remove
powerd by nog twitter

T.Fさんのレビュー


1. 試聴条件等

最初にお断りしておかなければならないのですが、僕はオーディオに関心を持ってから日が浅く、まだ専門的な用語を使って自分の感じたことを伝えることが出来ません。オーディオにお詳しい方には、感想が幼稚で読んでいられないかもしれませんが、お許し下さい。

また、趣味でバイオリンを弾き、弦楽合奏やオーケストラで弾いてきたため、弦楽器(特に高弦)の音には比較的シビア(自分の中ではですが・・・)な一方、他の楽器・分野についてはそれほどきちんと聴くことが出来ないかもしれません。

テストしたヘッドフォン(順不同)

1.Etymotic Research ER-4S
2.STAX Classic II
3.Sennheiser HD600
4.Beyer Dynamic DT931

テストしたヘッドフォンアンプ

CORDA HA-1

試聴条件

1. CDプレーヤー:マランツCD4000、パイオニアポータブルDVDプレーヤー(PDV-10)
2. ヘッドフォンアンプ:CORDA HEADAMP-1(主にBeyer DT931に使用)
3. 試聴に用いたCD
 A.クラシック
 (1)ハイドン 弦楽四重奏曲集  (ヘンシェル カルテット)
 (2)ヘンデル 合奏協奏曲 op.6 (イタリア合奏団)
 (3)ヴェルディ 序曲集(リッカルド・ムーティ指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)
 (4)バッハ イタリア協奏曲(ピアノ アンジェラ・ヒューイット)
 (5)レオンカヴァッロ 道化師(テノール マリオ・デル・モナコ)
 (6)モーツァルト 大ミサ曲ハ短調 (ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ)
 (7)ドニゼッティ ランメルモールのルチア (ソプラノ エディタ・グルベローヴァ)
 (8)ベルリオーズ 幻想交響曲 (シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団)
 B.クラシック以外
 (1)Tribute to Marek & Wacek(POLONIA CD 154)(ピアノ2台にドラムとベースが加わってクラシックの曲をジャズにアレンジしたものを演奏)
 (2)Waltz for Debby(Bill Evance)
 (3)Fresh  (JUDY AND MARY)
 (4)Awake (Dream Theater)
 (5)高橋竹山・ハイサウンド(高橋竹山・竹予)
4. その他
 開放型のヘッドホンは、静かな環境を求めてなるべく深夜に試聴。その際、アルコールを摂取しないように注意した(笑)。


2. ER-4S

2.1. 音質

僕も多くの方と同様、「ヘッドフォン紹介のページ」でこのイヤホンの存在を知ったのですが、周波数特性etc.の専門的な解説は残念ながらよく分からず(すみません!)、「人間の耳にもっとも自然な音を出す」「非常に正確な音」という評価を頼りに購入したのです(イーディオさんから)。その結果ですが、僕は初めてある種の「バイオリンらしい音」をオーディオ装置から聴くことが出来ました。とてもうれしかったのを憶えています。(僕はスピーカーは持っていません。)

それ以前に、STAXのイヤースピーカー(ClassicII)を購入していたので、「違和感なく聴ける」弦楽器の音は経験していたのですが(しかもSTAXの音は美しい!)、ER-4Sはそれをある意味では越えて、実に弦楽器の魅力をよく出してくれるのです。弦楽器の魅力といっても色々あるでしょうが、ER-4Sでは、高音の豊かで透明な響きのほか、ボディーが鳴っている感じがとてもよく分かるのです。同様に美しい高音を聴かせてくれるSTAXと比較した場合には、この、楽器が共鳴・振動している感じの表現が優位にあると感じます。(STAXもオメガIIになると別格なのでしょうが・・・)

(バイオリンのボディー全体がよく振動してだす音は、この楽器の音の一種官能的な喜びの源泉でもあると思うのですが、一般的なヘッドホンでは全く聞こえない〔ないし歪んでしまっている〕のです。)

試聴用のCDについて適当に選んで感想を述べると、次のような感じです。

ヴェルディの序曲をER-4Sで聴くと、他のヘッドホンで聴いていたときのような、何か靄の向こうで演奏しているような感じが全くないためか、コンサートで座席から聴いていると言うよりはむしろ一緒に演奏に加わっているかのような感じがします。緊迫感のあるピアニッシモなども、その雰囲気までよく聞き取れるので、一緒に息を潜めてしまいます(笑)。そしてここでも、各楽器の音がその楽器本来の音で鳴っていると言うことがとても重要です。楽器の「鳴っている感じ」が、オーケストラ全体に渡ってきちんと表現されています。管楽器については経験がないのでバイオリンほどは分かりませんが、自分で演奏する方(ないし実演に触れた経験の深い方)には、よりはっきりと感じられることと思います。

グルベローヴァの「ルチア」も素晴らしい!楽器同様、人の声が、オーディオを通したとき特有の変化をすることなく、実に生々しく聞こえてきます。

Tribute to Marek & Wacekでは、ベースの音もよく聞こえるように思います。もちろん、コンサートや自分たちで演奏しているときに聴くことのできるものからはかなり隔たっていますが、自然な感じで聴き取ることが出来ました。量的な観点からすれば、STAXに劣っていると感じます。(しかし、訓練次第でもっと聴き取れるようになるとのことですので、その点を留保して置かなくてはなりませんね)

また、Dream Theaterも気分良く聴けました。もちろん、そこら辺に転がっているCDラジカセでも、もっと強烈なドラムやベースを聴くことが出来、その快感も良いものですが、ER-4Sで聴く「見通しの良い」ハードロックにも別の喜びがあります。少なくとも、ちょっと知的なアプローチ(と言っていいのか?)をとるDream Theaterには合うような気がします。自分でバンドを組んでいる人には喜ばれる鳴り方かもしれません。

ジュディマリのCDもいいです。YUKIのボーカルの微妙な表情までよく分かります。クラシックにおける感情表現とはまた違った一種の生々しさを聴き取ることができ、時にはっとさせられます(ポップスの場合、コンサートでもここまで聴くことは出来ないのでは?)。バンドもまた「添え物」の域を超えたなかなか凝ったものですので、それぞれの楽器をクリアに聴くことの出来るER-4Sは好適です。

これに対して、高橋竹山のCDでは少し問題があると感じました。もちろん、ここでも三味線らしい音がしっかり出ており、また竹山の技の細部を微視的に聴き取ることも出来るのですが(この時点で素晴らしいことです)、ER-4Sの音の鳴り方に起因するものか、このCDを聴いているととても疲れるのです。特に、バチが胴体に当たる津軽三味線独特の音が耳障りにきこえます。この音は、実際かなり激しいこともあるのですが、実演ではER-4Sで聴くほど耳を刺激しません。津軽三味線にパワーを与える重要な音であると思いますので(津軽三味線は打楽器でもある?)、ちょっと残念です。(もっとも、他のヘッドホンで聴いても実演よりは耳障りに響きます。和楽器の録音再生は難しいのでしょうか?)

2.2. 装着感など

その他、装着方法などについては既に多くの方が指摘されているとおりです。通常の方法ではタッチノイズのせいで実用に適さないとまで言えると思います。耳の上に掛ける方法が必須です。ヴェルディ序曲集やDream Theaterを一枚聴き通すと、かなり耳と頭が疲れます。頭の中を音が占拠してしまうので、BGM用に使うことも僕には難しいです。白いチップは慣れるのにかなり時間が掛かりました(最初のころはかなり痛くて、使用を断念しようかと思ったくらいです)。また、装着の仕方が微妙にずれただけで音が大きく変化しますので、今でもなかなかベストポジションが分かりません。



3. STAX Classic II


3.1. 音質

僕が最初に買った「ちゃんとした」オーディオです。なによりも、聴いていて違和感のない弦楽器の音を求めていたので、家へ持って帰って、それが実現されていることを確認したときは本当にうれしかったです。(試聴はしたのですが、周りの音がうるさすぎてほとんど意味はありませんでした。)

STAXの音は何とも美しいです。ER-4Sの音も美しいと言っていいと思うのですが、それとはまた違った意味で実に美麗です。

たとえば、モーツァルトの大ミサ曲などをSTAXで聴くと、本当にとろけてしまいそうな美音を聴くことが出来ます。弦楽パートの響きの美しさ、人の声の透明感がたまりません。低音域の豊かさも一番だと思います。若干軽めですが、心地よい鳴り方です。さらに、音の鳴っている空間が他のヘッドフォンよりも広く感じます。

また、高橋竹山の津軽三味線をSTAXで聴くと、撥が胴に当たる音が若干聴きやすくなります(しかし、ぼやけてくるわけではないです)。ER-4Sほど微妙なところが聞こえるというわけではありませんが、ER-4SでこのCDを聴くとかなり息苦しく耳障りな感じもするので、CD一枚通して聴くなら、開放感があり素晴らしい音がするSTAXが良いです。

しかし、Dream Theaterとなるとどうでしょうか?低音はER-4Sより出ているのですが、音質がちょっとハードロックから離れすぎるという気もします。洗練されすぎた軽い感じです。これはこれで面白いと思うのですが、一般受けはしそうにありません。

STAXのイヤースピーカーは、実際の音をそのまま出すと言うよりは、生の楽器や声について、こうあって欲しいという音を聞かせようとしていると、僕は感じます。しかし、基本も出来ていないのに、ごてごてと飾り立てているわけでは決してないです。素肌の綺麗な女性が、薄く上品なお化粧をしていると、素顔の時とは違ったドキッとするほどの美しさを見せてくれます。STAXはそんなヘッドフォンです。僕は大好きです。

3.2. 装着感など

側圧が緩いので、長時間装着していても頭が痛くなったりはしません。しかし、結構な重さがあるため、何となく不安定な感じはします。顔に当たる部分が合成皮革なのもマイナスです。あまり気持ちよくはないです。



4. ベイヤー DT931


4.1. 音質

このヘッドホンには悩まされました。ちょっと毛色の違ったものを、と思って購入したのですが、PDV−10につないで聴いたときの音にはひどく落胆しました。個性的であるという評判は聞いていたので、ある程度覚悟はしていたのですが、標準的な音からの偏差は予想を遙かに超えていたのです。例えばバイオリンの音は、高音の一部が相当強調されており、聴いていたくないほどでした。

また、低音にも問題があり、オーケストラなど聴いていても低弦があまり聞こえてこないのです。注意すれば聞こえるのですが、なんだか音量がない上に、もたもたした感じがしました。率直に言ってイライラさせられる感じでした。(但し、このヘッドフォンはCDプレーヤーやアンプによって実に大きく性格を変化させるようです〔AIRYさんが色々なアンプでテストされています〕。PDV-10との相性が特に悪いのかもしれません。)

私にとっては結構なお金を費やして購入したので、あちこち探し回ってでも試聴しなかったことが悔やまれ、とても暗い気持ちになりました。(もっとも、丸一日ほどCDを鳴らしっぱなしにして置いたところ、耳障りな高音はだいぶ和らぎました。)

暗い気持ちのままなんとなくネットをさまよっていると、HeadWizeの掲示板にDT931に関するとても興味深い投稿があるのを発見しました。Jan Meier氏によるもので、「DT931の音は、確かに高域の刺激的な音など問題があると思う。しかし、CORDAの120Ωのジャックにつないだとき、その音は劇的に変化し、私はその音をHD600よりも素晴らしいものだと思う。」といったようなものでした。

そこで、このヘッドフォンを使えるようにするにはもうこの方法しかないと思い、CORDA(完成品)の購入をヘッドフォンショップAIRYさんにお願いしたのです。そして、DT931の購入後半月ほどして入手しました。

早速120Ωのジャックにつないで聴いてみました。「思わず踊り出してしまった」というJanさんほどではありませんが、確かに、不快だった高音の刺激成分が見事に姿を消していて、しかも全体としてぼやけた感じにはなっていませんでした。低域は高域ほど劇的に変化したとは感じないのですが、もたついたり聞こえなかったりということはなくなりました(そもそも、高域にあまりにもイライラさせられたため、他の音域もひどいものに聞こえていた疑いがあります。)

バイオリンの音は、若干キンキンしたところが残っていて、その意味では本物の音からは遠いのですが、CORDAの持つ硬質で透明な音質と相まって、全体にメリハリがあり、ジャズを聴くならHD600より良い場合が多いのではないかと思いました。ようやく「使い物になった」ばかりか、ソースによって使い分けられるヘッドフォンを手に入れることが出来、とてもうれしいです。また、CORDAのクロスフィード・プロセッサは3段階に切り替えることが出来、効果が大変わかりやすいので、その点からもとても面白いです。

4.2. 装着感など

装着感はなかなか良いです。肌触りの良い良質の布が使われているため、STAXを使っているときに感じるような不快感はありません。ただ、長時間聴くにはちょっと側圧が強いと感じます。これで、HD600のように側圧を減らすことが出来、もう少し軽くなれば言うことはないと思います。

また、イヤーカップとヘッドバンドの間に回転機構(?)が付いていて、頭の形に添うように自分で動かせるのも良いです。



5. ゼンハイザー HD600


5.1. 音質

音楽鑑賞において不可欠な音がバランス良くきちんと出ていて、どのような音楽を聴いても違和感が無いという点では、僕の持っているヘッドフォンの中では一番だと思います。この「違和感なく音楽を鑑賞できる」というのは、当たり前のようでいてなかなかそれが出来るヘッドフォンはないようです。たいていは、こんな音がするなら聴かない方がましだというような音しか出ません。特にクラシック音楽鑑賞の場合には。

もう少し具体的な特徴としては、高音の出方と音の透明感といったものが、ER-4S、STAXと比べると今ひとつと感じます。そのせいか、新鮮できらめくような音は聞くことが出来ません(あくまでも他の二つとの比較ですが)。低音は良く出ていますが、輪郭はER-4Sの方がはっきりしていると感じました。中音域はとても滑らかです。録音との相性がはまると、STAXとはまた違った意味で実演より美しいのではないかという音を聴くことが出来ます。ただ、耳障りが良く長時間聴くには具合がいいのですが、滑らかすぎて、松脂が足りないか古くなってしまった毛を使った弓で弾いているような(ちょっとオーバーですが)感じがすることがありました。

そして、全体の響きとしては、ER-4Sほど分析的ではありません。実際のコンサートで聞く音には、HD600のほうが近いような気がします。例えばヴェルディの序曲を聴くと、ER-4Sの時と違って客席で聴いている感じに近いです。また、ピアノを聴くのに適していると感じました。どういう訳かピアノ(ソロ)のCDは残響過多や若干薄味の録音のものが多く(僕の持っているものだけ?)、ER-4SやSTAXで聴くとちょっと違和感を感じることがあるのですが、そんなときHD600ではちょうどいい具合にきこえます。ただピアノでも、ペダリングの微妙な表情などを味わいたいときはER-4Sです。

STAXとの比較としては、ER-4Sよりコンサートの響きに近いという点では共通するのですが、STAXのような「上品なお化粧」はしていないので、より普通な感じです。より硬質で力強いと言っても良いかもしれません。

ただ、高音の伸びと透明感の今ひとつの欠如のせいか、録音によってはバイオリンの音が心地よいものではなくなってしまうことがあります。弦楽器の再生は本当に難しいようです(自分の貧弱なCDプレーヤー等を棚において言えば・・・ですね)。もっとも、高橋竹山の津軽三味線を聴くには良いようです。鮮烈さは若干失われますが、ER-4Sで聴いたときのような辛さがありません。

5.2. 装着感など

初期状態ではちょっと側圧が強いですが、それを調節すれば装着感は4種類の中で一番です(最初気付かなかったのですが、イヤーカップを前後に少し回転させることが出来ます。頭にあわせやすくて便利です。)。これ以上オープンに出来ないというくらいの造りなので、音漏れ・音の侵入は一番すごいです。せっかくの微少音再生能力を堪能するには、かなり静かな環境を必要とします。

デザインについては、僕はそれほど好きではありません。苦手なヒョウ柄をちょっと思い出させるので(「あゆデザインの携帯」などは、あまり見ていたくないほどなのです)(笑)。



6. CORDA HA-1
(管理人注:T.FさんのHA-1のレビューは、本来ヘッドホンショップ「AIRY」さんのサイトに掲載予定のものですが、読者の便を考慮し掲載させて頂いています)

6.1. 製品について

これは最近発売されたヘッドフォンアンプです。ドイツにお住まいの Jan Meier氏が設計されました。氏の投稿はHeadWizeでよく見かけます。とにかく忠実な音づくりと、好みに応じて3段階に変化させられるクロスフィード・プロセッサ、0Ωと120Ωという二つのジャックを持つことが特徴です。キットでの販売を主とするようですが、組み立てもお願いすることが出来ます。

製品名 CORDAの由来ですが、イタリア語で"music strings"という意味だそうです。また、音節を分解してひっくり返し、da cor とすると、"from the heart" という意味になるとのことです。

また、デザインについては好みが分かれる個性的なものですが、真ん中に大きく入っているロゴについては、

My Logo is a number of vibrating strings. If you look properly at its centre you find a number of hearts in a "four-leaved clover" arrangement.

とのことです(どちらも、HeadWizeの掲示板より)。Jan さんは結構ロマンチストなんですね(*^_^*)

この製品については、まだ発売されて間もないためレビューがほとんどありません。HeadWizeの掲示板に3つほど、ヘッドフォンショップAIRYさんのレビュー、そして「ヘッドフォン紹介のページ」で、CORDAと同じと思われるプロセッサの音が、作者様自作のアンプとして紹介されているくらいです。(2001年4月5日現在)

日本国内では、ヘッドフォンショップAIRYさんだけが取り扱っておられると思います(2001年4月5日現在)。基本はキットモデルのようですが、49500円で完成品を購入することも出来ます。




6.2. 音質


音についての感想を簡潔にいうとすれば、正確・硬質・清浄という感じでしょうか。HeadWizeの掲示板で"clean and quiet"という評価をされ、AIRYさんは「すっきりと透明なたたずまい」と表現しておられましたが、どちらもなるほどと思いました。特に、中・低域のキレと明晰さが印象的です。

それと同時に、STAXやPDV-10で、もしかしたら実演以上ではないかと思われる華やかな高域の響きに慣らされてしまった僕の耳には、高域がいささか辛口に聞こえたのも確かです。CORDAから聞こえる音が本来CDに入っている音なのかもしれませんが、その質の良さに感心しつつも、STAXの高域が恋しくなるのも確かです。また、HeadWizeでは「airy, open といった要素に若干欠けるのではないか?」という評価もありましたが(もっとも "The difference was subtle."となっています )、clean and quietの裏面として、そのような傾向を僕も少し感じます。

もう少し細かく見てゆくと、高域ですが、最初に述べた音の印象のままどこまでも伸びて行くという感じでした(僕の持っているCDの範囲ですが)。HeadWizeの掲示板でKurtWさんが測定器を使って計測されていますが、その結果も実にフラットにどこまでも伸びているようです。(この計測結果と耳で聞いたときの印象には関連性があるのでしょうか。よく分かっていません。)

ただ、やはり「素っ気なく」感じることも確かで、もう少し崩れても良いから、バイオリンなどの「きらめき」感を演出して欲しいと感じます。(注)

中域(だいたい、セカンドバイオリンからチェロあたりと考えて良いのでしょうか?)は、PDV-10と比べてぐっと明瞭に聞こえるようになりました。音質はやはりここでも同じです。ただ、もう少し色気が欲しいと思った高域とは違って、この音域ではCORDAの質の高さが良く出ていると感じます。例えていうと、筋肉質で、キレの良い弾むような感じが良く表現されます。

低域は、良く出ていると感じます。僕は主にコントラバス(とチェロの一部)の音でこの音域を判断しているのですが(ですから、この点が間違っていたらコントラバスの聞こえ方として読んでください)、低域についてはその量もさることながら、何の音がどのような音色で鳴っているか聴き取りやすいかどうかがより重要であると思います。その観点からすると、CORDAでは良く聴き取ることが出来て気分が良いです(これを「低域の分解能が高い」というのでしょうか?)。量については、クロスフィード・プロセッサをOFFにしているときにはこれ以上出たらバランスを崩すのではないでしょうか。

そして、クロスフィード・プロセッサですが、CORDAでは3段階に切り替えられることもあって、その変化がすぐに分かります。色々と変化させてみるのはとても面白いです。効果としては、真横から聞こえていた音が少しずつ前に出てきます(当たり前か・・・)。そして、確かにチェロやコントラバスの音が小さくなったと感じます。

もっとも、「小さくなった」といっても、果たしてそれが欠点なのかという点については僕にはまだ結論が出せません。「片方の耳からだけBASSが聞こえるというのはとても不自然なことで、不自然なことはより目立つのだ」という意見にもなるほどと思うところがあるのです。

他の方のレビューでは、HeadRoomの"Maxed out Home"($999)と比較されたりしていますので、他のヘッドフォンアンプを聴いたことのない僕には分かりませんが、数あるアンプの中でも相当上質のものであるようです。僕の感じとしてはかなり「玄人好み」であると思いますので、オーディオに造詣の深い方々なら、その良さがもっと分かるかもしれません。

(注)正直なことを言えば、今の段階では、CORDAによる弦楽器の音になんだか納得がいっていません。しかし、HeadWizeの掲示板でもヘッドフォンショップAIRYさんの試聴でも僕のような感想は出ていないので、CDプレーヤー等僕の環境に何か問題があるようです。そのような状況を前提としてのレビューになっています。



「読者の方によるレビュー」一覧に戻る
HOME