Balinさんのレビュー
自作ヘッドフォンアンプ2機種
2000/05/21 Balin
・このサイトを読んだことで刺激を受け,この半年,ヘッドフォンへの関心が高まって,Etymotic ER-4S,Sennheiser HD580を購入し,アンプの自作までしてしまいました。
・ヘッドフォンについては,どちらも高く評価します。ER-4Sは良いのですが,音も装着感もちょっとスパルタンなので満足度★★★★,HD580は側圧が強いのが唯一惜しいですが,199ドルでこの美音,★★★★★です。これまで使ってきたスタックスのSR-001は,気分転換用になってしまいました。
・ヘッドフォン専用アンプについては,HeadRoomのシリーズを除いてほとんど製品が無いのですから当然ですが,ここでの話題が少ないので,予想以上の結果が得られた自作2機種の報告をします。
どちらもお奨めと思っています。
■CMOYアンプ 満足度★★★(音質★★☆,自作難度★★)
・HeadWize-Projectに作り方が掲載されている,Chu Moy氏設計のアンプが通称CMOYです。
・角型9V電池を,抵抗で分圧した±2電源。増幅素子はバーブラウン社のオペレーション・アンプ OPA132だけ(入手困難のため,私は若松通商にあったオーディオ用兄弟分,OPA134を使用)という極限のシンプル回路で,ポケットサイズの携帯型アンプです。
・携帯CDPとの組み合わせを前提とした合理的な割り切り設計で,例えばオリジナルではボリュームすらなく,送り出し側の出力ボリューム任せです。
・簡単な回路ながら意外に音が良く,変な音はしません。携帯CDPや,下手な据え置きCDPやアンプのヘッドフォン出力よりは上という感じです。シビアに言えば不足もありますが,普通に聴く分には特に文句は無く,くせのない素直な音で十分使えます。ER-4S,HD580も問題なくドライブします。
・据え置き型CDPにつないだ方が音は良いのですが,そうなると次の窪田アンプにやはりかなわない。むしろ機能を切りつめた超小型のままで,携帯CDPとコンビを組み,そこそこの音質で聴くというのが持ち味でしょうね。
・製作はゲルマニウム・ラジオ+α程度で簡単。コストも国内版CD1枚程度と格安。サブ・アンプとして,あるいはハンダ付け練習用として,お奨めです。ミント・キャンディの小さな長方形の缶をケースにしたら,おもちゃのようでなかなかおしゃれですよ。
■窪田アンプ 満足度★★★★★(音質★★★★★,自作難度★★★★)
・「MJ無線と実験」誌99年3月号掲載の窪田登司氏設計「オールFETプリメイン・アンプ」のプリアンプ部分です。「ヘッドフォンアンプとしても立派に対応する」とされていたので作って,良い
結果でした。こちらはAC電源の据え置き型です。(プリアンプならどれでもヘッドフォンアンプになるわけではありません。出力が低インピーダンスで,十分な電流になっていることが条件ですので,念のため。)
・私は,オリジナル設計から若干変えて,自作アッティネータを使い,電源トランス2個の左右独立電源としました。音質追求のため,これでもかの物量投入です。このため,薄型ながら幅430mmのフルサイズ・ケースになりました。CMOYアンプと並べると,大小の差は圧倒的です。ちなみに体積比100倍,コスト比30倍でした。
・設計者からプリント基板の頒布を受けることができるので,一番大変な基板部分が半ばキットのように割に簡単にできます。それでも初心者なもので,部品集め,不明点のお勉強,ケースの加工などに時間をとられ,製作には全部で一ヶ月半かかりました。
・音質は最上の部類と思います。fレンジ,Dレンジ,情報量,過渡特性,SN,・・・,これらは言わずもがなの水準です。何より音色がリアルで美しく,いつのまにか演奏に聞き入ってしまいます。音楽を聴く道具として大満足。作って良かった!
■自作へのガイド
・いかがですか。ちょっとその気になりました?
・ヘッドフォンアンプの製作記事は,技術誌「ラジオ技術」「MJ無線と実験」でもごく少数です。その中では,窪田登司氏が「MJ」誌に何年かおきに発表していて,最も多いようです。「MJ」誌96年11月号の「超低歪みヘッドフォンアンプ」(同誌98年12月号に補足説明あり)が,左右独立電源の採用など音質追求とともに,作り易さにも配慮してあり,私の作ったものより良いかもし
れません。窪田氏の設計に限定せず,図書館でバックナンバーをあたって,気に入った設計を探してみてはいかがでしょうか。
・CMOYの項で述べた,HeadWizeのProjectには,半導体,真空管に分けて,ヘッドフォンアンプの製作例が多く掲載されており,とても充実しています。ただ,半導体などの部品が国内で入手しにくいことがあります。
・初めての自作は難しいものですが,私のような初心者にもできました。雑誌にたくさんある製作記事,各種ホームページ,Niftyのフォーラムなどを読むうちに,少しずつわかってくるものです。
・もちろん大変さはあります。電気工作の知識,部品の知識がいるし,テスターやハンダごてなど工具も必要になります。でも,それも含めてホビーとしてなかなかに面白い領域だと思いました。
・他に自作の情報をお持ちの方は,ぜひ披露してください。