日本国有鉄道 ＪＮＲ ＪＲ 鉄道省 国鉄 国鉄型車両 第３セクター鉄道 分割民営化 鉄道史 昭和 労働運動史

　　　　昭和16年9月16日　閣議決定

昭和十六年度資金統制計画ハ支那事変ノ完遂並ニ緊迫セル国際情勢ニ対処スル日満支戦時態勢ノ急速ナル整備強化ヲ目途トシ国家資金ノ計画的蓄積並ニ配分ヲ策定シ資金ノ最高効率ノ発揮ヲ図リ以テ国家経済ノ総合的計画ノ達成ヲ確保セントス
第一　本計画策定ノ基本方針ハ左記ニ依ルモノトス
　(一)　資金供給ト資金蓄積トハ其ノ総額ニ於テ均衡セシメ通貨ノ膨張ヲ抑止スルコト
　(二)　資金ノ配分ニ於テハ物資動員計画、生産拡充計画、労務動員計画、国際収支計画等ニ照応セシメ各供給資金ニ付総合的調和ヲ保持セシムルコト
　(三)　諸般ノ情勢変化ニ即応シ資金需給ノ適合ヲ図ル為調整準備金ヲ設クルコト
第二　本計画ハ左記ノ五計画ヨリ成ルモノトス
　　　資金総合計画
　　　公債計画
　　　事業資金計画
　　　対満支供給資金計画
　　　資金蓄積計画
第三　本計画ヲ基礎トシテ四半期毎ニ実施計画ヲ設定シ関係各庁ハ企画院ト緊密ナル連絡ノ下ニ時々ノ情勢ニ即応シテ資金計画ノ円滑ナル遂行ヲ確保スルモノトス
　　　尚各実施担当官庁ハ毎月其ノ実績ヲ企画院ニ報告スルモノトス
第四　情勢ニ急激ナル変化アル時ハ本計画全般ニ亘リ所要ノ調整ヲ加フルコトアルモノトス
第五　本計画ノ達成上曩ニ決定セル「財政金融基本方策要綱」ノ各項目ノ急速且強力ナル実施ヲ図ルモノトス

　　一　資金総合計画
第六　昭和十六年度資金総合計画ハ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　記　　　　　　　　　（単位百万円）
　一、資金供給
　　(一)　公債所要資金　　　　　八、七五〇
　　　(イ)　 国債　　　　　　 　八、五〇〇
　　　(ロ) 　地方債　　　　　 　　　二五〇
　　(二)　事業所要資金　　　　　五、三六四
　　　(イ)　 株式払込金　　　 　一、八四〇
　　　(ロ) 会社債増加額　　 　一、二三〇
　　　(ハ) 借入金増加額等　 　二、二九四
　　(三)　対満供給資金　　　　　一、一一〇
　　(四)　対支供給資金　　　　　　　四五〇
　　(五)　其他調整準備金等　　　　　九二四
　　　　　　　計　　　　　　　一六、五九八
　二、資金蓄積　　　　　　　　一六、五九八

　　二　公債計画
第七　昭和十六年度国債発行計画額ハ現予算ノ節減及繰延、租税収入ノ増加等ヲ考慮シ一応八十五億円ト概定スルモノトス
第八　昭和十六年度国債消化計画ハ発行額ノ全額消化ヲ目途トシ資金蓄積並ニ原価等ヲ勘案シ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　記　　　　　（単位百万円括弧内ハ蓄積額ニ対スル比率）
　一、諸金融機関　　　　四、八二二　　（四五・二％）
　　(一)　銀行　　　　　三、六四二　　（五〇・〇％）
　　(二)　信託会社　　　　　　五八　　（一四・五％）
　　(三)　無尽会社　　　　　　二〇　　（一〇・〇％）
　　(四)　保険会社　　　　　六〇〇　　（五〇・〇％）
　　(五)　産業組合関係　　　五〇〇　　（三三・三％）
　　(六)　其他金融機関　　　　　二　　（五〇・〇％）
　二、官庁　　　　　　　二、四〇六
　　(一)　預金部　　　　二、二〇〇
　　(二)　簡易生命保険及郵便年金
　　　　　　　　　　　　　一七三
　　(三)　其他官庁　　　　　　三三
　三、国民直接保有　　　　　九七二
　　(一)　会社　　　　　　　三〇〇
　　(二)　個人　　　　　　　六七二
　四、外地　　　　　　　　　二〇〇
　五、海外　　　　　　　　　一〇〇
　　　　　計　　　　　　八、五〇〇
第九　本計画達成ノ為採ルベキ諸方策ハ左記ニ依ルモノトス
　(一)　政府ハ金融機関ニ対シテ強力ナル指導ヲ為シ少クトモ蓄積資金ニ対シ予定ノ国債投資比率ヲ確守スルコト
　(二)　資金原価ノ低減ヲ図ル為金融機関ノ合同ヲ更ヌ促進スルト共ニ各種系統金融機関ノ統一的指導監督ヲ強化スルコト
　(三)　個人ノ国債保有ニ関シテハ国民貯蓄組合ノ普及徹底ニ依リ之ガ増加ヲ図ルト共ニ国債ノ浮動化ハ極力之ヲ防止スルコト
第十　昭和十六年度地方債計画ハ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　　記　　　　　　（単位百万円）
　地方債増加額　　　　　　二五〇　
　　(一)　内地　　　　　　二一〇
　　(二)　外地　　　　　　　四〇

　　三　事業資金計画
第十一　昭和十六年度事業資金計画ハ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　　記　　　　　　　（単位百万円）
　一、資金所要
　　(一)　設備資金　　　　　　　　　　三、八五四
　　(二)　運転資金　　　　　　　　　　一、四九七
　　　　　新設分 　　　　　　　　　　　九六三
　　　　　既設増加分　　　　　　　　　　　五三四
　　(三)　其他資金　　　　　　　　　　二、〇一三
　　　　　計　　　　　　　　　　　　　七、三六四
　二、資金調達
　　(一)　株式払込　　　　　　　　　　一、八四〇
　　(二)　社債発行　　　　　　　　　　一、二三〇
　　(三)　金融機関等ヨリノ借入　　　　二、二九四
　　(四)　手持資金留保益金等自己資金　二、〇〇〇
　　　　　　計　　　　　　　　　　　　七、三六四
第十二　本計画達成ノ為採ルベキ諸方策ハ左記ニ依ルモノトス
　(一)　事業資金ニ対スル統制ヲ一段ト強化シ計画的ニ実施スルコト
　(二)　事業資金ノ効率的運用ヲ確保スル為
　　　イ　会社経理統制令等ノ活用ニ依リ企業ノ経理監査ヲ強化スルコト
　　　ロ　高能率工場又ハ事業場ニ生産ヲ集中スル如ク資金ヲ統制スルコト
　(三)　資金ノ調達ハ極力自己資金ニ依ラシメ外部資金ニ依ル場合ハ共同融資投資ヲ積極的ニ活用スルコト
　(四)　産業統制会ト金融組織トノ連絡方法ヲ確立スルコト

　　四　対満支供給資金計画
第十三　昭和十六年度対満支給資金ニ関シテハ
　(一)　対満供給資金ハ日満国際収支計画ニ基ク本邦受取超過分及満支資金収支ニ基ク必要ナル調整資金ヲ補填スルコト
　(二)　対支供給資金ハ日支及満支国際収支計画トノ関連ノ下ニ支那ニ於ケル重要事業資金ハ原則トシテ本邦ヨリ直接供給スルコトノ建前ニ依リ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　　記　　　　　　　　　（単位百万円）
　一、対満供給資金　　　　　一、四〇〇
　　　公社債　　　　　　　　　　九三〇
　　　株式払込金其他　　　　　　四七〇
　二、対支供給資金　　　　　　　四五〇
　　　社債　　　　　　　　　　　三二八
　　　株式払込金其他　　　　　　一二二
　　　　　計　　　　　　　　一、八五〇
　（備考）　右対満供給資金額ト資金総合計画ニ於ケル対満供給資金額ト一致セザルハ後者ガ前者ノ金額ヨリ投資回収及財政支出ニ依ル供給額ヲ差引キタル純投資額ヲ計上セルニ依ル
第十四　本計画達成ノ為採ルベキ諸方策ハ左記ニ依ルモノトス
　(一)　現地資金ノ計画的蓄積ヲ増強シ現地ノ実情ニ即応シテ之ガ統制活用ヲ促進セシメ其ノ財政金融政策ヲ本邦ト一体的ニ運営セシムルコト
　(二)　日満支間相互ノ資金収支ノ季節的調整ニ付本邦ニ於テ特別ナル措置ヲ講ズルコト

　　五　資金蓄積計画
第十五　昭和十六年度資金蓄積計画ハ左ノ如ク画定スルモノトス
　　　　　記　　　　　　　　　（単位百万円）
　一、諸金融機関　　　　　　　一〇、六五八
　　(一)　銀行　　　　　　　　　七、二八四
　　(二)　信託会社　　　　　　　　　四〇〇
　　(三)　無尽会社 　　二〇〇
　　(四)　保険会社　　　　　　　一、二〇〇
　　(五)　産業組合関係　　　　　一、五〇〇
　　(六)　銀行及信託会社積立金　　　　七〇
　　(七)　其他金融機関　　　　　　　　　四
　二、官庁　　　　　　　　　　　三、〇三〇
　　(一)　預金部　　　　　　　　二、五八〇
　　　　　（内、郵便貯金）　　　二、〇一〇
　　(二)　簡易生命保険及郵便年金　　四二〇
　　(三)　官庁共済組合　　　　　　　　三〇
　三、国民直接有価証券投資　　　二、三六〇
　四、外地　　　　　　　　　　　　　五五〇
　　　　　計　　　　　　　　　一六、五九八
第一六　本計画達成ノ為採ルベキ諸方策ハ左記ニ依ルモノトス
　　(一)　切符制度ノ拡張等ニ依リ国民消費ヲ規正シ以テ蓄積ノ増強ニ資スルコト
　　(二)　国民貯蓄組合ヲ極度ニ活用シ貯蓄ノ統制計画的促進ヲ図ルコト
　　(三)　社会保険制度ヲ速カニ拡充シ国民厚生ニ資スルト共ニ購買力吸収ノ有力ナル措置タラシムルコト
　　(四)　貯蓄奨励運動ト生活合理化運動トヲ有機的ニ結合セシムルト共ニ国民生活刷新ノ徹底ヲ期スルコト