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843 :名前:歩×香 百合 :2005/11/21(月) 23:51:17 ID:Eqlm3+4t
「っ! いたた…」
 強い痛みが香の体を突き抜ける。思わず声が出てしまったことに、
香は少しだけ恥ずかしそうに頬を染めた。
「恥ずかしがらなくてもいいのよ、和泉さん」
 そう言って、宮神学園の保健医である平田わかなは微笑む。
わかなはしなやかな手つきで香の足を撫でると、様子を伺うように香の顔を見上げた。
「わ、わかな先生…んっ」
「ふふ…」
「あのー…なんか妖しい雰囲気になってますけど」
 保健室に漂う甘ったるい空気を断ち切るように、香とわかなの様子を
伺っていた女の子、桜梅歩は呆れたように声をかける。
 すると、わかなはクスクスと笑いながら、机の上に置かれた湿布をフィルムから剥がした。
「だって和泉さんが可愛い声、出すから」
「そ、そんな声出してません! 早く湿布貼ってください、先生!」
 まったくもう、そう言いながら香は自分の太ももをバシっと叩く。
手の置かれた太ももの先にある彼女の足首は、赤く腫れ上がっていた。

「それにしても珍しいわね、和泉さんが怪我するなんて。何やったの?」
「そ、それは…ちょっと、体育で…」
「ソフトボールで、ボールが当たりそうになったりのをかばったんですよ」
 香が言いにくそうにしているのを見た歩は、カーテンで囲われたベッドを指しながら、
さらりとそう言ってのける。香が慌てて歩の口を塞ぐも時既に遅し、わかなはにんまりと笑って香を見た。
「そっかそっか。優しいわね、和泉さん」
「べ、別に優しくなんかありません」
 顔を真っ赤にしてぷいっとそっぽを向く香に、素直じゃないんだから、と歩は苦笑する。
そんなふたりを微笑ましそうに眺めながら、わかなは香の足首に湿布を貼った。
「そんなにひどい捻挫じゃないから、しばらく安静にしていたらすぐに直るわ」
「ありがとうございました、先生」
「それじゃ和泉、戻ろうか。先生、りののことお願いしますね」
 そう言って歩が香に手を差し出すと、香は少しだけためらってからその手を握り、立ち上がる。
「ええ、目が覚めるまでは保健室にいるから安心してちょうだい。それじゃあお大事にね」
 わかなにそう言われ、ふたりはぺこりと頭を下げてから保健室を後にした。

844 :名前:歩×香 百合 :2005/11/21(月) 23:51:58 ID:Eqlm3+4t
「お、桜梅さん、ひとりで歩けるってば」
「ダメダメ、安静にしなさいって言われたでしょ」
 長い廊下を歩くふたり。歩は香の腰に手を回し、香の手を自分の肩に回させる。
香はさっきからずっと、ひとりで歩けるから、と主張しているものの、歩はそれを許さなかった。
「……」
「……」
 特に話題もなく、気まずい時間が流れる。二人の間にりのがいない状態というのは
いまいち慣れていないのだ。微妙に落ち着かない香は、コホンと咳払いをして足を止めた。
「どしたの、和泉?」
「桜梅さん、私ちょっとトイレ行きたいから、先に着替えてていいわよ」
「え? 別に待ってるけど?」
「でも次の授業に遅れちゃうとよくないし…私のことは気にしないでいいから」
「…そっか、分かった」
 さっきまでは頑なに肩を貸すと言っていた歩だったが、今度はあっさりと引く。
悪いことをしたかも、と思いつつもどこかホッとした香はぴょんぴょんと片足で
跳ねながらトイレへと向かった。

 個室に入り、洋式のトイレにハーフパンツを穿いたまま腰を下ろす。
特に尿意を感じていたわけではなかったが、気まずい時間に耐え切れずトイレを言い訳にしてしまった。
 少しだけ罪悪感を感じながら、香はため息をついた。
 それにしても今日はついていない。こんな怪我をしてしまうなんて、遊撃の
一員としては恥ずべきことだった。それでも、りのにボールが直撃していたら
これくらいの怪我じゃ済まなかった気がする。そう考えると、この怪我もやむをえないものだったのだろう。
 それに…まさか桜梅さんに保健室へ連れていかれるなんて、と香は今日の出来事を思い出す。
 怪我をした香に、真っ先に駆け寄ったのは歩だった。一方りのはというと、
歩が肩を貸してくれるその脇で、香に跳ね飛ばされた衝撃によって目を回していた。
 そんなりのを見て、歩は「まったくりのったら」と呆れたようにため息をついたのだった。

(桜梅さん、かぁ…)
 桜梅歩―――香にとって、彼女は不思議な存在だった。りのと仲がよくて明るい子。
けれど、それだけじゃない。あのりのと仲がよいだけあって、意外と何事にも動じない。
 歩はいつもどこか余裕があって、彼女と話していると、香は自身の器の小ささを
思い知らされるのだ。そんな歩に、香は劣等感に近いものを感じていた。
(なんていうか、見透かされているみたいな……そう、聖奈先輩みたいな)
「和泉、何してんの」
「っっ!?」
 突然頭上から声がして、香は体を震わせる。恐る恐る顔をあげると、ひょっこりと歩が顔を覗かせていた。
「お、桜梅さん!! トイレ覗くなんて何考えてるのよ!?」
 そう叫びながら、ズボンを下ろしていなかったことに、香は心の底からほっとする。
「だって和泉遅いんだもん。中で倒れてるんじゃないかと思って心配になったの」
「え…もしかして、待っててくれたの? 私、先に着替えててって…」
 先に着替えてて、そう言ったはずだったが歩はまだ体操着のままだった。
「そうなんだけど、やっぱり心配だったから」
 歩にそう言われ、香は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
「あ、ありがと…」
「ううん、気にしなくていーよ。それよりもさ、和泉…」
 そこまで言ったかと思うと、歩の姿が引っ込む。
「どうしたの―――って、ちょっと桜梅さん!?」
 突然の出来事に香は驚きの声をあげる。一瞬姿を消したかと思った歩が、
今度は自分の目の前に降り立ったのだ。
 トイレの個室にふたり。よく考えたらありえない光景だ。

845 :名前:歩×香 百合 :2005/11/21(月) 23:53:30 ID:Eqlm3+4t
「な、なんで入ってくるのよ!?」
 そんな香の言葉が聞こえているのか聞こえていないのか、歩は向かい合うようにして、香の膝にまたがって座る。
「ちょ…ちょっと、なに!?」
「和泉ってさ、あたしのこと嫌い?」
「え…」
「だってさ、和泉ってあたしといると居づらそうだし。さっきだってあたしだけ先に行かせようとするし」
「べ、別に嫌いじゃないわよ。さっきのだって迷惑かけたくないから…」
「それじゃあ、あたしのこと、苦手?」
「ぅ……」
 苦手か苦手じゃないかと言われれば……苦手だ。そしてそう思っていることすら見透かされていた。
 香が言葉に詰まっていると、歩は少しだけ残念そうな顔をする。
「あたしは和泉のこと好きなんだけどな〜」
 歩はそう言うと、香の首に手を回してそっと口付ける。
突然の出来事に、香はただ口をパクパクとさせることしか出来ない。
「なっ…!?」
「ふふっ、和泉、顔真っ赤になってるよ」
「だ、だって…」
「和泉はさ、なんだかんだいって優しいよね。りののことかばったり」
 突然そんなことを言う歩に、香はとまどいを隠せない。そんな風に褒められたことなんて
これまでに無かった。だから、どういった反応を返せばいいのか分からないのだ。
「和泉、可愛いね」
「そ、そんなこと―――」
 否定しようと開いた口は、再び歩によって塞がれる。少しだけ開いた隙間から、
歩の柔らかい舌が進入してきて、香は体を震わせた。
 歩を突き放そうとするものの、絡まる舌と舌がまるで麻酔のように働き、力が入らない。
「ぷは…」
 しばらく舌を絡めた後、歩は大きく息を吐いて顔を離す。
たった数十秒の出来事であったにも関わらず、ふたりの頬は赤く上気し、息が荒い。
「和泉…」
 そのまま歩は香の上着をたくしあげ、下着ごしに胸を触る。硬い布の感触を
楽しむようにして優しくその場所を揉みながら、歩は再び香に口付けた。
「お、うめさん…」
「歩でいいよ」
「あゆむ…」
 熱に浮かされたように歩の名前を呟くと、頭の中が痺れたような感覚に陥る。
頭の中が真っ白になって何も考えられなくなった香は、もう歩を拒絶しようとすらしない。
自ら舌を差し出して、積極的に歩のそれと絡めていく。
「ん……はぁ、和泉…」
 そうしている間も、歩の手は止まらない。その手が香の背中に回ったかと思うと、
香の胸を覆っていたブラが緩む。歩はそれを上にずらしてそっと胸に触れた。
「和泉の胸、綺麗だね」
「そ、そんなこと―――んぁっ」
 歩の指が香の胸の先端をつまむようにして擦ると、香の全身に不思議な感覚が走る。
香が、まるでその感覚を逃がさないようにするかのごとく強く目を閉じると、
その姿を見た歩は満足気に笑った。
 そのまま歩は体を屈めて、香の胸に口付ける。あえて先端は口に含まず、その周りを丹念に舐めあげる。
「あ、歩……ん、はぁっ」
「和泉、気持ちいいの?」
「き、気持ちよくなんか…んぁ…な、い…わよ」
 精一杯の強がりも、たどたどしくて情けなく響く。
それがおかしかったのか、歩はクスクスと笑いながら香のハーフパンツに手をかけた。
「和泉、ちょっと腰持ち上げて…くれる?」
「なんで、そんなこと」
「ね?」
「〜〜〜っ」
 歩に上目遣いで微笑まれ、香は反論の言葉を飲み込み、ゆっくりと腰を持ち上げる。
この有無を言わせない雰囲気。やっぱり聖奈先輩に近いものがある…ぼんやりとした
頭で、香はそんなことを思う。
 一方歩は、相変わらず楽しそうな様子で香のハーフパンツと下着を足首までずり下ろすと、
再び香の膝の上に腰を下ろし、右手でそっとその場所に触れた。

846 :名前:歩×香 百合 :2005/11/21(月) 23:54:09 ID:Eqlm3+4t
 湿り気を帯びたその場所に歩の指が触れると、香はますます顔を紅潮させる。
 歩の指は器用に動き、ぬらりとした液体を広げるようにして、柔らかいひだを揉みほぐす。
「はぁ……ん、ふぁ…」
 ここは学校のトイレだ。授業中とはいえ、いつ誰が入ってくるか分からない。
香は必死で声をこらえようとするが、食いしばった歯の隙間から、鼻にかかった声が漏れる。
「もう、可愛いなぁ和泉」
 歩はそう言って、左手で香の唇を撫でる。すると、香は反射的にその指を咥え込んだ。
まるで赤ん坊のように、ちゅうちゅうとその指を吸い、舌で先端を味わう。
「い、和泉…くすぐったい」
 さっきまで楽しそうな様子だった歩も、香のこの行動に驚きを隠せない。右手には
香のひだの柔らかさが、そして左手には香の舌の感触が。
 それが、歩の顔を赤く染めていく。

「ん…歩……?」
 歩のその様子に気がついた香は、口に含んだ指を引き抜いて、歩の表情を伺う。
すると歩は、その視線から逃れるように香の首元に顔を埋め、首をかぷりと甘噛みした。
(なんか…歩、可愛いかも…)
 さっきまではただされるがままだった香も、一度そう思うと自然と体が動く。
香は歩の背中にそっと手を回し、腰を滑るようにしてハーフパンツの中に手を差し込んだ。
「い、和泉…!?」
 歩は驚きの声をあげるが、香の手は止まらない。優しくお尻を撫でてから、ぬるりと
湿ったそこで、指を遊ばせる。
「ん…い、いずみ…」
 香の指から伝わる感覚に、歩は目を強く閉じて耐える。そしてその感覚に飲み込まれて
しまわないように、自身の指をいっそう激しく動かし、香の敏感な突起を弾いた。
「はっ、なんか、そこ……ぅん…」
「き、気持ち、いい…?」
「あゆむ…ふ…ぁ」

 香が歩の名前を呼びながらその感覚に酔いしれていると、歩は自分が一番
感じる場所を香の太ももにこすりつけるようにして動く。
 そして太ももに伝わるその感覚すら、今の香には快感にしかならない。
「あ、歩……わたし…なんか、ん…ぁ」
 香の下腹部に、じんじんとした感覚が集まっていく。
そして歩が香のそこに指を差し込んだ瞬間、それが解放されたように香の全身を駆け巡った。
「――――っ!! んぁああっ!! ぅ……ん…」
 声にならない声を上げながら、香は体を震わせる。するとそれが太ももごしに歩に伝わり
歩もぎゅっと香の頭を抱え込むように抱きついて、ビクビクと体を震わせた。
「んっ―――ふ、ぁあっ! い……いずみぃ…」
 香も歩を強く抱きしめると、ふたりしてはぁはぁと荒い息を吐く。
体にはけだるさが残り、香と歩は一言も口をきかず、ただ黙って息を整える。
数分してなんとか落ちつくと、香は歩の胸に埋めた顔をもぞりと動かした。
「今…何時くらい、なんだろ」
 こうして抱き合っていると、このトイレの個室だけ時間が止まったような感覚に陥る。
けれど、そんなことはありえないわけで。確実に時間は進んでいるはずだ。

847 :名前:歩×香 百合 :2005/11/21(月) 23:54:42 ID:Eqlm3+4t
「うーん…次の授業は始まってるだろうね」
「やっぱり…。でも、まぁいっか」
「あれ、和泉がそんなこと言うの珍しいね」
 てっきり“極上生徒会の一員ともあろう私が”とでも言うのかと思っていた歩は、意外そうに言う。
「だって、なんか歩のいろんな姿見れたから、それで…いいかなって」
「え? あたしの?」
「そう、歩の―――ううん、内緒」
「えぇ〜なにそれ」
 数十分前までは考えられなかったような砕けたやりとりに、香の顔は自然と緩む。
余裕があって、どこか見透かされているような感じがしていた歩が、今はすごく身近に感じる。
それがなんだかとっても嬉しかったのだ。
 香がひとりで笑っていると、歩は不思議そうに首をかしげながら香の目を見た。
「ね、和泉はさ、あたしのこと苦手?」
 さっきも香に向けられた質問。香は、その質問にはっきりと答えた。
「苦手」
「えぇー!」
 香の答えに、歩は不満そうな声をあげた。
そして、あたしはこんなに和泉が好きなのに、と小さくぼやく。
 そんな歩の様子をおかしそうに眺めながら、香は柔らかく微笑んでみせた。
「りのと同じくらい苦手」
「……」
 少しだけ黙った後、歩はその言葉の意味に気がつき、嬉しそうに笑った。
「あはは。てことは、あたしにボールが当たりそうになっても助けてくれる?」
「歩はそんなヘマしないでしょ」
「ん〜そうかも」

 香がりのをどれだけ大切に思っているかは、いつもりのと一緒にいる歩が一番よく知っている。
だからこそ“りのと同じくらい”の言葉が歩は嬉しくてたまらない。
「これから、もっと仲良くなれるかな、あたし達?」
「さぁね、その可能性はあるんじゃない?」
「そっか、よかった」
 歩がそう言いながら立ち上がり、乱れた服を整えると、香も同様に立ち上がって服を着直す。
 香が服を着たのを確認した歩は、個室の鍵を開けて足を踏み出した。
すると、そこで思わぬ人物と目が合って、歩はぴたりと足を止めた。
「あ! アユちゃん!」
「あ、りの〜。目ぇ覚めたんだ。大丈夫だった?」
「うん、おかげさまで…。ごめんね、迷惑かけて」
 りのが申し訳なさそうにしていると、歩の背後からもうひとり、ひょっこりと顔を出す。
「あ、りの」
「い、和泉さん!」
 香の顔を見たりのは、ぶわっと涙を浮かべて香に抱きついた。
「和泉さん、ごめんさい〜〜!! わかな先生に聞きましたぁ! 私のせいで怪我したって」
「あーもう抱きつかないでよ。たいした怪我じゃないし、別に怒ってないから」
「ほ、ほんとですか?」
 りのの言葉に、香はコクコクと頷く。それを見たりのは安心したように息をついた。
「ありがとう和泉さん…何か困ったことがあったら言ってください…私……ってあれ?」
 途中まで言いかけて、りのは何かに気がついたように言葉を止める。

「りの、どうかしたの?」
「そういえば、どうしてアユちゃんと和泉さん、同じところから出てきたの?」
 りのからの質問に、黙ったまま顔を見合わせる歩と香。
しばらく固まった後、歩はりのの肩にぽんと手を置いた。
「えっと…今度は、りのも混ぜてあげるからね」
「ちょ、ちょっと歩!? 何言って…」
「ふぇ? よく分からないけど、やったぁ」
「……」
 嬉しそうにはしゃぐりのに、香は何も返すことが出来ない。
 まったく、このふたりはどうして自分を振り回してばかりなのだろうか。
そう思って、香は呆れたようにため息をつく。
手洗い場の鏡に映った自分の顔が、幸せそうに緩んでいることに、香はまだ気がついていなかった。