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酒井さんのレビュー
− ヘッドフォンアンプ グラストーン「HPA−20」の試聴レポート −


*試聴機材

sakai.jpg (12243 バイト)
写真: 上が「HPA−20」、下は同社のDAコンバーターです。CD900STと比べるとわかりますが、ヘッドフォンアンプとしてはかなり大型です。

 ・ヘッドフォンアンプ グラストーン「HPA−20」
 ・ヘッドフォン:   SONYエンタテイメント CD900ST
            オーディオテクニカ ATH-W11R




−購入までのいきさつ−


グラストーン(http://www.glasstone.co.jp/)というメーカーは、あまり広告も見かけないため、知らない人が多いかもしれません。業務用の特注機器が主な製品で、コンシューマ製品は数が少ないようです。私がこのメーカーを知ったのは、2年ほど前にオーディオ専門誌に掲載されていたDAコンバーターの記事を読んでデモ機を借り、購入したのが最初でした。
このヘッドフォンアンプは、同社のホームページで試作品として紹介されていたものを御厚意でお借りしたところ気に入ってしまい、正式発売前に予約したといういきさつがあります。



−長所−

一般的なヘッドフォンアンプとは次元が異なり、手持ちのヘッドフォンがまるで別物に変わってしまう感じです。これまでSTAXのコンデンサ型などを愛用していたのですが、分解能は高いものの、逆に低域の力強さはダイナミック型に軍配が上がると感じていました。しかしこのヘッドフォンアンプで鳴らすと、コンデンサ型に匹敵する分解能を感じます。これに低域の厚みが加わり、私にとってはまさに理想的なバランスで鳴ってくれます。
また、ヘッドフォンアンプが完全にヘッドフォンを制御している感じで、ヘッドフォンの良さが活かされ、欠点が薄れるような印象を受けます。
例えばオーディオテクニカのATH-W11Rでは、これまでだるいと感じていた低域がビシっと引き締まり、低域が出過ぎるという欠点がさほど気にならなくなりました。
ソニーのCD900STでは、楽器が多いソースでは音と音が混ざり合って濁るような感じがあったのですが、音の分離が良くなり、個々の楽器が明確で聞き易くなります。
高域の分解能は、コンデンサ型とは「質」が微妙に異なるものの、分解能のレベルは同等と言えます。
むしろ、ボーカルで声を張り上げるような箇所では、コンデンサ型では高域に独特のクセを感じる気がするのですが、HPA−20+ダイナミック型の組み合わせでは、より自然な声に感じます。
低域は、ビシッとした締まりの良さがとても快感です。クラシックではあまり目立ちませんが、J−POPを聴くと、ドラムスの歯切れの良さが際だちます。これだけ締まりの良い低音は、スピーカで出そうとすると部屋のチューニングもそれなりに必要で、簡単ではないように思えます。



−短所−

やはり値段が高価(22万円)なことでしょう。
また見方によっては、ヘッドフォンの個性が薄れてしまうというのも欠点かもしれません。
ドライブ能力があると言うのか、アンプがヘッドフォンのクセをうち消しているような感じです。
ヘッドフォンのクセをあえて残したい場合には、もっとドライブ能力を押さえたアンプが良いのかもしれません。
なお、私が所有するダイナミック型ヘッドフォンは、遮音性のため密閉型を使用していますが、オープン型であるSTAXのコンデンサ型と比較すると、音の広がり感が異なります。
もしコンデンサ型の音に近づけたい場合は、オープン型のヘッドフォンを試してみると良いかもしれません。
その他、音質とは直接関係ありませんが、シャーシの細かい加工に荒い箇所がありました。
もう少し外観の仕上げが丁寧だと文句無しです。この辺は業務機器を製作しているメーカーなので外装よりも中身を重視するという姿勢なのかもしれません。



−まとめ−

ヘッドフォンは定在波など部屋の影響を受けず、また、いつでも好きな時間に思う存分音楽を楽しめる機器です。ある意味スピーカーよりも優れたオーディオ装置といっても良いでしょう。
しかしヘッドフォンの本当の性能を引き出すためには、やはり本格的なヘッドフォンアンプが必要なのだとあらためて実感しました。
秋葉原などでヘッドフォンを試聴できる店がいくつかありますが、どこも安物のアンプ(すみません)で、ただ音が出ているだけという感じがあり、これではきちんとヘッドフォンを選ぶことができません。
できるならお店の方にも、ヘッドフォンアンプの重要性を認識して欲しいと思います。


参考リンク(注:作者挿入)

有限会社グラストーン
 →HPA-20の紹介ページ


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