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695 名前: 名無しさん@ピンキー 2005/08/30(火) 11:04:33 ID:Ga9yC6Em


「寝つけませんわ・・・」
消灯時間はとっくに過ぎた頃、
茶色と銀色を混ぜたような不思議な色を放つ髪の持ち主、
銀河久遠は、自室で珍しく寝付けないでいた。

悩みの種ははっきりしている。

最近、シンディの様子がおかしい。
元々口数の少ないシンディではあったが、呼びかけにはちゃんと答えてくれていた。

ましてや、寮が崩壊してしまい、実家から通うことにした久遠は、
自分の実家に送り迎えをしてくれるシンディを泊めていたことがある。

あのときは、彼女の好きな本の話、寝付く前には怪談話など、実にたくさんの話をしてくれた。
それ以降、シンディとはそれまで以上に楽しい時間をすごせるようになった。

それこそ、自分の立場を忘れてしまうくらいに。


しかし、この頃はいつ彼女に話しかけても、黙っているか会話の成り立たないおかしな返事しか返ってこない。
もしや自分の正体に気が付いたのでは、と思いカマをかけてみたこともあったが、
気がついている素振りも感じられない。


あれは2週間ほど前のことだ。

久遠は隠密の任務を終わらせ、極上寮に戻ろうとしたが、
すでに10時をまわっており、寮まで結構な距離だったため、シンディに連絡して迎えに来てもらうことにした。


696 名前: 名無しさん@ピンキー 2005/08/30(火) 11:05:47 ID:Ga9yC6Em
「すみません、こんな夜遅くに」
「No・・・気ニシナイデ・・・」

車の窓から顔を出しているシンディに謝罪すると、いつものように単語をただ並べたような、
彼女らしいぎこちない返事が返ってくる。
その言葉を受け取ると、久遠は車のドアをあけ、静かに助手席に座った。

シンディは連絡をすれば余程の事がない限り、すぐに来てくれる。
シンディはその対象が何であれ「運転する」ということが好きなのを久遠は知っていたし、
だから送り迎えすることを苦痛になど思っていないこともわかっていた。

それでも、執行部・遊撃部・隠密部と、すべての部の移動は車両部唯一のメンバー、
シンディ一人にさせてしまっているため、負担はかかるだろう。

ましてや、こんな夜遅くに迎えにきてもらっていることを、久遠は心底申し訳なく思っていた。

「副会長・・・シートベルト・・・」
「あっすみません、いま致しますわ」

突然声をかけられ、久遠は自分がシートベルトをしていなかったことに気が付くと、
そそくさとシートベルトを金具にはめた。

助手席からカチャン、という音が聞こえるのとほぼ同時に、
車は疲れきっている久遠をいたわるように、ゆっくりと動き出した。

697 名前: 名無しさん@ピンキー 2005/08/30(火) 11:06:28 ID:Ga9yC6Em
「シンディさん・・・?この道、いつもと違いませんこと・・・?」
「?・・・OH・・・間違えた・・・。ソーリー・・・」

車が動き出してから数分後だった。
久遠はシンディの車に常備してある、少し甘い味のする栄養ドリンクを口にしていると、
窓から見える風景がいつもと違うことに気が付いた。

どうやら寮への道を間違えたらしい。

「えっと・・・もう少し行くと曲がり角が見えますから、そこを右に曲がれば、いつもの道に戻れますわ」
「・・・ソーリー・・・」
「気にしないで下さいませ。たまには間違えることもありますわよ」

そうこうしながら、いつもより長い距離を走った車は、ようやく寮へ到着した。





「あれがたしか、2週間ほど前のこと・・・」
あのときは、本当に気にしないでいた。

いや、今でもシンディが道を間違えたことに腹を立てたりなどはしていない。

だが、久遠の記憶の中であのとき以外、シンディが寮周辺の道を間違えたことなどないこと、
そして、あの道を間違えた前後の頃から、どことなくシンディの自分に対する対応がおかしくなっていったという事実が、
久遠を悩ませていた。

「・・・今度・・・外食にでも誘って・・・ゆっくりお話したいですわね・・・」
久遠がそうつぶやいたとき、時刻は既に午前の4時を回っていた。


698 名前: 名無しさん@ピンキー 2005/08/30(火) 11:07:46 ID:Ga9yC6Em
朝の6時。

ほとんど寝ていなかった久遠は、「まだ早い」と思いつつも、
これ以上布団に入っていても大して睡眠時間を確保できないことに気が付いていたので、
顔を洗い、眠気を覚ますためベランダに出ていた。


「・・・こんな日でも、ここからの景色はいつもと変わりありませんわね」

自室のベランダから見る景色は、いつもと変わらず絶景だった。

身動きのとれない自分への嫌がらせだろうか、と意味もない疑いをかけ、
苦笑いをしながら久遠は目線を下に移した。

「あれは、シンディさんの車ですわね。今日もあちらにいらっしゃるのかしら?」

シンディは寮で寝泊りしているときと、車の中で寝泊りしているときがある。

この頃は車で寝泊りしているようなので、
久しぶりにシンディに挨拶に行こうかと、密かな期待を抱かせたそのときだった。


久遠のいるベランダへ、左足に紙切れをつけられた一羽の鳩がむかってくる。

普段、特定の動物に対して恐怖感などは全く感じない久遠が、
その鳩を見つけてしまった瞬間、顔を強張らせた。

「・・・また、邪魔が入ってしまいましたわね」
ただ挨拶ができなくなったにしては、あまりにも不釣合いに、久遠は悲しそうな顔を浮かべた。
702 名前: 695百合 2005/08/30(火) 12:23:36 ID:Ga9yC6Em
久遠はみんなを起こさないように、そっと寮を出ると、すぐそばにある車を覗いた。

「・・・やはり、まだ寝ているようですわね」

少し考えてみれば、あんな時間に訪れたとしても、まだ寝ているため、
どちらにしろ挨拶は無理だっただろう。

シンディが眠っているのを確認した久遠は、そっと車を離れ、紙に書いてある場所へとむかった。


「・・・?・・・フクカイチョウ・・・?」
そのとき、車の中にいたシンディは、少しずつ小さくなっていく背中を、
ぼんやりとした頭と、まだ焦点のあっていない虚ろな瞳で見送った。




シンディは朝の支度をするため、寮に戻ったが、そこに久遠の姿はなかった。

先ほどのことは夢ではなかったのだと、ようやく確信したシンディは、
もう学園に行っているのかと思い、急いで支度をすませた。

しかし、学園内の中をくまなく探したが久遠は見つからず、携帯の電源も切られている。
久遠のことを良く知っている奈々穂ですら、居場所がわからないらしい。

結局、その日の授業は苦手としている英語以外の教科も、ほとんど身に付くことなく終わってしまった。


703 名前: 695百合 2005/08/30(火) 12:25:05 ID:Ga9yC6Em
その日の日程をすべて消化し、生徒会メンバーは全員寮に戻っていた。
久遠を見かけていないことを不思議に思ったメンバーは、やはり奈々穂に事情を聞いた。

しかし、久遠の身に何が起こっているのか、大体予想のついていた奈々穂は、
ほとんどの者に「急な用事で実家に帰っている」と伝えた。

「副会長・・・」
「どうした?シンディ」
ほとんどの者は疑いもせず、奈々穂の説明に納得して、それぞれの場所へ散っていったが、
その中で1人残り、ぼーっとつったっていたシンディは、小声で奈々穂にたずねた。


「・・・久遠さんは・・・」
「だから実家に帰っていると連絡が・・・」

「・・・ナフレス・・・」
「! な・何故おまえがそれを・・・!」

それを聞くと、珍しく表情を険しくさせているシンディは、
自分はみなもがあの写真を見つけた次の日の朝、
久遠と会長が会話しているのを車の中から目撃してしまい、気が付いてしまっていた、
と奈々穂に伝え、唖然としている奈々穂を横目にいつもの車の中へと引き返していった。


704 名前: 695百合 2005/08/30(火) 12:26:55 ID:Ga9yC6Em

その日の夜、10時頃

まだ久遠は戻って来ていなかった。

車に戻ってから、うつむいたままだったシンディが、
自分のそばにある小さな機械が発しているバイブ音とともに、初めて顔をあげた。

「OH・・・」

珍しく自分の携帯電話が鳴っている。
こんなときに誰だろう、と面倒くさそうにシンディは携帯電話を手にとった。

・・・そうだ、こんなときにほかに誰がいるというのだ。
シンディの携帯を鳴らしている人物はほかでもない、久遠その人だった。

「・・・モシモシ・・・?」
突然だったので、本当は心底動揺していたが、そんな素振りを全く感じさせないいつもの口調のまま、
シンディは電話に出る。

「・・・今・・・む・・・迎えに来て・・・くださる・・・?」
「!・・・ら・ラジャー・・・」

それとは対照的に、電話の向こうに居る久遠は、
普段の落ち着きのある口調を全く感じさせない、電話越しでもはっきりとわかるほど、
荒い息を吐いていた。

久遠から居場所を聞いたシンディは、奈々穂と一緒に迎えに行くべきだと判断し、
奈々穂の元へ伝えにいこうとしたとき、

「・・・シンディさんが・・・一人で来てくださいませ・・・」
「・・・ら・ラジャー・・・」

まるでこちらの思考を読み取ったかのように、久遠が呟いた。
訳のわからないまま返事をしてしまったシンディは、とりあえず電話を切って、
車を降り、車庫へと向かった。

何故自分一人なのか?何かに試されているのか?だとすると、久遠はとらえられているのか??
電話を切ったシンディは、自分の思いつくかぎり、様々な思考を廻らせるが、
何故自分ひとりでなくてはいけないのか、わからなかった。

そうこう考えているうちに、車庫へとたどりついたシンディは、
ある大型の車の前に立ち止まり、軽く点検をする。

シンディはその車にどこにも異常がないことがわかると、
非常時に必要なありとあらゆるものを完全装備し、特別にチューンナップされた大型車、
「Quon(久遠)」へと乗り込み、
先ほどまで電話していた、車と同じ名前の持ち主のところへと急行した。
711 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:02:56 ID:Ga9yC6Em
人気のない場所にポツンとある空き地に、久遠は一人立っていた。
いや、立っているというよりは、寄りかかっている、という格好だ。

「・・・これで・・・宮神学園ともお別れかしら・・・?」

肩で息をしながら、消え入るように囁く。

自分がナフレスの人員だということが周りにバレてしまっては、
宮神学園にはいられなくなってしまう。
任を外されるのはもちろんだが、そうでなくてもバレてしまった後、周りにどんな顔をして過ごしていればいいのだ。
口をきいてくれなくなる者もいるかもしれない。

事情を知らないシンディを呼んでしまえば、当然何をしていたのか問い詰められ、
誤魔化しきれなくなってしまうだろう。

しかし、今の自分に一人で寮に戻れそうな体力はすでになくなっていた。

久遠は宮神学園を去る事を覚悟だったからこそ、シンディ1人だけを呼んだのだ。

「・・・最後に・・・私を避けていた理由くらいは・・・聞いておきたいですわね・・・」

心のこもっていない、仮面のような笑みをうかべた後、
久遠はそっと目を閉じ、そこからジッと動かずに車の音と彼女を待った。


712 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:04:15 ID:Ga9yC6Em
それから数分後、大型の車がせまい道をこじ開けるように、強引に入ってきた。

「あの車・・・たしか、私と同じ名前でしたわね・・・」

自分と同じ名前の車にシンディが乗ってきたことを考えて、おかしな優越感を感じていると、
周りに誰もいない事を確認し、シンディは急いで自分の元へやってきた。

「オ・OH・・・副会長・・・」

シンディは電話の様子から、久遠の状態を予想にはしていたが、
それでもやはり、こんなに頼りのない久遠を見るのは初めてだったので驚いてしまった。

一見すると外傷は全くないようだが、腹部に手を当て、
汗だくになり、肩で息をしているところを見ると、明らかに無傷ではないようだった。

シンディは久遠に何も問い詰めることなく、大柄ながらその非力な腕で久遠を抱え、
自分がさっきまで乗っていた、もうひとつの「久遠」へと急いだ。


Quonの運転席ではなく、後ろにある大きな荷台のドアを開けると、
そこにはありとあらゆるものが揃っていた。ここで寝泊りなど、容易いものだということがすぐに想像できるくらいに。

シンディはドアに鍵を掛け、その綺麗な顔を苦痛に歪ませている久遠を、大きなタオルの上にそっと寝かせた。

「副会長・・・失礼シマス・・・」
「えぇ・・・かまいませんわ・・・どうぞ」

シンディは傷の手当てをしようと、久遠の制服のボタンにそっと手をかけ、
上着、ベスト、と丁寧に脱がせていく。
ベストを脱がせると、久遠のシャツに血が付いているのが見えた。

「・・・し・失礼シマス・・・」

さすがに女同士・上半身のみとはいえ、久遠を下着姿にさせるのは抵抗があったが、今はそんなことを言っている場合ではない。
シャツを脱がせ、久遠を下着姿にすると、そこには綺麗な身体につけられた切り傷や打撲の痕が露わになった。
ついさっきつけられたと予想できるものから、随分前のものまである。
シンディはわたわたと明らかに慣れない手つきで、救急箱から消毒液などを取り出した。

久遠は、何があったのかと、いまだに何も問い詰めてこないシンディを不思議におもいながら、
ジッと見ていると余計に緊張してしまうことにようやく気が付き、シンディから目線を逸らした。

713 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:04:56 ID:Ga9yC6Em
「・・・うっ・・・くっ・・・」
消毒液の作用からくる、大きな傷口に走る激痛に、久遠は思わず苦しそうなうめき声を上げてしまうと、
それを聞いたシンディは慌てて手を止めた。

「大丈夫ですわ・・・。続けてくださって結構です・・・」
「・・・ソーリー・・・」

ナフレスのやり方は悔しいが的確な判断だった。
顔や手足など、見える位置に傷がついてしまえば、久遠の体力が回復しても、
周りに不信に思われ問い詰められてしまう。

しかし、腹部などの普段見られることのない位置であれば、
久遠の体力さえ回復してしまえば、一見わからないので、周りに問い詰められなどはしない。
もちろん、久遠がバラしてしまえばそれまでだが、宮神学園にいたい久遠はそんなことはしない。

ナフレスはそこをついて、いつまでたっても結果を出そうとしない久遠を定期的に呼び出し、
久遠の身体を傷つけていたのだ。


「はぁ・・・はぁ・・・シンディさん・・・」
「・・・What?」
手当てを終え、汗だくになっていた久遠の身体を、バスタオルで丁寧に拭いていると、
声を掛けられ、シンディは世話しなく動かしていた手を止めた。

「・・・私に・・・何か聞きたいことはございませんの・・・?」
「・・・Yes。」

あっさりと「ありません」と答えられ、少し面食らった久遠は、
本来なら問い詰められるはずが、逆にシンディを問い詰めていった。

714 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:07:08 ID:Ga9yC6Em
「・・・私が何をしていたのか・・・まさか隠密の任務だとは思っていませんわよね・・・」
さすがにそんな勘違いはありえない、と思いつつ久遠はシンディに訊ねる。
その発言を境に、シンディは何かを考えているのか、黙り込んでしまい、
久遠はシンディが反応を返してくれるのを黙って待っていた。

・・・しばらくして、シンディが重い口をようやく開いた。

「・・・な・・・・ナフレス・・・・」
「っ・・・?!ど・どうしてそれを・・・」

あまりに小さな声だったので、一瞬何と発言したのか考えると、
驚いた久遠は顔を歪ませながら身をおこし、うつむいているシンディの顔を覗き込んだ。

「・・・か・会長と・・・の、会話・・・聞いてしまった・・・」
「・・・では、あのときから・・・もう全部知っていたんですの・・・?!」
「Yes・・・ソーリー・・・」

なんということだ。今までシンディに隠していたつもりが、
全く持ってバレバレだったのではないか。
ましてや、状況を知ってしまっているという事実を、逆に隠されていたのだ。

「それでは・・・最近私を避けていたのも?」
「・・・ワタシ・・・副会長と話していたら・・・バレてしまいそうだったから・・・」

シンディは、久遠がナフレスから送り込まれたという事はもちろん、
そのことが周りにバレてしまうと、結果的に久遠がここを離れなくてはならないことも知っていた。

察しのいい久遠のことだ。自分の演技などすぐに見破ってしまうだろうと考えたシンディは、
なるべく久遠との接触機会を減らし、話しかけられても挨拶か会話が成り立たないような単語を並べていたのだ。
以前の楽しかった日々が終わり、久遠に嫌われてしまうかもしれないというリスクまで背負って。
その精神的ストレスが、任務にも支障を与えていたのだろう。

「そ・そうだったんですのね・・・・」
「・・・そ・ソーリー・・・」

今にも泣き出しそうな顔をしているシンディを見て、久遠は胸が苦しくなった。
どうしてこんなにも避けられているのかと、苦しんでばかりいたが、
本当に苦しんでいたのは、意図的に避けていたシンディの方だったのだ。


715 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:07:41 ID:Ga9yC6Em
・・・でも・・・少し嬉しいですわね」
「・・・Why?」

相手が苦しんでいたというのに、嬉しいなんておかしな言葉だと思いつつ、
久遠はいつまでも下を向いてままのシンディに言った。

「・・・私、シンディさんの気持ちだけはいつも読めませんでしたから。
そこまで思ってくれたのがわかって、正直嬉しい面もありますわ」
「・・・」

シンディは照れくさいのか、顔を少しあげたが久遠の方を見ようとしない。
それからしばらく沈黙が続いていたが、いつまでもこちらを見ないシンディに久遠が話しかけた。

「・・・そろそろ、私に顔を見せて下さらない?」

「・・・・。
 ・・・・フクカイチョウ・・・上・・・着て下さい・・・」

シンディに言われてようやく気が付いた。
久しぶりにする会話に夢中になっていたが、自分は上半身は下着姿だったのだ。
それでシンディは先ほどから顔を向けなかったのだ。
なるほど、と納得した久遠は、それと同時に少し悪戯な笑みを浮かべた。

「それは・・・できませんわ」


716 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:08:21 ID:Ga9yC6Em
「・・・わっ・why?」
久遠の意図が全く読めないシンディは、当然驚いた様子で聞き返した。

「これからシンディさんには、私を2週間も避けていた罰を受けてもらいますわ。このままでは私の気がすみませんもの。」
「・・・お・Oh・・・」

もちろん久遠はシンディに対して怒っているわけはなく、「罰」というのも冗談で言っているのだが、
シンディは本気に受け取ったのか、困ったような顔をしている。
あまりにまともに受け取ってしまうので、久遠はやめようかと一瞬迷ったが、
実際にこのままでは自分の欲求が満足しそうにもなかったので、シンディに罰を受けてもらうことにした。


「私、身体が冷えていますの。少しマッサージして下さらない?」
「・・・Yes・・・」

シンディは罰とはそんなことか、と安心した顔をするとタオルを取り出そうとするが、
その右手を久遠に簡単に止められてしまう。

「素手で、ですわ」
そう言いながら久遠は、スカートやソックスも脱ぎ、上下とも下着姿になると、
ブラジャーを外し、その形の整った大きな胸を露わにさせた。

「の・No・・・!」
シンディは顔を真っ赤にさせ思わず久遠から目を逸らす。
「これは罰、ですわよ。」
「・・・うぅ・・・」

久遠に責められ、シンディは仕方がなく久遠を寝かせ、
傷口には触れないよう、マッサージを始めようとした。

・・・しかし、傷口に触れないようにすると、マッサージしてやれるといえば胸くらいだった。
久遠はそのことに気が付いていたから、マッサージを要求したのだ。
おそるおそる、シンディは久遠の胸を揉み始める。

「あん・・・ふぅん・・・・んんっ・・・」
「の・Noッ!」

久遠はわざと少し大きめにいやらしい声を出すと、シンディはたまらずに、すぐさま手を止めてしまう。

「駄目ですわシンディさん。このままでは私寒くて凍えてしまいますわ。」

随分とオーバーな発言をすると、久遠は首を振ってイヤイヤをしているシンディの両手首を掴み、
自分の胸へと押し付けた。
仕方なくシンディの手が再び動き始めるのを確認すると、
一段と甘くいやらしい声を出しながら、シンディの両手首から自分の手を離し、
今度はその手で、横を向いているシンディの顔を自分のほうへ向けた。

「はぁぁん・・・あんっ・・・はぁ・・・
 シンディさん・・・ちゃんと・・・あはぁ・・・私の顔を見て下さらないと駄目ですわ・・・」
「お・・・OH・・・・No・・・・No・・・!」

涙目になり、耳まで真っ赤にさせたシンディは、
久遠の喘ぎ声を聞きながら、自分の下半身に起きている異変に気が付き始めた。

717 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:09:03 ID:Ga9yC6Em
「んふふ・・・シンディさん・・・これも罰ゲームですわよ・・・」
「・・・!!!」

久遠はシンディの顔つかんだまま、自分の身体に強引に近づけさせると、
自らも起き上がり、胸の先端の十分に硬くなっていた部分を無理やりシンディの口の中へ含ませた。

「これも・・・シンディさんへの罰ですわよ・・・」

頭を久遠に押さえつけられ、身動きのとれないシンディは、
仕方がなく口を動かし始める。

「あぁぁっ、はぁっ・・・!んんっ・・・・!はぁっ、はぁっ・・・!」

吸われてははかまれ、舐めまわされたりと自分が下した命令ながら、シンディに責められ続ける久遠は、
今度はこれまで体験したことのない快感により、再び汗だくになり、肩で息をしはじめた。

「シンディさん・・・ッ・・!全部・・・脱いで下さい・・・これもッ・・・はぁっ、はぁっ、
 あなたへの罰ですわよ・・・!」

荒い息のままシンディに命令すると、シンディは久遠の胸の先端から口を離し、
抵抗することもなく自分の服を脱ぎ始め、久遠よりもさらに色の白い身体を、初めて人前にさらけ出した。

「うふふ・・・シンディさん、ナイスバディですわよ・・・。
もっと自分に自信をもってもよろしいのに・・・」

すると、久遠も下着をずりおろし、
自分の甘い液を溢れさせている源を、シンディに掻き回させると同時に、
自分の指を久遠の喘ぎ声を聞くだけで、もう十分に濡れているシンディの秘所へ入れ、掻き乱した。

「んくっ・・・・うっ・・・うぅッ・・・!!んぅ・・・!!!」
よほど恥ずかしいのか、シンディは歯を食いしばり、必死に声を出さないようにしている。

「はぁっ・・・我慢なさる・・・おつもりですのッ・・・?」
ならばという感じで、久遠は巧みにシンディを刺激し続ける。

「ウッ・・・うぅっ・・・!!の・NO!!!・・・あぁぁぁッ・・・・あぁッ!!」

ついに耐えられなくなったシンディは、女らしい喘ぎ声を車内に響かせた。

718 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:10:00 ID:Ga9yC6Em
くちゅくちゅと、湿ったいやらしい音が響き渡る中、
お互いにどんどん手の動きをエスカレートさせていった。
「はぁっ・・・も・もうっ・・・我慢の・・・限界ですわ・・・ッ!」
「はぁぁっ・・・ワタシ・・・も・・・・ッ・・・限界です・・・!」
お互いに刺激し合い、感じ合い、身体をしならせていた2人に意識に、
限界が近づいていた。

「くっ・・・んアァッ・・・!シンディさんッ・・・私・・・!」
「・・・久遠サン・・・ワタシッ・・・も・・・・!」
「「あぁぁぁ・・・・ッ!あぁッ!!!あぁぁっあぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!!!!」」

二人同時に果て、久遠は身体を大きく反らせ、全身を大きく痙攣させながら、後ろへ倒れ込んだ。
薄れていく意識、口からは唾液を垂れ流し、荒い息を吐いている。
シンディは朦朧とする意識の中、焦点の合わない虚ろな目のまま、目の前で果てている久遠を見つめ続けた。


719 名前: 695 百合 2005/08/30(火) 17:12:05 ID:Ga9yC6Em



久遠が目覚めると、何時かはわからないが朝だった。
どうやらあのまま寝てしまったらしい。

あたりを見回すと、そこはすでに何もなかったかのように綺麗にかたずけられ、久遠は元の制服に戻っており、
かけ布団までかけられていた。おそらくシンディがしてくれたのだろう。

しかし、肝心のシンディが見当たらない。
どこへいったのかと、久遠が心配して外に出てみれば、そこには空き地に咲いている花に水をやるシンディの姿があった。

「おはようございます、シンディさん」
「グッド モーニング・・・・」
「お花・・・好きなんですの?」
「Yes・・・・」

シンディは、昨日2人で果てたときの激しさは全く感じられない、
いつものおとなしいシンディに戻っていた。

お互いに昨日のことには触れることなく、お互い黙って花を見ていると、珍しくシンディから口を開いた。

「・・・寮には・・・今朝連絡しておきました・・・」
「・・・奈々穂さん、やっぱり怒ってらした?」
「・・・Yes・・・デモ、トテモ 心配してました・・・。」
「あら、奈々穂さんが?少し意外ですわね」
「・・・そうですか・・・?」
「えぇ」

久遠は奈々穂が心配していることなどわかっていたが、
少しシンディをからかうように「意外だ」と口にした。

他愛もない会話をしているうちに、シンディは水をやり終え、
もう戻らないと、と言って車の運転席へと引き返すので、久遠もそれについていった。

助手席のドアを開け、同じ名前ながら全く雰囲気の似つかない大型車に、久遠は初めて乗った。

「なんだか不思議ですわね。自分と同じ名前の車があるなんて。」
「・・・Yes・・・フシギ・・・」

そんな会話をしながら、久遠はシートベルトをつけようと、金具をはめた瞬間、
ベルトに押さえつけられている腹部に、痛みが走った。
たしかに昨日手当てはしてもらっているが、完治まではほど遠い。

「OH・・・大変・・・」
「あっ・・・。ありがとうございます。」

それに気が付いたシンディが、久遠のベルトをかなり緩めてくれ、
シートベルトはほぼ全く安全の意味のない、ただの飾りになっていた。

「・・・運転、トテモ気を付ける・・・」
「よろしくお願いしますわ、シンディさん」

その返事を聞き届けると、車は同じ名前の者のをいたわるように、
いつもよりもさらにゆっくりと動き出した