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18 :香×りの :2005/11/28(月) 21:08:38 ID:7+CVvVgW
 繋いだ手はとても暖かくて。
 ずっとこのままでいたいと思ったんです。
 離れるのは、悲しいです。だから、離さないで。
 もっと、もっと一緒に――――。


 ピンポーン。
 遠くの方でそんな音がして、りのはそっと目を開けた。
ぼんやりとした頭のままで瞬きを繰り返すと、だんだん意識がはっきりしてくる。
「ん…私、寝てたんだ…」
 のそのそと上半身を起こして時計を見ると、もうお昼過ぎだ。
どうやら朝食を食べた後、少しだけ横になったつもりが、いつの間にか眠りに落ちていたらしい。
 それにしても、浅い眠りの中で夢を見ていたような気がするが、思い出すことは出来ない。
もしかしたら、そもそも夢なんて見ていなかったのかもしれない。
 まぁいっか、と大きなあくびをひとつしてから、りのは脇に置かれたプッチャンを右手にはめた。
「おはよう、プッチャン」
「おっす、りの」
 プッチャンと挨拶を交わしてから、りのは何かを思い出したように手を叩く。
「あ、そうだ! 誰か来てたんだった!」
 りのは慌ててベッドから飛び降りると、部屋を出て玄関に向かった。
「はい、どちらさまですか?」
「りの? 私」
「あ、和泉さん!」
 勢いよくドアを開けると、そこには小さな包みを持った香が立っていた。
ただそれだけなのに、無性に嬉しくなって、りのはニコニコと笑顔で香を迎える。
「りの、なに笑ってるの?」
「ふぇ? ううん、なんでもないんだけど」
「妖しいな…」
「プッチャン、漢字がおかしいよぉ!」
 りのとプッチャンによるコントが始まってしまいそうだと感じた香は、そんなことより、と話を遮る。

「奏様…じゃなくて、会長はいる?」
「奏会長なら、今日は朝から出かけて行きましたよ〜」
「そうなんだ…せっかく自信作だったのに」
 そう言いながら、香は手にした包みをひらひらと揺らす。すると甘い香りがふわりと辺りに広がった。
ほんのりとした香りに、りのはうっとりと顔を緩ませる。そして、どこか期待したような目で香を見つめた。
「な、なによその目は…」
「りのがどんだけ食い意地張ってるかはよく分かってるだろ」
「…はぁ」
 プッチャンにそう言われ、香は呆れたようにため息をつく。
 まぁ、せっかく出来たてなわけだし、一番おいしい状態で食べてもらう方がお菓子も本望だろう。
そう考えた香は、りのにそっと包みを渡した。
「食べていいわよ、それ」
「ほんと!?」
「ええ、味は保証するわ。それじゃあね」
「あ、ま、待って! 和泉さん!」
 香がくるりと回れ右をして帰ろうとすると、がしっとその腕が掴まれる。驚いたように振り返ると、りのは
「一緒に食べていきませんか?」
 そう言って満面の笑みを浮かべた。

19 :香×りの :2005/11/28(月) 21:10:45 ID:7+CVvVgW
「おいしい〜!」
「認めたくはねーが、たしかにうまいな」
 自分の作ってきた焼き菓子をおいしそうに頬張る姿は、見ていて気分がいい。
特にこのふたり(?)は本当においしそうに食べるから、なおさらだ。
「ほら、りの。ベッドの上にこぼしてる。大体、ベッドの上で食べるなんて奏様に怒られるんじゃないの?」
 気持ちとは裏腹に、りのにそう注意すると、りのは照れたように笑う。
この笑顔を見せられては、それ以上注意する気にもなれない。
「…まぁいいけどね。りのらしいと言えばりのらしいし」
「えへへ、照れますぅ」
「りの、褒められてるのか、それって?」
 そんなやりとりを交わすうちに、香の持ってきた包みはきれいに空っぽになる。
りのは満足そうに笑うと、ごちそうさまでした! とベッドの上で頭を下げた。
「やっぱり和泉さんはすごいです。こんなにおいしいお菓子を作れるなんて」
「べ、別にたいしたこと……あるけど」
「自分で言うなよ」
 人形に突っ込まれ、ぐ、と香は拳を握る。
「まぁいいわ。それじゃあ、私そろそろ帰るね」
「あ……う、うん」
「?」
 いまいち歯切れの悪いりのの返事に、香は違和感を覚える。
さっきまではあんなに楽しそうに笑っていたというのに、今はなんだかとても寂しそうな顔。
「りの? どうかしたの?」
「う、ううん、なんでもない」
「……なぁ」
 りのが笑顔で首を振ると、プッチャンが口を開く。
「なに、人形?」
「俺は人形じゃ―――って、まぁそれはいいや。とにかくさ、もうちょっとここにいてやってくれねぇか」
「プ、プッチャン! 和泉さんだって忙しいんだから」
「…別に忙しくなんてないけど」
「でも…」
 一体りのが、今どんな心境なのかは分からなかったが、なんとなくここにいるべきであるような気がする。
それに、なによりも香自身がもっとここにいたいと感じていた。
 りのと一緒にいるときの空気は、香にとって居心地のいいものであったし、
奏に会いに来たという理由の裏側には、りのに会いたいという気持ちもあったのかもしれない。
だとしたら、答えはたったひとつだった。
「分かったわよ。もうちょっとだけいてもいい?」
「い、和泉さん!」
 香の申し出に、りのはぱぁっと顔を輝かせて、勢いよく香に抱きつく。
「ちょ、ちょっと! そこまで喜ぶことないでしょ!?」
「だって嬉しいんです〜」
「ウチの娘が迷惑かけますねぇ」
「……」 
 もはや突っ込む気にもなれない香は、頭を抱えて大きく息をついた。

20 :香×りの :2005/11/28(月) 21:12:07 ID:7+CVvVgW
「あの〜…りの?」
「なんですか?」
「いつまで抱きついてるのよ」
 あれから約20分、とりとめのない会話を交わす間も、りのは香から離れようとしなかった。
「ん〜…なんていうか、離れたくないって思っちゃって…」
 さっきと同じように、りのの顔が曇る。
もともと喜怒哀楽の激しい子ではあったが、今日はなんだか様子がおかしい。
 そう、この顔はいつだったか見たことがある気がする。なんとか思い出そうと
目を閉じて記憶を探っていくと、ふと浮かぶひとつの思い出。
 以前、りのが赤点対策で勉強に励んでいたときにも、こんな顔を見た。悲しそうに、
そして苦しそうに、小さな声で「お母さん」と呟いて。
「りの…何か、あったの? 私でよければ聞くけど」
「う、ううん。特に何かあったってわけじゃないんだけど、夢を見たような気がして」
「夢? どんな?」
「それは…よく覚えてないんですけど」
 覚えてない夢の内容で落ち込んでるの? そうも思ったが、ここで責め立てるのも気が引ける。
「よく分からないけど、不安なんです…」
 香に抱きついたまま、りのが顔を伏せると、さらりと髪が揺れて香の頬に触れる。
声は弱々しかったが、手の力は驚くほどに強い。
 少しだけ考えた後、香はプッチャンの頭を掴んだ。
「お、おい! なにすんだよ」
「ちょっとの間、二人きりにしてくれる?」
「ま、待て―――」
 言葉途中にして、香の手からぶらりと垂れ下がるプッチャン。それを、香はベッドの下にそっと置く。
その様子を見て、りのは驚いたように香を見上げた。
「和泉さん……わっ!?」
 突然香に抱きしめられて、りのは声をあげる。
そんなことをされたのは初めてで、りのはただ固まることしか出来ない。

21 :香×りの :2005/11/28(月) 21:13:17 ID:7+CVvVgW
「りのがどんな夢を見たのかは分からないけど、ひとりになるのが不安なのよね」
「そう…かもしれません」
「私、りのの悲しい顔って嫌いなの。だから、笑うまではこうしてる」
 りのがこんな顔をしていると、奏会長が悲しむ。それは、香にとっても嬉しいことではない。
けれど、今は香自身がりののこんな顔を見たくなくて。いつもみたいに、笑っていて欲しかった。
「…和泉さん、あのね」
 香の胸の中で、りのはおずおずと切り出す。
それを受けて、香はそっと手の力を緩めて、りのの顔を見つめた。
「どうしたの? 何か―――んっ」
 香の言葉は、りのの唇によって遮られる。突然の出来事に、香は驚きを隠せない。
呆然としたまま目をぱちぱちとさせると、りのは嬉しそうに笑った。
「ありがとう和泉さん。本当に、大好きですっ」
「―――っ」
 柔らかな微笑みのまま、胸にもたれかかってくるりのに、香は顔を紅潮させる、
(こんなことされたら、私…)

 部屋に充満する柔らかい空気に後押しされるように、香はりのにそっと口付ける。
触れるだけのキスだったが、頭の奥がびりびりと痺れる感覚を覚えた。
「りのが…悪いんだからね」
 そんな言い訳をして、香は再び口付けをしながら、そっとりのを押し倒す。
 覆いかぶさるような状態のまま、舌を入れると、りのはビクリと体を振るわせた。
どう反応されるか心配だったけれど、りのは遠慮がちそれに応える。
 ぎこちない動きながらも、ふたりのそれは絡み合い、徐々に二人の頬も赤く染まっていく。
「ぷはぁっ、和泉さん、ちょっと、く、苦しい…」
 香がそっと顔を離すと、りのははぁはぁと息をつく。
そこまで長い時間触れ合っていたわけではなかったが、りのは顔を真っ赤にしている。
「ご、ごめんね。苦しかった…?」
「ううん、大丈夫」
 香が不安そうな顔をしているのを見たりのは、にこりとVサインを作ってみせる。
香はほっとしたように息を吐くと、りのの首元に顔を埋め、舌を走らせた。
「ふぁ、く、くすぐったいよ〜、和泉さん」
 りのが身をよじらせてくすくす笑うものだから、香もなんだかおかしくなって噴き出してしまう。
 その刹那、香の息がふわりとりのの耳元にかかって、りのは素っ頓狂な声をあげた。
「ふひゃぁああっ!?」
「もしかして、りの…耳、弱いの?」
「そ、そんなことは…ぅあっ、ん…」
 香がりのの耳をそっと舐めあげると、さっきとは違う艶っぽい声がりのの口から漏れる。
どうやら、耳が弱いというのは図星らしい。
 香はりのの耳をゆっくりと攻めながら、りのの上着をたくしあげる。
そして、小さなふくらみを覆うブラが現れると、そっと包み込むようにその場所に触れた。
「ぅぁ…いずみ、さん…」
「りの…」
 優しく名前を呼びながら、そっとりのの背中に手を回す。
りのが少しだけ背中を浮かせてくれたおかげで、容易にホックは外れ、ふわりとブラが浮き上がる。
それをずらすようにしながら直に胸に触れると、りのはびくりと体を震わせた。
 既に硬くなっている突起を手の平で感じるようにしながら、優しくその胸を揉みしだく。
「んぅ……ふ、ぁん」
「りの…気持ちいいの?」
 りのの様子を確認しながら香は徐々に体をずらし、その胸に唇で触れる。
香の行動により、予想外の刺激がりのの体に走ったのか、りのはピクリと腰を浮かした。
「ぅぅ…和泉さぁん…なんか、私ヘンかもしれません〜…」
 もじもじと太ももを擦り合わせるりのを見ていると、香の胸もドキドキと高鳴る。
 そっとりののスカートの中に手を入れて、ぴったりと閉じられた太ももの間に
手を滑り込ませると、下着越しにも関わらず指先に湿った感触。

22 :香×りの :2005/11/28(月) 21:16:29 ID:7+CVvVgW
恐る恐るそこに触れると、りのがひときわ高い声をあげた。
「んぁあっ…あ、ふぅ……ぅん…」
 柔らかなそこでゆっくりと指を遊ばせると、それに合わせてりのの甘い声が漏れた。
そんなりのの声を聞いているだけで、香のそこからもじわりと温かいものが溢れてくるの感じる。
 香はそっとりののショーツをずらすと、傷つけないように優しく、
そしてゆっくりと、りののそこに指を埋めていく。
温かい壁に包まれた指を少しだけ動かすと、りのは漏れそうになる声をなんとか飲み込もうと歯を食いしばった。
「い、いずみ…さん…んぅ」
 すがるように手を伸ばすりのの髪の毛を、くしゃりと掴むようにしてその頭を掻き抱く。
香はその間も指を動かし続け、りのの敏感な突起を指で転がして断続的な刺激を与え続ける。
「和泉、さん……んあっ、ふ…っく」
「りの…」
 こみ上げてくるものを必死で耐えようとしているりのの名前を、香はそっと囁きながら、
柔らかな髪の隙間から覗く耳を舌先で舐め上げる。
 その瞬間、りのの体が大きく跳ね上がり、強く香にしがみついた。
「――――っっ!! ん、はぁっ……くぅ…んっ」
りのが二度三度と震えるたびに、とろりとしたものが香の指を伝う。
香がそれをりのの目の前でぺろりと舐めると、りのは恥ずかしそうに口元を覆った。
「い、和泉さん……わ、私…」
「りのったら、自分ばっかり気持ちよくなっちゃって」
「うぅ〜…ごめんなさい、いずみさん…」
 ちょっとしたイジワルのつもりだったが、りのは上気した顔のまま、申し訳なさそうに謝る。
 けれど、りのの表情は確かにしょんぼりとしたものではあったが、そこにはさっきまでの
寂しそうな、それでいてどこか苦しそうな暗さはない。
 そんなりのを見て、香は安心したようにりのの頭をそっと撫でた。
「なんてね。別に謝る必要なんてないわよ」
「和泉さん…」
 小さく呟いて、照れくさそうに笑うりの。香は、そんなりのの横にコテンと横たわる。
「和泉さん…手、繋いでもいいですか?」
「うん…」
 りのがそっと手を出してきたので、香もそれを握る。すると、りのは安心したように微笑んだ。
「和泉さんの手、あったかいね」
「そう? りのの方があったかいと思うけど」
 香がそう返すと、りのは小さく首を振る。
「ううん、やっぱり和泉さんの方があったかいです…………あのね、和泉さん」
「なに?」
「私……さっき夢の中でも、こうやって手を繋いでたんです」
 それが誰の手だったのかは分からなかったけど、突然手を離されてしまって、
どうしようもなく寂しくなってしまった、とりのは続ける。
「…そう」
 なるほど、だから自分が帰ろうとしたときに、あんなに寂しそうな顔をしたのか。
曖昧な夢ではあったけれど、りのにとっては心に重く残るものだったのだろう。
「それじゃあ、もうちょっとだけ手握っててあげるわよ」
「うんっ」
 嬉しそうに擦り寄ってくるりのに、香も思わず顔が緩む。
りのが笑ってくれるだけで、香も笑顔になれる。だから、りのにはずっと…。
(ずっと、笑ってて欲しい…)
 そんなことを考えているうちに、だんだん瞼が重くなってくる。
隣を見れば、既にりのはすやすやと可愛い寝息を立てている。
香はそっとりのの頬に口付けをすると、目を閉じて眠りに落ちていった。

23 :香×りの :2005/11/28(月) 21:17:05 ID:7+CVvVgW
―――数時間後。
「ただいま、りの、いるの?」
 神宮司家に帰っていた奏は、部屋の中をキョロキョロと見渡す。
りのが見当たらない。もしかして眠っているのだろうか。
 そう思った奏はそっとりのの部屋の扉に手をかけた。
「……」
 ひとつのベッドに寄り添うように眠る女の子ふたり。
ひとりは服が思いっきり乱れている。
 それを見た奏は、小さく笑う。
「ふふ、今夜は三人で“楽しいこと”しましょうね。りの、和泉さん」
 ひとり小さく呟いて、奏はそっと部屋を後にするのだった。