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Kanon
2000 NECインターチャネル
・そんなにいいものなのか
 HEDはいわゆる「ギャルゲー」はやらないんですが(キッパリ)。いや、偏見があるとかそういうわけじゃなくて、なんとなく食指が動かないというか、やる気がおきません。
 しかし、この「Kanon」は「めちゃ泣ける!」「超感動作!」「やらなきゃ死ぬ」等、世間のどっち向いても大絶賛を受けているので、涙モロイくせに泣きモノ好きなHEDは「そこまで言われたら買ってやってもいいが、これで1ミリも泣けなかったらコキおろしてやる」とばかりに初ギャルゲー購入(スーチーパイは除く)を果たしました。
 はっきり言ってナメてました。制作者の皆さんゴメンなさい。こんなに泣ける作品は他には知りません。今まで生きてきた中で一番泣きました。
  ・「雪の街」「夕焼け」「夢」「約束」・・
 このゲームはいわゆるサウンドノベル形式(厳密に言うと違うかもしれませんが)のアドベンチャーゲームです。
 プレイヤーである主人公が7年ぶりに帰った雪降る街で5人の少女に出会い(再会し)、ゲームの進め方によってそれぞれのヒロインの物語に入って行くというシステムです。つまり全部で5本のストーリーがあるわけです。
 だらだら続く日常(の描写)に初めは正直言ってたるかったです。偏見(あるんじゃん)も手伝って「やっぱ早まったかな?」とマジ思いました。実はそれが巧妙な罠だったのです。
・絶妙な演出!?
もう一つの日常に心地よさを感じたらツボです
 だんだんとそのほのぼのした「日常」が心地よくなってきます。そして急展開へ…。その時、だらだらと続いていたあの「日常」が、とてもかけがえのないものだと気付く主人公の心情(これは物語のテーマでもあります)に妙にシンクロしている自分がいます。この辺はマジで「うまい!」と思いました。その感情移入が「泣き」の重要な要素になって行きます。もう1つの日常がプレイヤーの中に生まれ、崩壊します。
 「うぐぅ〜」や「うにゅ〜」を連呼する、おめめの大きなアニメチックキャラ達には「萌え」という気持ちは生まれませんが、ゲーム(日常)を進めるごとに情が移っていきます。マジです。気持ちの内面が読みやすく描かれた彼女達の行動は人間らしさがにじみ出ていて「カワイイ」というより「いとおし」くなります。モニターに向かってニヤつくというより、微笑ましいという感じです(注・外見上は同じ)。そんな彼女たちとの何気ない日常のやりとりが「泣き」の引き金になるという展開は脱帽です。
 主人公が割と淡々としてるのも良いです。恋愛の要素も少ないし。恋愛が入ると物語が一人歩きしてしまうようで嫌です。全くなくても良かったくらいですが、この作品では、あっても高校生(中学生?)の幼い感情なので嫌味はありません。ただ、この物語は異性間の交流というよりも「人と人との交流」として見るべきだと思います。気持ちが暖かくなる人間臭さが、気の使われたセリフから滲み出て心地良いです。
 決して物語が前代未聞の斬新さを持っているわけじゃありません。むしろある意味お決まりとも言えます。しかし、上のような演出によって、プレイヤーを巧妙に物語に引き込んで行きます。
・ゲームとしては…?
 ゲーム的には時折現れる選択肢を選ぶだけで、後は見てるだけというものですが、じゃあゲームじゃなくてもいいか、というとそうでもないと思います。だらだらと日常を体験させる演出会話のペースを支配できるテンポ程よくある想像の余地などはゲームでしか味わえません。映画や小説にしたらきっと魅力半減だと思います(それでも泣けるだろうけど)。ゲームというメディアの一つの使い方だと思います。
・ちょっと残念だったのは?
 このゲームはパソコンからの移植です。PC版は18禁で(全年齢版もあり)、Hなシーンがあります。HED的にはHシーンは全く不必要だと思います。恋愛の描写すら不完全なのになぜそういうシーンが必要なのか謎ですね。
 またDC版には声が入ったといいますが、はっきり言って声があった方がいいと思います。演技(というかキャラの喋り)で泣ける場面もあるので。
 グラフィックのパターンが少ないのはちょっと残念。だいたい決まった絵で話が進んで行く感じです。まぁ、想像させるという狙いがあるのかもしれませんが(それはそれで成功しています)。もうちょっと多くてもいいかな。でも要所要所で入る一枚絵CGは超美麗!是非VGAでやりましょう。
 上でも触れましたが、恋愛感情はこのゲームには不必要な気もします。「人と人とのふれあい」に特化した方がスマートだったような気がしました。
・お勧めプレイ順
 5人のストーリーはもちろん全く別の物語なのですが、感動度というか、「泣ける度」順に並べてみるので、未プレイの人達はこの順にプレイする事を勧めます。
水瀬名雪 → 川澄舞 → 美坂栞 → 沢渡真琴 → 月宮あゆ
あまりにも泣ける「真琴編」。登場シーンも印象的
 メインヒロインであるはずの「名雪」のストーリーはちょっといまいちです。どうした事でしょうか。なんとなくベタ過ぎてつまりません。それでもグッとはきますが。最初の軽いジャブとしてプレイしましょう。
 やはり究極は「真琴」「あゆ」の2作!個人的には真琴の話が(あゆと僅差で)一番泣けました〜!後半の一気にたたみかけるような「泣き」の展開がずるいですよ〜。
 そして「あゆ」!制作者が「彼女の物語が書きたくてこの作品を作った」というくらいのメインストーリーです。「Kanon」の中心的物語であり、泣き度も真琴編と張るので、集大成的な意味で最後にじっくりプレイして欲しいです。
 どのストーリーもプレイヤーに想像の余地を残す、いい意味で後味の悪い終わり方が気持ちいいです。そういう意味では「栞」の物語が印象的でした。
・見た目で損!?
 あまり泣ける泣ける言って変に先入観を与えてもいけませんが、とにかく優秀な感動作です。ゲームというメディア上の「物語」としてもっと注目されて欲しいなぁと思います。ギャルゲーチックな見た目(実際ギャルゲーなんだけど)から、なんとなく引いてしまう人も多いと思いますが(自分もそうでした)、この作品に触れないのは人生において少なからず損失です。好き好きはあるでしょうが、断言します。
 HEDは「Kanon」グッズまで買ってしまいました(うぐぅ〜)。でも、キャラ萌えとかそういうのではなく、思い出のアルバムを覗き見るような、なんとなく側に置きたい、そんな感覚を持たせる超名作です。
ドリームキャスト
NECインターチャネル
2000年9月14日発売 6800円

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