逆転裁判 2001 CAPCOM |
とにかく、面白かったです。感想はこの一言に尽きますね。魅力的なキャラクター、魅力的な物語、そして何より素晴らしいゲーム性。ゲームとして本当に楽しかったです。感服。
新作として発表された時から目はつけていました。だって「逆転裁判」ですよ。ジャンルは法廷バトルですよ!きっと、我々が普段関わることのない法廷にて気持ちのいい論理バトルを繰り広げる事ができるんじゃないかと期待するですよ!ここで普通のその辺のゲームなら発売時に見事に肩を透かしてくれるのですが、そこはカプコン。期待通り、っていうかそれ以上に楽しい作品に仕上がっています!
・冤罪を阻止せよ!
このゲームの目的はズバリ裁判に勝つこと。新米弁護士「成歩堂龍一」となり、助手の「綾里真宵」(霊媒師の修行中)とともに被告人である依頼人を無罪に導きましょう。
物語はオムニバスになっていて、一つの事件をクリアすると新しい物語が追加されるようになっています。
基本的にゲームは2つのパートに分かれています。まず「探偵パート」で裁判を有利に進めるための材料を集めます。このパートは懐かしい「アドベンチャーゲーム」を踏襲していて、「調べる」「話す」「移動」などを駆使して証拠や重要証言などを集めます。
そして本作の目玉「法廷パート」。主人公である弁護側、証言をする証人、証人を助ける検察側、総合判断を下す裁判官の4すくみでバトルが繰り広げられます。証人の証言の矛盾を指摘し、検察側の突っ込みをヒラリとかわしながら無罪を勝ち取りましょう。
アドベンチャーを踏襲した探偵パート | 本作の目玉「法廷パート」。楽しい! |
被告人は状況としてかなり悪い状態で始まります。証人は被告人にとって有罪が決定的な証言をします(目撃証言など)。証人が真犯人である場合もあります(第1話では最初にその事実がわかるようになっています。ネタバレではないと思いますので、安心して下さい)。彼らはそういう色々な事情からたいがい嘘をついているので、彼らの嘘をあばき証言を無効にする事が無罪への道なのです。
証人の証言に対しては「ゆさぶる」や「つきつける(証拠品を)」コマンドを使用。おかしいと思ったところでゆさぶりをかけ、さらに深い証言を導き出し、証言と証拠品が食い違う!と思ったところで「つきつける」!間違った指摘にはペナルティーが与えられ、一定数に達すると被告人は有罪となりゲームオーバーです。プレイヤーの推理力と論理的思考がモノをいう瞬間!
・気持ちいい!!
とてつもなく面白い「法廷パート」。ここがあまりにも面白いのは、とにかく気持ちいい要素に溢れているからでしょう。
「気持ちいい要素1・自分に酔えて気持ちいい」
ゲームは自分ができないことを体験させてくれる夢のメディアです。弁護士となって法廷で争うということに酔えないはずはありません。論理的矛盾などを指摘する自分がカッコよくて気持ちいいです。裁判をゲームにするという目の付け所に感服!
操作系にも気が遣われていて、Lボタンで「まった!(ゆさぶり)」Rボタンで「異議あり!(証拠つきつけ)」の掛け声をかけられます。いちいちウィンドウを開くことなく、直感的に実行できるところがなんとも快感です(Rボタンの場合それで証拠を選ぶ画面を出し、選択した瞬間に掛け声)。
「気持ちいい要素2・仕草がカッコよくて気持ちいい」
法廷にて、ズバっと指摘する時のあのポーズ!パッケージデザインにもなっていますが、指をビシっと指すあのポーズがたまりません。タイミングも気を使われていて、ここだ!という時にちゃんとやってくれるので、プレイヤーと成歩堂のシンクロ率はヒートアップ!思わず「どうだ!」と言いたくなります。絵の構図も立体感で迫力を出していてGOOD!
ビシッと指摘!カッコイイ!
そしてもう一つカッコイイのは「机を叩く」仕草です。法廷での審議中、成歩堂や、対する御剣検事はバンバン机を叩きますが、これがカッコイイ!会話の強調部分でバンっと。う〜ん、なんて言ったらいいのか、とにかく気持ちいいくらいカッコイイんですよ!音もリアルですので、是非ヘッドホンでプレイしましょう(マジで)!
「気持ちいい要素3・勧善懲悪が気持ちいい」
登場キャラはみな魅力的ですが、性格がわかりやすく描かれているのも特筆すべき点。例えば、成歩堂のライバルであり敵とも言うべき検事「御剣怜侍」は、キザで冷酷、有罪を勝ち取るためには手段を選ばないエリート検事です。また証人として出てくるヤツらは一癖もふた癖もあり、あからさまに怪しいやつもいます。実際悪人である場合もあります。そんなやつらを法廷でぎゃふんと言わせる…、これが快感でなくてなんでしょうか。水戸黄門がなぜ面白いか、そういう面白さのツボをうまくついていて素晴らしいですね。
以上のように、法廷でのバトルが面白いのはこれだけの気持ちいい要素にあふれているからです。会話のテンポも軽快だし、高速スクロールやカットインなどの演出が効果的に使われているので、まるで動くマンガ(アニメとは違う)を見ているようでさらに気持ちいいです。
それともうひとつ、タイトルにもなっているように、基本的な流れとして「逆転」を目指すことになります。初めの状況はかなり悪いものです。それを自分の手で盛り返していく。これがとてつもなく気持ちいいです。
法廷でのバトルが面白すぎるために、調査パートも力が入ります。法廷で戦う材料を自分で見つけていく楽しみ。物語も面白く、気軽にドンドン進められます。
華麗に異議を唱える御剣。いちいちカッコイイ |
・ディフォルメ裁判
自分が弁護士になって法廷に立てると言っても、実際の「裁判」がこんなに楽しくテンポのいいものとはもちろん思いません。ほんとうまくゲーム化してますよねえ。「電車でGO!」の時のように、なりきり気分をたのし〜〜く味あわせてくれます。絶妙なデフォルメによってエンターティメント化する、ゲーム作りがよくわかった職人の仕事です。
しかも裁判時の成歩堂の指摘や言動は、なかなかプレイヤーの思考とうまくシンクロするように気を使われていて、言いたいことを言ってくれる感じです。シンクロ率アップ!こういう気遣いが、成歩堂のキャラを立てつつプレーヤーのナリキリ度もアップさせてくれます。ウマイなぁ。
ゲームとしての面白さも最高ながら物語も面白く、後半の盛り上がりはドキドキもの。最後の最後まで全く手抜きのない作りで、終わった時は感無量でした。
かわいい助手、真宵ちゃん(左)と、個性的な証人達(右) うまくコミック化していて、ギャグも面白いです。 真宵ちゃんは不敵な表情で面白いことを言う時が最高! |
・気軽に楽しく!
殺人事件や裁判を扱ったゲームとはいえ、その世界観は緊張感のないコミック的なもの。非常に入りやすく、わかりやすく、ゲームのテンポもいいので構えることなく気楽にプレイできます。そういう意味ですごく携帯ゲームに合った作りになっています。どこでもいつでもセーブしてゲームを中断でき、サッとしおりを挟んで本を閉じるようにやめられます。まさにマンガを読む感覚で楽しめる大傑作!
ボリュームのなさが結構指摘されていますが、テンションを維持する為にも程よいんじゃないでしょうか。特徴的なシステムは連続することで「飽き」を生むこともあるので。ただし、あの魅力的なキャラクター達ともっともっと遊びたいという気持ちが大きく生まれるので、半年〜1年に1回くらいシリーズで出たら面白いでしょうね。あ、安易なTVドラマ化などは決してしないように。
演出過剰、ゲーム性はその次という風潮の現在、本当の意味でのゲームの楽しさを見せてくれる本作。大作はいらない、小粒でも本作のような楽しい「ゲーム」ばかりならこんな素敵な事はないんですが。明らかに現在の勘違いゲーム業界に「異議」を申し立てた痛快作です。
逆転裁判
ゲームボーイアドバンス
カプコン
2001年10月12日発売 4800円