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380 :下校時刻は守りましょう・1 :2006/01/13(金) 00:12:16 ID:feaBDWiL

「…と、言う訳で、本日から下校時間になりましたら、各施設の利用は今までのように出来なくなりますので、注意なさって下さい」
 生徒会室での会議、副会長である銀河久遠が注意事項を話していた。
 ここ最近、下校時間を過ぎても学園に残る生徒が多く、外が暗くなってから帰宅する子が増えてきた。
 今の季節は陽が落ちるのが早く、あまり遅いと危険だと判断した生徒会メンバーは、下校時間を過ぎた際、学園の全ての施設の利用を禁止し、同時に校門、昇降口からの出入りを防ぐ為、時間になったら自動的にロックが掛かるようにした。
 事前に申請書を出せば利用を許可出来るが、それでも取り残されてしまった場合、職員室だけは利用出来るという対処も忘れない。
「ところで、奈々穂さんと和泉さんの姿が見当たりませんが…?」
 久遠の疑問に答えたのは、二人と同じ遊撃の角元れいんだった。
「二人は見回りに行ってまーす」
「同時に、副会長の仕事の引継ぎをなさるとか…」
 同じく、れいんの隣に座っていた飛田小百合が付け足した。
「そうですの」
 大事な事を話している時に限っていないとは、来年度からの会長としての自覚はあるのかと、久遠は溜息を吐いた。
 けれど、この案件については一週間前から話し合いを始めて、今日からそれを実施する事は奈々穂も既に知っている。
 その奈々穂が一緒なら心配はいらないだろう。
 そう思った久遠は、次の議題を話し始めた。

 同じ頃、遊撃部のメンバーが利用する会議室には副会長の金城奈々穂と、次期副会長の遊撃部員、和泉香がいた。
 和室のような造りの部屋に少し不釣合いなソファーの上に座っていくつかの書類をテーブルに並べていた。
「副会長の職務って、思っていたよりも多いんですね」
 学園内を隅々まで見回った後での仕事は、流石に疲れる。溜息と同時に書類から顔を上げて、香は呟いた。
「思っていたよりもって、どういう意味だ、香?」
 持っていた書類から視線を外し、奈々穂は香の方を見やる。
「えっ、あ、いや、そのぉ…」
 香の中の勝手なイメージでは、奈々穂は常に会長の傍にいる事が多く、表立って皆に指示を出す決断力があると思っていた。
 しかし、それ以外の事で影で支えている久遠の方が、副会長としての仕事を多くこなしているとも思っていた。
 だから裏では沢山の雑務を行っていた事を知った香は、その事実に驚きを隠せなかった。
「言いたい事があるのなら言え」
「な、な、何でもないです!」
 そんな事を思っていたなんて、この鬼の副会長の異名を持つ奈々穂には言えるはずがない。
 香は慌てて否定して、誤魔化すように再び書類と向き合った。
 そんな香に対し、奈々穂は何か思う事があったが、それ以上は突っ込まず、同じように作業を再開した。


381 :下校時刻は守りましょう・2 :2006/01/13(金) 00:19:11 ID:feaBDWiL

 黙々と引継ぎの作業をしながら、奈々穂は壁に掛けてあった時計に視線を向けた。
 下校時間まであと十五分程。今日のところはこれまでにしようか。
 確か、今日から放課後の施設の利用に規制が入る。奈々穂はきちんとその事を憶えていた。
 片付けの時間を考えると、もうギリギリの時間だ。
「香、今日の作業は…」
 仕事の終了を促そうとするが、その相手は何やら机の上の書類をバサバサと掻き分けていた。少し慌てた様子で。
「どうした?」
「それが、年間行事のプリントが見当たらなくて…」
「何だと?」
 机の上には多くの書類が散乱していた。香の言うプリントがどうやらこの中に紛れ込んでしまったらしい。
 この中から探し出すのは流石に時間が掛かる。
 下校時間の規約を、初日から破る訳にはいかない。ましてや、来年度の会長と副会長の二人が揃ってなんて。
 そんな事になっては、久遠に何を言われるか。
『次期会長ともあろうお方が、下校時間の一つも守れないなんて…先が思いやられますわね』
 嫌味ったらしく見下す久遠の事を想像すると、奈々穂は少し腹が立った。あくまでそれは想像に過ぎないのだが。
「…香、今日のところはもういい。明日の早朝に片付けるぞ」
「でも、副会長…このままでいいんですか…?」
「……」
 書類は机の上はもちろんの事、床の上にまで散乱していた。
 これを明日の朝まで放置するのは、いくら奈々穂でも躊躇われる。
 暫し考えを巡らせてから、諦めたように決断した。
「…仕方ない、後で職員室に行って事情を説明しよう」


382 :下校時刻は守りましょう・3 :2006/01/13(金) 00:20:24 ID:feaBDWiL

「…おかしいなぁ…開かないぞ?」
 三十分後、探していた書類も見つかり、部屋を綺麗にしてから、二人は帰宅する為に職員室を訪れた。
 一応の確認として昇降口の方に行ったが、やはり鍵が掛かっていた。
 そして今、時間を過ぎても利用出来るはずの職員室の扉が開かない事に、二人の表情は難色を示していた。
「…職員室には先生がいるはずですよね?」
「確か、そうだったはずだが…」
 しかし、職員室の明かりは既に消えて、物音一つ聞こえてこなかった。
 奈々穂はふと、昨日の役員会議を思い出していた。

「下校時間を守れなかった生徒の為に、職員室は利用出来るようになりますわ」
 一通りの説明を終えて、「何か質問はございます?」と言う久遠に対し、会計の市川まゆらが手を上げた。
 放課後に生徒が施設を使用して、予想外の出費が嵩み、今回の事で成果が出れば会計にとっても嬉しい事。
 今回のまゆらは、いつになく真剣だった。
 しかし高度なセキュリティーを導入する事で、今以上の予算を久遠が使っていた事を、まゆらはまだ知らなかった。
「でもそうすると、職員室が開いているからって、また時間を守れない生徒が出てくるんじゃあ…」
 するとその質問に久遠は不適な笑みを漏らして答えた。
「そうなる事も予想して、職員室の利用出来る時間は下校時間から十五分までにさせていただきますわ」
「あぁ、なるほど…」
 まゆらは納得してから、また次の疑問を浮かべていた。
「それじゃあ、その時間を過ぎた場合は…」
「そこから先は自己責任ですわね。規則を守れないなら、自業自得ですわ」

「しっ、しまったぁぁぁぁぁ!!」
 奈々穂はその事をすっかり忘れていた。


383 :下校時刻は守りましょう・4 :2006/01/13(金) 00:21:50 ID:feaBDWiL

 極上寮の一室で、読書をしていた久遠の携帯電話が不意に鳴った。着信の相手は隠密の矩継琴葉であった。
 久遠は本に栞を挟んでから電話に出た。
「…はい?」
「…琴葉です。本日、下校時刻の規則を破った生徒を発見しました」
「…あら、それは困りましたわね」
 前々から生徒達には知らせておいた。もっとも、宮神学園の生徒達は物分りのいい生徒ばかりで、いきなり校則を破る者はほとんどいないだろうと久遠は確信していた。
 それなのに、初日からそんな事態が起こるとは。
「それで、一体誰が…?」
「…そ、それが……」
 琴葉の次の言葉を聞いた瞬間、久遠が溜息を吐いたのは言うまでもない。

―――同刻、宮神学園。
 自分の失念に落ち込みながら、奈々穂は香と共に遊撃の会議室に戻っていた。
 普段は他人に対して隙を見せないように努めていたにも拘らず、こんな事態を招いてしまった自分に腹を立てていた。
「……はぁ…」
 先程から溜息ばかりの奈々穂に、香はどうしていいのか分からなくなっていた。
 それよりも、香の頭の中は、家でお腹を空かせているであろう弟達の事でいっぱいだった。
 自分がいない時は火を使ってはいけないと、常日頃から注意している。それにきっと、今の時間ならまだ管理人さんがいるはずだ。
 香の帰りが遅い事を心配し、他の生徒会メンバーに知らせて、此処まで来てくれるかもしれない。
 一応、自分の心配事を解決してから、再び奈々穂の方を見ると、奈々穂は携帯電話を取り出していた。
「…!そうですよ、皆に連絡すれば…!」
 その文明の利器の存在を忘れていた。何故そんな便利な物を忘れていたのだろう。
 しかし奈々穂は浮かない顔をして、直ぐにそれをポケットにしまいこんだ。
「…久遠の奴…まさか、携帯も圏外にするなんてな…」
「……」
 文明の利器も、使えなかったら意味が無い。
 二人は大きな溜息を吐いて、がっくりと項垂れた。


384 :下校時刻は守りましょう・5 :2006/01/13(金) 00:22:59 ID:feaBDWiL

 電気と暖房機器は使えるようで、何とかこのまま夜を越す事は出来そうだ。二人はソファーに寄り添うように腰掛けていた。
 自分達の不在を生徒会のメンバーが早く気付いてくれる事を願いながら、時間が過ぎるのを静かに待った。
 幸い、此処にはれいんが以前持ち寄ったお菓子もある。最悪の場合でも、何とかなりそうだ。
 ようやく安堵の溜息を吐くと、奈々穂は香の方を見やった。
 香は少し俯いて、小さく肩を震わせていた。
「香、寒いのか?」
 ゆっくりと腕を回して、その震える肩を抱き寄せた。香は奈々穂の問いかけに、頼りなく首を横に振った。
「…その、すまないな、香…私がきちんと憶えていれば…」
 肝心な時に失態を晒すとは、次期会長ともあろう自分が情けない。
 しかし、香はまたも首を振って否定する。
「どうした?」
 何だか急に様子のおかしくなった香を心配し、その俯く顔を覗き見た。
 香は、僅かに瞳に涙を浮かべていた。
「ど、どうしたんだ、香!?」
 それに慌てて、奈々穂は咄嗟に腕を放した。一体、香はどうしたというのか。
「す、すみませんっ、私…」
「何だ、具合でも悪いのかっ!?」
 香はまたも否定した。
「…その、私…何か、もう直ぐ…副会長になるんだ…とか考えていて…」
「…うん?」
 香の話に疑問符を浮かべながら、その次の言葉を待った。
「…本当に…奏会長が卒業するんだ、とか…」
「……」
 誰もいない校舎。寒い冬の夜。それらが香に不安を与えてしまったのだろうか。
 確かに、奏はもうすぐ卒業する。けれど、来年度からは理事長としてこの学園に留まる事は既に皆に知らせてある。聖奈達もまた、特別講師として残る事が決まっている。
 今までのように常に一緒にいる事は出来ない。淋しいけれど、時間は止まれない。それでも同じ場所にいる。自分達は繋がっている。
「…香。会長達は…」
 そう諭そうとする奈々穂の言葉に重なるように、香は更に言葉を繋げた。
「…そうしたら、今度は副会長が、会長になって」
「…え?あ、あぁ…そうだな」
 いきなり自分の事を言われて、奈々穂は少し戸惑った。
 香は俯いたまま、涙の理由を言葉にした。
「…副会長は…遊撃を…離れてしまうんですよね…」

385 :下校時刻は守りましょう・6 :2006/01/13(金) 00:24:26 ID:feaBDWiL

 会長職に就けば、今までのように遊撃に属する事は出来ない。会長として、学園全体を見守らなければいけない。
 遊撃の最年少ながら、他のメンバーよりもしっかりしている香なら、遊撃を統括出来ると安心していた。
「香…」
「すみません…私…」
 左手で両目を擦りながら、香は奈々穂に笑顔を見せた。けれど、それも直ぐに歪み、悲しい表情に変わる。
「…副会長が会長になったら…今までみたいに傍にいない…」
「……」
「こんな風に、一緒に校則違反をする事も出来ない…」
「……」
「…そんな事考えてたら…」
 振り向けばいつも、すぐそこに奈々穂がいた。
 時に厳しく、時に優しく、いつだって香達を温かい眼差しで見守ってくれた。
 その奈々穂が、今までのように傍にいない。そう思って、香は悲しくなってしまった。
 その香の告白に、奈々穂の鼓動は高鳴った。
(か、香の奴…こ、こんなに可愛い事をっ…!?)
「へ、変ですよね…別に、副会長が卒業する訳じゃないのに…」
 努めて明るく振舞おうとする香だったが、一度溢れてしまった気持ちを止めるのは難しく、心の奥の本音を曝け出す。
「……でも…何か…やなんです…」
 当たり前のように近くにいた存在。そんな関係が、もうすぐ変わっていってしまう淋しさ。
「副会長が傍にいないの…嫌なんですっ!」
 香の小さな叫びに、奈々穂の中で何かが弾けた。
 無意識に香の身体を引き寄せて、その小さく震える身体を力強く抱き締めた。
「……!?」
 突然の事に驚く香。けれど、直ぐに何が起こったのかを理解して、奈々穂の背中に両手を回した。
「…香…私は、いつだってお前の傍にいるぞ」
「…副会長…」
「私だけじゃない…会長だって、他の皆だって…」
「…はい…」
「だから…そんな淋しい事を言うな…」
 ゆっくりと顔を上げて、互いの瞳を見つめると、どちらともなく二人は自然に唇を重ねていた。


386 :下校時刻は守りましょう・7 :2006/01/13(金) 00:25:57 ID:feaBDWiL

 同性同士の口付け。ましてや、二人にとってのファーストキス。にも関わらず、何の抵抗もなく二人はそれを受け入れていた。
 軽く触れ合ってから、奈々穂は顔の角度を変えて、香の柔らかい唇の感触を更に味わおうと、舌でその輪郭をなぞる。
「…ん」
 奈々穂の行動に一瞬反応するが、香は奈々穂の背中に手を置いたまま、その行為を受け入れた。
 それでも少し緊張した身体を解すように、奈々穂はゆっくりと右から左へと往復する。
 やがてそれに慣れたのか、香の身体から力が抜けていくのを感じた奈々穂は、息継ぎの為に僅かに開かれた香の口の中に舌を挿入した。
「…っんん!?」
 口内に感じる異物。けれどそれが奈々穂の物であるのが分かり、されるがままの香。
 生温かい舌は歯列をなぞり、歯茎、上顎、その空間にある全てのものを舐め取った。その最奥に縮こまる香の舌を見つけると、自分のそれを擦り合わせるように動く。
「…ん…んむっ…」
「ん…っはぁ…」
 香はその奈々穂の動きに応えるように、おずおずと舌を伸ばして絡み合った。
「んぁ…ん…」
 ぴちゃぴちゃと、互いの唾液の交わる音を聞きながら、二人は暫しその行為に陶酔していた。
 貪る様に、激しく深い口付けは、息苦しさに酸素を求めるまで続いた。唇が離れると、交じり合った濃厚な二人の唾液が、とろりと零れ落ち、香の制服を濡らした。
「…はぁ…はぁ…」
「…香…」
 二人の頬は紅潮し、息は荒くなり、その瞳は妖しく揺れていた。
「ふ、副会長の…エッチ…」
 上目遣いで奈々穂を見上げ、恥ずかしく呟く香。その言葉に、奈々穂は真っ赤な顔をして反論した。
「なっ!?お、お前がいけないんじゃないか!お前が…あんな、可愛い事…言うから…」
「へ?」
 口に出した自分の言葉に照れて、小さくなった奈々穂の声が、香には全部聞こえなかったようだ。
 一度口にした事で、却って恥ずかしさが消えたのか、奈々穂ははっきりと口にした。
「か、可愛いって言ったんだ!」
「!?」
 すると今度は香の顔が真っ赤になった。
 奈々穂は香の肩に手を置いて、そのまま優しくソファーに押し倒すと、少し躊躇いながら口を開いた。
「…だ、だから…その…」
 ゆっくりと香に覆いかぶさっていく奈々穂。
 一度火が点いた欲情は、簡単には消えそうにない。
 香は経験こそはないものの、その体勢を意味する事を理解した。
 その事に戸惑いながらも、香は奈々穂の背中に腕を回した。
「…香…」
「もぅ…副会長の馬鹿…」
「う…」
「…しょうがないですね…や、優しくして下さいよ?」


387 :下校時刻は守りましょう・8 :2006/01/13(金) 00:27:20 ID:feaBDWiL

 奈々穂は、制服越しに香の小さな胸に触れた。
 香同様、奈々穂にも経験は無い。それでも、耳で聞いた知識や、雑誌等で読んだ記憶を頼りに手を動かした。
 今になって、奈々穂の思考は冷静になっていた。
 それでも、香の事を愛しいという気持ちは変わらず、何とか気持ちよくなって欲しいと、半ば必死に胸を揉んだ。
「…ん!」
 制服の上から、その形を確かめるように撫でると、香はくすぐったそうに身を捩った。
 その仕草が少しおかしくて、奈々穂は何度も同じ場所を弄った。
「んっ、ちょ、副会長!」
 堪らずに、香は奈々穂に抗議の声を上げた。
「な、何だ、香?」
「何だ、じゃありませんよ!もう、くすぐったいですよ…」
「…うっ!?」
 上目遣いのその眼差しが、更に奈々穂の欲情を煽っている事に、香は気付いていなかった。
「か、香!」
 ほんの少しだけ乱暴に制服を一気に脱がせると、真っ白なブラジャーが露わになる。
「きゃっ!?」
 羞恥に両手で隠そうとするが、奈々穂によって制され、代わりに奈々穂の手が被さった。
 押し上げるように、その下着に隠された素肌に、温かい奈々穂の手が触れると、香は小さく震えた。
 柔らかい乳房を揉みながら、奈々穂は香の身体を見つめた。
 多少筋肉がついてはいるが、小さく華奢なその身体は、まるで少し力を入れたら壊れてしまいそうだ。
 だから、優しく触れていこう。傷つけないように。
 そう小さな決意を込めて、香のお腹に口付けた。
「ひゃっ!」
 奈々穂はそのままゆっくりと上昇し、自らの手の下に隠していた胸の辿り着くと、その周りを舐めていく。
「や、ちょ、ふ、ふくかい、ちょっ!」
 制止の言葉は奈々穂には届かず、少しずつその行為は激しさを増していく。
 片方は手で、もう片方は唇で、香の双丘を愛撫する。
 刺激を与え続ける事で、次第にその中心の蕾が、その存在を主張するように、硬度を増していった。
 その突起を口に含み、舌を絡め、軽く甘噛みすると、香の身体がビクリと震えた。
「んんッ!」
 その香の反応を楽しむように、更に指と舌で乳首を攻め立てる。
「ん、や、ぁんっ!」
 香は必死に声を出さないようにするが、今まで感じた事のない刺激に戸惑う。
 初めて感じる快感。次第に思考が麻痺してくる。
 いつの間にか互いの息は荒くなり、奈々穂の行為もエスカレートしていく。
 奈々穂は片手をスカートの中に差し入れると、香の中心の方にその手を進めていった。


388 :下校時刻は守りましょう・9 :2006/01/13(金) 00:28:37 ID:feaBDWiL

 僅かにそのスカートの裾を捲くり、優しく太腿を撫でながらも、確実に意志をもって進んでいく手。
 その手がどこを目指しているのかを悟った香は、咄嗟に足を閉じた。
「…ふ、副会長…」
「…いや、か?」
 目的地を失った奈々穂の手は、未だその柔らかい太腿を撫でていた。
 嫌ではない。香は少し怖かっただけだ。
「香…」
 優しく頬を撫で、額にも優しく唇で触れる。
「大丈夫だ…その、優しくするから…」
 顔全体に触れる奈々穂の唇。その優しい感触と言葉に、香の緊張も和らいでいった。
「香」
「副会長…」
 見つめ合い、口付け合って、互いの身体も心も溶け合うような錯覚を覚える頃。
 力の抜けた香の中に、侵入していた手を再び動かした。
「ん…」
 今度は抵抗も無く、その最奥に辿り着く。
 薄い布一枚を隔てた先にある中心。その付近は僅かに湿り気を帯びていた。
 ショーツ越しにその割れ目をなぞると、じんわりと奈々穂の指を濡らした。
「んんっ!?」
 その感触に、香もまた、自分の秘部が濡れている事を察し、羞恥に顔を背けた。
「…濡れているぞ、香」
「なっ!は、花も恥らう乙女に向かって何を言うんですかーっ!?」
 こんな時に思うのもなんだが、何てデリカシーのない先輩だ。もう少しオブラートに包んで欲しい。
 オブラートに包んだ言い方がどういうものか、香には分からないが…。
 下着を汚してはいけないと判断したのか、奈々穂は香に何も告げずにそれを剥ぎ取った。
 初めて見る、女の中心。まるで一つの生き物のようにヒクヒクと蠢くその場所を見た奈々穂は、無意識に咽喉を鳴らした。
 一度、深く深呼吸をして、その割れ目を撫でる。
「んぁあっ!!」
 ビクンっ、と一際大きく反応する身体。弓なりに反らされた背中に片手を回し、奈々穂はそのまま抱き締めた。
「香…」
 中心の秘唇からは、とろりとした愛液が流れ、そのまま太腿を伝い、ソファーを軽く汚した。
 何度も割れ目を往復させて、次第に綻び始めた肉壁の隙間に、僅かに指の先端を挿入する。
「んんっ!!」
「…痛いか、香?」
 少しでも苦痛を感じたら、直ぐにでも行為を中断しようと、香のどんな表情でも見逃さないといったように、真剣に見つめる。
 自分の身体に異物を混入される、生まれて初めての感触。それは香に少しの痛みを与えた。
 けれど、先端だけを侵入させて、その入り口で軽く出し入れするだけの奈々穂の優しい愛撫によって、痛み以外の感覚を覚えていく。
「ん…ぁんっ、ん…!」
 悩ましげに艶づく声。聞いた事の無い自分の嬌声に戸惑い、香は声を抑えようとした。
 そんな香の態度は、奈々穂の加虐心に触れる。
「…香…」
 いつもと違う後輩の可愛い声をもっと聴こうと、行為は段々激しくなる。


389 :下校時刻は守りましょう・11 :2006/01/13(金) 00:29:48 ID:feaBDWiL

 痛みよりも、快感を感じる感覚が強くなってきたのを感じ取った奈々穂は、少しずつ指を深くまで入れる。
 一度根元まで入れると一気に引き抜き、そしてまた根元まで入れる。
 より深く、そして次第に速くなる動きに、香は声を抑える事が出来なくなっていた。
「あんッ!あっ、んんッ!ふッ!」
 耳に届く嬌声に興奮してきたのか、奈々穂は指の数を二本に増やし、更に香の膣を攻め立てる。
 膣を出し入れするだけでなく、時には肉壁を引っ掻いたり、円を描くような動きを足していく。
「あぁッ!!やぁ…!ん、んぁ、ふ、かい…ちょ…っ!!」
 思考が快楽に侵されて、声を我慢する事を放棄した香は、奈々穂の身体にしがみつく。
 ストロークを繰り返す奈々穂の親指が、息づいてきた陰核に触れると、香の身体は若鮎のように跳ねた。
「あぁんッ!!」
「…気持ちいいか、香…?」
「ぁんッ、ん、ふ、あぁッ!」
 奈々穂の問いかけに、香はもう頷く事しか出来なかった。
 とめどなく溢れてくる愛液を指に纏い、その秘芯にも刺激を与えると、香は自分の身体の異変に気付いた。
 身体の中心から、何かが込み上げてくるような感覚。
「ふ、かいちょっ…あ、な、んか…くるっ…ん!」
 あまりにも強い刺激で、まともに言葉は紡げなかったが、奈々穂は香の絶頂が近いと、本能で悟った。
「…んやぁっ!あ、ん、んッ、あ、やッ!!」
「香…大丈夫だ…大丈夫だから…」
 秘芯を親指で弾き、いつの間にか三本に増えていた指で、膣壁の上を擦るように動くと、香は背中を大きく反らし、絶頂に達した。
「あっ、あ、ん、んんッ!あああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 二度、三度、大きく痙攣し、荒い息を吐きながら、奈々穂の顔を見上げる。
「…可愛いぞ…香…」
 いつも以上に優しい微笑みを浮かべ、奈々穂はゆっくりと香の唇に口付けた。
「ん…ふ、副会長…」
「…香…」
 互いの名前を囁きながら、何度も啄ばむような口付けを交わした。
 再び見つめ合うと、二人は自然に微笑んだ。
「…副会長…責任、取って下さいよ?」
「せ、責任?」
 まさか結婚でもしろというのだろうか。しかし同性では無理だろう。そう困惑する奈々穂に、香は軽くキスをして言った。
「会長になっても…傍にいて下さいね…?」
「…あぁ…傍にいる…お前の傍に…」
 甘い空気に包まれながら、二人は瞳を閉じた…。


390 :下校時刻は守りましょう・12 :2006/01/13(金) 00:34:22 ID:feaBDWiL

「……そろそろ入ってもよろしいかしら…?」
「―――っ!?」
 二人の甘い空気は第三者の声によって壊された。
 二人は同時に声のする方を向くと、扉の前で微かに頬を紅潮させた久遠が、呆れた表情で二人を見ていた。
「ふっ、副会長!?」
「く、く、く、久遠!?い、いつからそこに…!?」
 乱れた衣服を整えながら、二人はほぼ同時に叫んだ。
 背中で扉に寄りかかり、一つ溜息を吐いてから久遠は答えた。
「そうですわね…和泉さんが副会長が傍にいないのが嫌だと、奈々穂さんに告白をなさってた頃かしら…?」
「……」
「……」
 つまり、二人が行為をする前から此処にいたという事で。そして、一部始終を見られていたという事。
 それを聞いた瞬間、二人の顔は茹蛸のように真っ赤になった。
「まったく、校則を規制した初日から次期会長と副会長が揃って違反したとの報告を聞いて駆けつけましたのに…」
「あ、いや、その、久遠、さん…」
「私が此処に来た事にも気付かず、盛り上がってしまいましたから、声を掛ける事も出来ませんでしたわ…」
「あ、あの、副会長…」
 二人は背中に嫌な汗を掻きながら、久遠の言葉を聞いていた。
「えっと、く、久遠さんは…お一人で…?」
 ビクビクしながら、奈々穂は質問した。
「此処には隠密と来たんですけど、お二人の行為が始まってから姿を消してしまいましたわ」
 どうせだから一緒に楽しもうと思いましたのにね、と言った久遠に呟きを、奈々穂は聞かなかった事にした。
 久遠と一緒にいた相手は、奈々穂には簡単に想像出来た。姿を消したのは、何か身の危険を察知したのだろう。
「琴葉の奴…逃げたな…」
「奈々穂さん、何か言いまして?」
「い、いや、何も…」
 否定する奈々穂に訝しげな表情をするが、直ぐに消し、久遠は再び二人を見つめた。
「…さて、お二人共…?」
 久遠の冷たい声に、二人の身体が震える。見るとその表情も冷たく笑っていた。
「…校則違反をし、更に学園内でのいかがわしい行為の罰は、きちんと受けてもらいますわよ?」
 言いながら、ゆっくりと近付く久遠。二人は身の危険を感じていた。
「あ、いや、違います、副会長!これは副会長が無理矢理…!!」
「なっ!?香、貴様!私を裏切るつもりか!?」
「元はと言えば、副会長が下校時刻の規制を忘れていたのがいけないんですぅ!」
「お前がプリントを散らかさなければ下校時間は守れたはずだぞ!?」
「…お二人共…?」
「!?」
 必死に責任を押し付けあう二人の間に、久遠は仁王立ちし、二人を見下ろしていた。二人の身体が瞬時に硬直する。
「…覚悟はよろしくて…?」
 にっこりと微笑む久遠とは対照的に、二人は身体を抱き寄せ、これから訪れるであろう恐怖に震えた。
「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」


391 :下校時刻は守りましょう・13 :2006/01/13(金) 00:35:26 ID:feaBDWiL

 後日、どこからかは分からないが、二人の事は学園内で噂になった。
 そしてどこで脚色されたのか、噂は形を大きく変えた。
 何でも、下校時刻の後に学園に残れば、自分の願いが叶う、とか。
 他にも、好きな人と校則違反をすると、その人と結ばれる、とか。
 下校時刻を過ぎても学園に留まると、恐ろしいものが現れる、とか。
 数日と経たない内に、その噂は学園全体に広がり、以前にも増して下校時間を過ぎた後も残る生徒の数は増えていった。
 これ以上は対処の仕様がない、という生徒会は、下校時間の校則を撤回し、噂も隠密を使って何とか消す事が出来た。
 結局、今回の事で残ったのは、奈々穂と香の久遠に対する恐怖心と、莫大な金額の赤字だけだった…。

「ところで琴葉さん、あの夜、遊撃の副会長さんと和泉は、副会長さんに何をされたんですか…?」
「…歩…世の中には知らなくてもいい事もあるんだ…」
「…はい?」
「それでも知りたければ、隠密の任務を失敗して、自分で直接確かめる事だな…」
「……やめときます」
「…それが賢明だ」