「クイズゲーム」と「美少女」って、相性が良いんでしょうか。
一般ユーザーへのルールの認知度が高い点のみを見て言えば、クイズは麻雀やカードゲームよりも遥かにゲーム(特に対戦)向きです。その一方で『子育てクイズ マイエンジェル』『クイズなないろDREAMS虹色町の奇跡』など、クイズの本質をそういったビジュアルで包みメインとするゲームが多いのも事実。
純然たるクイズゲームを心行くまで楽しみたい気分もあるのですが、クイズのみを題材としたクイズゲームはゲームとして淡白ですし、何より私が最も愛するクイズゲームはバカゲー界に燦然と輝く別の意味でカルトクイズな『謎王』ですので、私自身はクイズゲームにクイズ以外のものが混入することを忌み嫌ってはいません。むしろ好きです。
『クイズマジックアカデミー』だって、予選敗退時に見られるシャロンの落雷を浴びた顔がエロくなけりゃどんだけ私のプレイ意欲が削がれるか想像できませんし。
要するにクイズと美少女はそれぞれお互いのバランスが取り易い要素、という事なのでしょう。両方の要素を最大公約数的にシェイプした形の一つがアドベンチャーゲーム形式のクイズゲームなんだと思います。例えば、問題表示部分と登場キャラのセリフ表示部分をメッセージウインドウ一つで兼用できる、とか。
いや、クイズゲームに限らず大抵のゲームにはメッセージウィンドウと何らかの映像は存在しますが、面白いのは「クイズゲーム」に付加するものとして「美少女」が選ばれた点で。
文字と画像のバランスという点のみ見れば、ノベルゲームも似たようなバランスで保たれていますね。表現の主軸であるストーリー+選択肢と、それを補佐するビジュアル(あるいはそれの反転した関係)。
そんな身勝手かつ散漫な雑感はさておき。
今回ご紹介するのは、そんな美少女が出てこないこともないクイズゲーム『プロジェクトQ』です。
発売元のヘクトという会社は、美麗なグラフィックと童話風のストーリーが特徴的なアクションゲーム『ムーンクリスタル』から純然たるパズルゲームでありながらラウンドクリア時に突如として登場するバニーガール『キャデラック』まで、ファミコンで萌えを追求する側面を持つメーカーです。しかしその一方では硬派な実用ソフト『囲碁指南』『将棋名鑑』シリーズを発表するなど、どうにも社風が見えづらい会社でもあります。
そして、本作においてはその片翼を担う「萌え」が前面に押し出されているように見受けられます。
『プロジェクトQ』は二つのゲームモードで構成されています。
一つは一般的な多人数参加クイズゲームを楽しめる『バトル 10000』、そしてもう一つは本レビューでメインとして扱うストーリーモード『キューティープロジェクト』です。
ある日、主人公が街を歩いていると芸能事務所のスカウトマンから声を掛けられます。
曰く「これからはクイズが得意なアイドル、略してクイドルの時代だ」との事。
本作ではこの胡散臭いマネージャーが現在の芸能界とクイドルの需要について講釈を垂れる場面があるのですが、その時の言い分を総合すると、どう考えても「事あるごとに知識をひけらかす嫌な女」しか出来上がりません。そんな奴がバラエティ番組に迎合できるんでしょうか。
「クイズが得意=頭が良い」と拡大解釈すると菊川怜(東大卒)に行き着く気がしなくもないです。まあ、あの人は『タイムショック21』でトルネードスピンしてましたけど。
そんなインテリ系アイドル豆知識はどうだっていいのですが、本作の主人公はスカウト後の試験を突破してからクイドルとして芸能事務所に所属することとなった主人公は、日々己を磨くためのレッスン(クイズ)に励みます。そしてクイドルとしての実力を充分に会得した後は、遂にプロデビューのオーディションを受けることとなります。
これがストーリーの概略です。
スタート時からクリアまでの大まかな道程をまとめますと、
スカウト時の試験に合格
↓
プロデビューに足る素材になるまでレッスン
↓
プロデビューの最終試験
↓
合格(エンディング)
といった感じ。
次のステップへ進むためにはクイズで一定の成績を修めならければならず、クイズの正答率がそのままストーリー進行と直結していきます。
本作のクイズゲームとしての出来は、非常に良いです。
出題時の問題文も画面に一括表示ではなく左から右へスクロールされるため一問あたりに使われる文字数も多く、ファミコンのテキスト主体ゲームにありがちな舌足らずな文章に辟易することもありません。
上の画像のように、問題文が瞬時に表示されない点を利用した「〜といえば〜、ですが」などのひっかけ問題の数も充実しています。
本作最大のポイントは、そのクイズの成績如何によって育成中のクイドルの顔面が変化していく点です。クイズで好成績を取ると利発そうな美少女に、逆に低い成績だとバカっぽい顔になります。
↑回答率が高い場合。
↑回答率が低い場合。
育成という点では上述したクイズゲームや『すくすく犬福』と同類ですね。
まあ、冷静に想像すると「クイズの成績が良ければ美人になる」ってシステムは少々怖いものがあるんですが。「クイズで好成績を収めた御褒美に美容整形」とかでしょうか。
そんな感じで、プレイヤーのクイズに向ける熱も自然と上昇しそうな「顔面変化システム」ですが、実はここに大変な問題があります。
次のステップへ進むためにはクイズを好成績で突破しなければならない。
クイズで好成績を取ると利発そうな美少女になる。
ということは、ちょっとバカっぽい美少女、例えて言うなら若槻千夏みたいな顔面を作りたくても、ゲームシステム上その顔面が矯正されてしまうんです。
結果として出来上がるのは、皆似たような顔面のクイドル。オールクリア後にはいつも「綺麗だけど、どこにでもいそう」感たっぷりの安田美沙子的クイドルを拝むことになります。
しかし、『モー娘。』の後期メンバーを例に出すまでもなく「ちょっとブサイクなほうが親近感とか持てていい感じ」という欲求は一部の成人男子に備わっているものです。
仮にそれを一部の人間が保有する特殊な感情と割り切ったとしても、そこから更にプレイヤーの欲求の範囲を拡大しますと「単にブサイクなキャラを作成してデビュー」という天邪鬼なプレイを楽しみたくても、システムがそれを許さないのです。
つまり何が言いたいのかというと、私はどうにかしてちょっと変な顔面のクイドルを作りたいんです。
あびる優を作らせろあびる優を!!
(※本レビューの第一稿は2月上旬に書かれたものであり、その当時『あびる優』という固有名詞には「典型的な美人ではないアイドル」との意味のみを持たせた上で比喩表現として用いていました。
が、2005年2月中旬において同名のアイドルにそれ以上の汚名が被せられ更には一般的に浸透したため、結果的に本レビューの比喩表現に他意が含まれる形となった事をお詫びし、同時に上述した内容を正確にご理解頂きたくお願いいたします)
あびる優に関しては事件以前にその粗暴なキャラ作り自体に問題があると思うのですが、ここで語る事柄ではないので話を元に戻しますと、本作は本レビューの冒頭に挙げた「美少女クイズゲーム」の原型とも言えるクイズゲームであったと言えます。
クイズの1プレイ時間が5分と少々長めだったりオールクリアの条件が高めに設定されていたりと、細部に気になる点も残っているものの、ファミコン史上でのクイズゲームとしてはビジュアルの要素を抜いても最高の完成度を誇っています。本作と現在のストーリー性を組み込んだクイズゲームを鑑みつつ、今日に至るまでのクイズゲームの変遷を脳裏に想い描きながらプレイしてみるのも一興でしょう。