺三角関係(前)・5:2006/06/04(日) 22:42:31 ID:KUnI5Q1B

 太腿の付け根から恥骨の方までを何度も往復するが、その先には進もうとはしない。
 琴葉の本音を聴くまで焦らすつもりなのか、れいんは素肌の感触を楽しみながら同じ事を繰り返している。
 火照った身体は官能に目覚めつつあり、新たな刺激を求めている。
 下半身の疼きを自覚し、琴葉は自分の腰が震えているのが分かった。
「れ、れいん…」
 熱っぽい視線を送りながら、琴葉は恋人の名を紡いだ。
「何ー?」
 れいんは楽しげに答えた。
「…っ…」
 どうして欲しいかは分かっているのに、それを琴葉の口から言わせたいのか、れいんは足を撫でるだけだった。
 悔しいと思う反面、快感を得たいという思いも確かにあって。
 それでも正直に言葉にする事が出来ず、琴葉の瞳は潤んでいった。
「…はぁ…っ、ぁ…」
 一週間の空白で、琴葉の身体も飢えてしまったのだろうか。
 普段は絶対に口にしないであろう声を、今まさに発しようとしている。
「っく…れ、れいん…」
「何?」
「…さ…わって…」
 息苦しそうに喘ぎながら、途切れ途切れにれいんに伝えた。
 すると、琴葉の本音を聴けた事が嬉しいのか、微笑みを浮かべていた。
「ん…いいよ」
 れいんは琴葉の下着に手を掛け、慣れた手付きで脱がしていく。
 裸の身体が震えるのは、熱い肌を擽る風の冷たさからなのか。
 それとも、これから訪れるであろう快感への期待からなのか、琴葉には判断出来なかった。
 膝を割って、その間に身体を滑り込ませると、れいんは迷いもなく琴葉の急所に触れた。
「はぁっん!」
 薄い陰毛は僅かに湿り気を帯び、膣が濡れているのが分かった。
「やっぱり身体は正直だね」
「っん、ぁ…」
 まだ強い刺激を与えてはいないのに、膣口からは愛液が滴り落ちていた。
 零れる愛液を指で掬い上げ、充分に纏わりつかせると、れいんは中指をゆっくりと膣口に沈めていく。
「あぁっ…んっ」
 足を開かせ、より深く指を侵入させる。
 膣壁を擦られて、琴葉の口許から悦びの声が上がる。
 身体の中心から全身にかけて、強い快感が走る。
「琴葉、可愛い…」
「あ、あ…はぁっ…ん」
 何度も出し入れをする指の隙間から、新たに分泌された愛液が溢れてくる。
「あ、ん…っはぁ…れ、れい…も…」
 早くも絶頂に達しようとした、その時だった。

 
509 :二等辺三角関係(前)・6:2006/06/04(日) 22:44:10 ID:KUnI5Q1B

「な、何をしているんだ、れいんっ!」
 バタンッと大きな音を立てて開いた扉の先に、帰宅した小百合が立っていた。
「え、あ、うわっ!さ、小百合っ!?」
 突然の相方の登場で、れいんは慌てふためいた。
 小百合は肩にスポーツタオルを掛けたまま、部屋の中に入ってくる。
 半裸のれいんの近くまで来ると、ベッドに組み敷かれている人物を見て驚いた。
「矩継…?」
 二人の異様な光景を目の当たりにして、小百合は白い頬を紅く染めた。
 下着姿の親友と、全裸の同級生。
 状況を呑み込むのには暫しの時間が必要だった。
「何をしてるんだ、れいん!し、しかもそんな破廉恥な格好でっ!」
「何でもいいじゃんっ!もー、何でこんな早く帰って来るかなぁー!」
「もうすぐ昼食の時間だからだ」
「そんなのどうでもいいから、取り敢えず出てってよー」
「どうでもいいとは何だ!此処は私の部屋でもあるんだぞ?」
 れいんは行為を中断し、小百合の方に向き合った。
 目のやり場に困りつつも、小百合は次々と浮かんでくる疑問をれいんに投げかける。
「何故、此処に矩継がいる?」
「何で、って、琴葉はあしの彼女で、恋人で、ステディだからに決まってんじゃん!」
「何?私には一言もそんな事…」
「言えるわけないじゃん。秘密で、内緒で、トップシークレットなんだから」
 二人の言い争いが続く中、琴葉はれいんの手を掴んだ。
「ん?琴葉?」
「れ、れ、い…ん」
 理性の失いかけた琴葉にとっては、小百合に自分の身体や二人の行為を見られた事の羞恥よりも、快楽を欲する衝動に駆られていた。
 絶頂に達せなかった苦痛に苛まれ、小百合がいるにも拘らず琴葉はれいんを求めた。
「あ、そっか。ごめんね、琴葉。直ぐイカせてあげるから」
「ん?何処に行くんだ?」
「あー、もー、小百合はちょっと黙っててよ!つーか出てって、あっち行って、どっか行って!」
「…酷い言われようだ」
 れいんは琴葉の傍に戻り、再び足を開かせた。
 今は小百合に文句を言うよりも、琴葉を楽にさせる事を優先させようと思ったようだ。
 しかし、ちらちらと様子を窺う小百合の存在がれいんの集中力を乱す。
「な、何をする気だ、れいん?」
 性的な知識は乏しいが、それがどんな行為であるかは理解している。
 その行為に好奇心があるのか、小百合は部屋を出ようとはしなかった。
「何でもいいじゃん!同じ会話ばっか繰り返さないでよ!」
 うんざりした口調でそう言うと、れいんは琴葉の股間に手を伸ばした。
 しかし、そこである事に気付く。

 
520 :二等辺三角関係(後)・1:2006/06/05(月) 21:27:24 ID:CHdhTNMY

「小百合、お願いだからちょーっとだけ二人きりにさせてくんない?」
 両手を合わせ、拝むような仕草をする。
「ん?何故だ?」
「…はぁ…鈍感っていうか、無神経っていうか、デリカシーにかけるっていうか…」
 れいんは溜め息を吐いた。
「小百合。今、あしと琴葉が何をしてるか分かるでしょ?」
「え、あ、あぁ…な、何となく」
「分かってるなら二人にさせてよ。話は後でちゃんとするからさぁ」
 すると、小百合は不思議そうな顔をした。
「私がいると出来ないのか?」
「え?…あ、いや、まぁ、出来ないってわけじゃないけど…」
「なら、問題はない。続ければいいだろう?」
「………」
「どうした?出来ないのか?」
 何だか挑発するような小百合の言い方に、れいんは思わず大きな声を上げた。
「あーっ!もう!琴葉の可愛い姿を見られたくないって、どうして分かんないかなぁっ!?」
「な、何っ!?あの矩継がっ!?」
 小百合にとっては、琴葉は隣りのクラスの同級生でしかなかった。
 隠密の人間だと最近知ったが、特に会話をした事はない。
 それなりに端正な顔立ちをしているとは思っていたが、普段はほとんど無表情である為に、れいんの言葉には驚きを隠せなかった。
「だから早く出てって!ほら、早くしてあげないと琴葉が辛そう…――」
 視線を琴葉の方に戻すと、いつの間にか小百合がベッドの上に座っていた。
「うわっ!?ちょ、何してんの、小百合!」
「…確かに顔が赤い…熱でもあるのか?」
「…はぁ…んぁ?」
 琴葉の顔をまじまじと見つめながら、小百合は距離を縮めていく。
 既に正常な思考を持たない琴葉は、ぼんやりとした目で小百合を見つめている。
 潤んだ瞳に引き寄せられるように、小百合は更に琴葉に近付いた。
 何を思ったのか、琴葉は震える腕を伸ばし、小百合の首に回した。
 肩に掛けていたタオルがベッドの脇に落ちた。
 弱々しい力で、ゆっくりと小百合を引き寄せ、そして――。
「うわぁぁーっ!!」
「え?あ……んっ!?」
 れいんの絶叫と同時に、琴葉と小百合は口唇を重ねていた。
「ん…んむ…」
「んっ…ふ、む…ん」
 人生で初めてのキスをされ、動揺しているのか小百合は琴葉にされるがままだった。
 その横で、混乱したれいんが慌てて二人を引き離そうとする。
「琴葉っ!それ、違う!あしじゃない!」
 必死になって小百合の肩を掴むが、琴葉の腕は更に首に巻きついた。

 
521 :二等辺三角関係(後)・2:2006/06/05(月) 21:29:06 ID:CHdhTNMY

 小百合にとって初めてのキスは、驚きでしかなかった。
 相手が相手というのもあるが、それ以上に人の唇の柔らかさに驚いていた。
「ん…んん…ぅん」
「んぁ…んむ…」
 無遠慮に差し入れられた琴葉の舌に嫌悪感を抱く事なくそれを受け入れ、小百合は琴葉の頬に両手を添えた。
 口腔内を動き回る舌を追いかけるように、自身のそれを動かした。
「ん、ふ、んぁ…」
「あ…ん、むぅ…」
 二人の舌が、互いの口を行き来しながら、唾液を交換させる。
 その味わいは、自分のものと同じはずなのに、どこか甘いとさえ感じる。
「小百合!ちょっと、あしの琴葉に何するんだよーっ!」
 今にも泣き出しそうな声で小百合の服の袖を掴み、一生懸命に引っ張った。
 その力に負けて、小百合の口唇は琴葉から離れていった。
 二人の唾液が、透明な糸の様に二人の口唇を繋いでいた。
「…はぁ…ぁ…は…」
 一種の呼吸困難に陥るような感覚を覚える小百合に、休む暇なくれいんの暴言が飛ぶ。
「小百合のバカ!アホ!マヌケー!」
「なっ…そこまで言うか?」
「あしの琴葉に勝手に、無断でチューするなぁっ!」
「されたのは私の方だぞ!?」
「どっちでも同じだよ!琴葉もあし以外の人としないでよぉ…」
 涙目になりながら、れいんは消毒と言わんばかりに、琴葉にキスをした。
 小百合との間接キスだという事は、この時はまだ気付いていなかった。
「んっ……んく…」
 小百合の身体から離れた腕は、今度はれいんの背中に回された。
 れいんは抱き上げるように琴葉の上半身を起こし、ぴったりと身体をくっつけた。
 自分の親友が誰かとキスをしているのを間近で見ていた小百合は、何とも不思議な気持ちだった。
 夢中で口付けを繰り返す二人から視線を背けると、琴葉が太腿を擦り合わせているのが目に映った。
「……?」
 気になった小百合は、琴葉の下半身へと移動する。れいんと琴葉はそれに気付かなかった。
 開いた足の中心を見て、小百合は顔が真っ赤になる。
 自分自身でさえ見る事のない、剥き出しの女性器がそこにはあった。
 初めて見るそれは、グロテスクな形をしているが、綺麗なピンク色をしていた。
 スリットの中心の入り口は淫液で濡れ、ヒクヒクと蠢き、何かを待ちわびているようにも見える。
 恐る恐る近付くと、女性の独特の匂いが鼻腔を擽る。
 足の間に身体を入れて、太腿を抱くように体勢を変えながら、小百合は琴葉の中心に更に近付く。
「ん…んむ…ん、んんっ!?…ぷぁっ、さ、小百合!何してんのっ!?」
 姿の見えなくなった小百合を見つけたれいんは、その体勢を見てキスを中断した。
 咄嗟に手を伸ばすも、その手が小百合に触れる前に、小百合は琴葉の膣に口付けをした。

 

522 :二等辺三角関係(後)・3:2006/06/05(月) 21:30:17 ID:CHdhTNMY


 何の躊躇もなく膣に触れると、琴葉の身体が一際大きく震えた。
「はぁ、あぁんっ!」
 頭上から琴葉の甲高い嬌声を聴き、小百合は口唇を膣に触れたまま顔を上げた。
「あぁっ!バカ、バカ、バカ!あしだってまだした事ないのにーっ!!」
 未だに琴葉を抱いたまま、れいんは激しく動揺した。
 自分の恋人を他人に触れられる事。それは例え親友であろうとも、れいんにとっては許しがたい事だった。
 そんなれいんの文句を聞きながら、小百合はおずおずと舌を伸ばし、その先端で膣の輪郭をなぞった。
「あ、んぁっ!は…あ…」
 口の中に広がる少し酸味のある愛液が、先程の唾液同様、甘いと感じる。
 小百合は不思議な気持ちを抱きつつ、更に舌を伸ばして膣口へと侵入する。
「あッ、や…ん…あぁっ、やぁ…」
 自分のする行動一つひとつに反応を見せる琴葉の姿を眺めながら、小百合は膣から零れる愛液を啜った。
「ほら、小百合!琴葉が嫌だ、って言ってるじゃん!」
 普段はそれでも攻め立てる自分の事を棚に上げて、れいんは何とか小百合を止めようとする。
 しかし、腕の中にいる琴葉はすっかり小百合の愛撫に身を任せていた。
 腰を小百合に押し付けるような動きをして、より刺激を求めようとする。
「あっ…や…あ、あっ…だ、…も…んんっ!」
 琴葉は右手を小百合の方へと伸ばし、その漆黒の髪に触れた。
「あっ…はぁ…あ、ん、ぁ…」
 小百合は無意識に頭を掴む琴葉の手に自分の左手を重ね、優しく包み込むように指を絡めた。
 与えられる快感によって、琴葉の表情が切なげなものに変わっていく。
 それを間近で見つめていると、小百合の鼓動が微かに跳ねる。
 今までに聴いた事のない悩ましげな声が、小百合を無意識に興奮させていた。
 舌を出し入れするペースを速め、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音が部屋に響いていく。
「あっ、や、だ…はぁッ、ん、あぁ!んっ、んぅっ!」
「ん…んく…ん、んぐ…」
 分泌され続ける愛液を次々と飲み下し、深く、激しく舌で膣を嬲る。
「あっ、あ、あんっ!はっ…あ、ぁ、ん、ん…だ、も…」
 大きな快感の波が訪れ、琴葉を絶頂へと駆り立てる。
「あぁっ!駄目、琴葉!イッちゃ駄目だからね!」
 短くなる嬌声が絶頂の合図だと悟ったれいんは、背中に回していた手を琴葉の胸に添えた。
「え、あ、れいっ…んぁっ!」
 小百合の愛撫に負けじと、半ばむきになりながら、柔らかい乳房を揉みしだく。
 反対の乳房には唇を押し当てて、硬くしこった乳首を濡れた舌で舐め上げた。
 上と下の複数の性感帯に異なる刺激を同時に与えられ、琴葉の頭は真っ白に染まりかけていた。
「あッ、や、もぅ…だっ、あ、んっ!はぁん!も、イッ…!」
 痛々しいまでに勃起した陰核に小百合の歯が当たると、電流のような快感が琴葉の身体に駆け巡った。
「あぁぁぁぁっ!!」
 ビクッ、ビクッ、と身体を痙攣させながら、撓る弓のように背中を反らせ、琴葉は絶頂へと導かれていった。


523 :二等辺三角関係(後)・4:2006/06/05(月) 21:31:34 ID:CHdhTNMY


 れいんの腕の中で荒い息を吐きながら、琴葉は少しだけ冷静になっていった。
「…はぁ…ん…はぁ…はっ…」
 思考が正常にもどりつつある中、今の行為の異常さに琴葉の顔がみるみる赤くなる。
「なっ…え、あれ…?ひ、飛田…?」
 いくら理性を失っていたといっても、裸を見られた事や今の行為に、今更ながら酷い羞恥心が襲ってくる。
 しかも、頭の片隅では小百合がいた事も分かっているにも拘らず自分から行為を求めていたから、跋が悪い。
 琴葉は強くシーツを引っ張って、自分の身体を隠した。
 そんな事をしてももう遅いが、恥ずかしい思いでいっぱいの琴葉は、頭まで覆い被さった。
 しかし、そんな琴葉もお構いなしか、れいんは小百合に怒鳴りつけた。
「もー!小百合のバカ!もう絶対に、絶対に、ぜぇーったいに絶交だかんねっ!!」
「何だと?れいんが矩継が辛そうだと言うから、私は楽にしてあげようと…」
「天然でそんな事すんなぁーっ!」
「て…っ!?私は天然ではないっ!」
 変なところを否定する小百合に、琴葉は思わず噴き出しそうになった。
「あぁーっ!もう、デートは邪魔されるし、エッチも邪魔されるし、つーかイカせられちゃったしぃー…最悪だよぉ…」
「デートだったのか?」
「………」
 奇しくも琴葉も小百合の言葉に同感だった。
 琴葉や小百合の中にあるデートのイメージは、一緒に外出したりするものだと認識していた。
 少なくとも、逢って直ぐに身体を求め合うようなものではなかった。
 れいんは自分以外の人間に琴葉を絶頂に達せられた事に落ち込み、項垂れていた。
 その姿を見て、小百合は流石に申し訳ない気持ちになる。
「あ…す、すまない。れいん…」
「……ん、もぅいいよ…」
 言い争いが終わり、室内が穏やかになる。
 済んでしまったものは仕方がない。そう思ったれいんは、俯きながらも苦笑を浮かべた。
 相手は唯一無二の親友だ。姉妹と同じようなもの。
 他の誰かなられいんは本気で怒れるのだが、小百合には出来なかった。
 別に恋人を盗られた訳ではない。犬に噛まれたと思えばいい。
 ここは自分が大人になろう。そう思ったれいんだったのだが…。
「すまない、れいん。次からは途中で邪魔をせずに、最初から一緒にいよう」
「………は?」
「…?」
 れいんと、シーツに包まる琴葉の頭にクエスチョンマークが飛び出した。
「ちょ…あの、さ、小百合…?」
「確かにれいんの言った事は正しかった」
「え?何?」
「そ、その…矩継は…中々可愛らしい…」
 ポッと頬を紅く染めた小百合の表情を見て、れいんは頭の中で前言撤回をした。


524 :二等辺三角関係(後)・5:2006/06/05(月) 21:32:46 ID:CHdhTNMY

 服を着たれいんと琴葉は、改めて小百合に向き合った。
 れいんは琴葉の腕を自身のそれと絡め、強くしがみ付いている。
 琴葉は未だに羞恥心が拭えず、二人から顔を反らした。
「小百合。さっきも言ったけど、琴葉はあしの彼女なの!だから絶対に駄目だかんねっ!」
「何故だ?別に彼女が二人いてもいいだろう?」
「意味分かんない理屈で喋んないでよー!」
 まるで琴葉は自分の所有物だと言わんばかりに、れいんは琴葉を自分の方に引き寄せた。
 二人の間には、目に見えない火花が飛んでいるようだった。
 何だか面倒になってきたと感じた琴葉は、二人に気付かれないように溜め息を一つ溢した。
 すると、小百合がれいんに妙な提案を出した。
「なら、本人に聞いてみようじゃないか」
「……へ?」
 小百合は座っていた床から腰を上げ、琴葉の正面に移動した。
「琴葉。私とも付き合ってくれ」
「――っ…!?」
 自分に矛先を向けられたばかりか、意外な言葉を告げられ、琴葉は一瞬、何が起きたのか分からなくなる。
「ちょっ、小百合!どさくさに紛れて『琴葉』って呼び捨てにすんなぁっ!!」
「ちょっと黙っててくれ。私は琴葉と話をしている」
「勝手にあしの琴葉と口利かないでよっ!」
「お前の理屈も理解出来ない…」
 れいんを一瞥してから、小百合は再び琴葉と向き合う。
「琴葉。私はもっとお前を知りたい。そう思うのはいけない事か?」
「え、あ、いや…」
 どう答えていいものか、琴葉は酷く狼狽した。
 れいんの事が好きなのは確かな事だが、自分を理解しようとしてくれる人間が他にもいる事に、ほんの少しだけ嬉しいとも思う。
「もっと琴葉の事を知って、琴葉の事を好きになりたい。そして、お前にも私を好きになって貰いたい」
「……ひ、飛田…」
「小百合でいい」
「…さ…さゆ、り…?」
 戸惑いながら名前を口にする琴葉の初々しさに、小百合と、そして不覚にもれいんは胸をキュンとさせた。
「可愛い、琴葉……はっ!?――って、だ、駄目だって言ってるでしょ!琴葉はあしのモノなのっ!」
「琴葉はモノじゃない!」
「何さ!小百合なんか、あしよりちょっと頭が良くて、胸が大きくて、眼鏡掛けてるだけじゃんかっ!」
「眼鏡は関係ないっ!」
 まさかの展開についていけない琴葉は、頭を抱えて小さく呟いた。
「……あ、悪夢だ…」 

 

525 :二等辺三角関係(後)・6:2006/06/05(月) 21:33:56 ID:CHdhTNMY

 それから数分後、このままでは埒が明かないと思ったのか、小百合が更に妙な提案を言い出した。
「ならばこうしよう。月、水、金はれいんの彼女だ」
「は?」
「火、木、土は私の彼女だ。それでどうだろう?」
 名案だ、とばかりに得意げな顔をして二人に話した。
「な…お、おい…」
 つまり、小百合は曜日ごとに琴葉を独占するという決まり事を設けようとしていた。
 まるでゴミの日のような曜日の分け方に、琴葉はどこか納得がいかない。
 自分をモノ扱いするなと言った人間の言葉だろうか。
「それなら文句はないだろう?」
 琴葉は、きっとれいんはその提案を拒否するものだと思っていた。
「えー?土曜日って午前授業だから午後に沢山遊べるじゃん。あしが土曜日がいい!」
「……え?」
「なら逆でも構わない。私は月、水、金でもいい。それで決まりだな」
「…あ、ちょ、お前達…?」
「日曜日はどうすんの?」
「それは…。順番でいいんじゃないか?」
 当事者である琴葉を抜きに、話がとんとんと進んでいく。
 口を挟もうにも、二人は琴葉の声に気付かなかった。
「ジャンケンとかは?それとも、ゲームとか、ポーカーとか」
「れいんがイカサマをするだろう?」
「ジャンケンでどうやってイカサマするのさー!」
「それもそうだな。では、ジャンケンで…」
「お、おい!」
 大きな声で二人の会話を止めると、二人は琴葉の方を向いた。
「何?琴葉。もしかして、またしたいの?」
「…え?…あ、いや、ちが…」
「ではれいん、早速ジャンケンで決めよう。この後、どちらが琴葉とデートするか」
「えーっ!?今日はあしとデートしてるんだよ?今日はあしとずっと、ずっと、ずーっと一緒にいるの!」
 会話は一時的に止まっただけで、直ぐに再開された。
 琴葉は頭を抱えたまま、がっくりと俯いた。

 一つの線で結ばれていた二人に、新しい線が書き込まれる。
 それぞれに繋がる線が今、少し歪な三角形へと変化した。
 この歪んだ形が、いつか正しいものへと変わるのだろうか。
 ならば、どの直線が正しい形へと導いていくのだろうか。それとも、また一つの線に戻るのだろうか。
 正しい形は、本当に正しいものなのだろうか。
 分からない。
 ただ、今の琴葉に分かる事は、暫くは落ち着いた生活が送れないであろう事だけだった…。