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CHELNOV
1988 DATA EAST
・アーケード版「チェルノブ」
 「原発」「円高」「ドル安」という言葉から連想するものは…、もちろんデータイーストの怪作「チェルノブ」ですよね!ゲームとしては割と基本的な横スクロールアクションですが、異常なゲームを作らせたら日本一のデコ(データイースト)だけに、ゲーム史上希にみる迷作となっています。
 この作品はチェルノブイリ原発事故の直後(約2年後)というご時世に「原発事故で被爆した炭坑夫」を主人公にしたゲームを制作、しかもタイトルが「チェルノブ」という事で当然マスコミの非難が集中したものの「「チェルノブ」というのは当社が以前に出した「カルノフ」というゲームの従兄弟なので深い意味はないです」とかわした(実際には関連なし)という大いなるデコ伝説を残した記念作です。っていうか、設定についてのマスコミの突っ込みはなかったんでしょうか。アトミックランナーなのに。
 ゲームは武器とジャンプを駆使しながらステージ最後のボスを倒せばクリアといういたってシンプルな作りです。全7ステージを突破し、悪の組織「デスタリアン」を壊滅させましょう。
・変なゲーム
 シンプルな横スクロールアクションとはいえ、データイーストの作ったゲームなので変な所がたくさんあります。羅列するので知らない人は参考にしましょう。
 「世界観が異様」
 「後ろに戻れない(振り向くのさえ、ボタンを押さねばならない)」
 「チェルノブの動きが異様にスムーズ」
 「意味不明の敵」
 「アイテムの名前が変」
 「最終目的地が自由の女神」
 「すごすぎるエンディング」
(左)妙にスムーズな動きのチェルノブ (右)異様な敵キャラデザイン
 世界の異様さはさることながら、後ろに戻れないというのはスゴイです。ゲームは強制スクロールなのですが、チェルノブはレバーニュートラルで走り、後ろに倒すと立ち止まるのです(前に倒すと速く走る)。なにしろ当時のポスターのコピーが「レッツランニング!」ですからねぇ。アイテムなどはうっかり逃すとすぐ後ろにあるのに取れないという状況が日常茶飯事です。3つめのボタンで後ろを振り向きますが、この後ろを向くという行動をうまく使えるかがこのゲームのキモです。
 アイテムの名前はスゴイ。武器では重力分銅赤城山ミサイル、得点アイテムでは円高コインドル安コインなど、イッちゃってるネーミングが多いです。
 自由の女神を目指すというのは、実際の原発事故の場所やタイトル画面のソ連国旗マークなどを考えると、アブナイとしかいいようがないです。ゲームの中とはいえ、ソ連の放射能をアメリカに持ち込んでしまっています。
 それとチェルノブを語る上ではずせないのはエンディング!最終ボスを倒すといきなりローマ字で「OWATTE SHIMATTA」です。日本語の文章がなぜかローマ字で書かれています。ひとしきりキャスト紹介が終わると画面外に走り去ったチェルノブを追ってヘリも画面外へ。次の瞬間画面外から激しい銃撃の音と、チェルノブの死亡音が連続で聞こえるというダークなEDです。しかもその直後画面に大きく「エンド(カタカナ)」の文字。異常です。
 ゲームはなかなかシビアながらよく出来ており、面白い部類に入るでしょう。そうそう、チェルノブと言えば、SFCの「ファイターズヒストリー溝口危機一髪」にBOSSとして登場したこともあります。従兄弟カルノフに続いての登場というファンサービスです。
(左)自由の女神での死闘! (右)名文句「OWATTE SHIMATTA」

・メガドラに登場!
 さてこのチェルノブ、有名作でありながら存在自体がヤバイので移植版も2作しか発売されていません。電波新聞社によるX68000版とデコ自ら制作のMD版です。X68k版はアーケード版を忠実移植したもので、ほぼ違いは見当たらない職人技です。
 ここで紹介するのはMD版!コンシューマーで唯一の移植となったMD版は、アーケード版のヤバイところがうまく改良され、グラフィックなども向上したアレンジ移植版。「アトミックランナー」とか「戦う人間発電所」というヤバイ修飾語(?)もなくなり、アーケード版のストイックな「変さ」はなくなったものの、非常に面白い作品となりました。移植先にMDが選ばれるというのもなんともらしい感じです。
 システム等の変更点はないです。アイテムも同じ、敵キャラにも変更はありません。ぱっと見アーケードと違うのはグラフィック。背景や敵キャラのグラフィックがMDの性能を駆使して鮮やかに生まれ変わっています。アーケードではできなかったのかやらなかったのかわからない多重スクロールも採用され、立体的になりました。
摩天楼なタイトル画面と、エジプトチックなゲーム画面
・世界観が・・・
 ピラミッドや遺跡などが描かれた背景グラフィックが醸し出す世界観はどことなくエジプトチックに統一されています。ソ連やアメリカを思わす生々しさがなくなり、安定路線になってしまったようで残念。タイトル画面と最終面だけはきちっと摩天楼です。グラフィック関係では「吹雪」「荒波」などの背景演出もあったりして賑やかです。
 ストーリーも変更。原発関係ではなくなりました。以下要約。
 「地球征服をたくらむ侵略者「デスタリアン」のよって科学者の父は殺され、妹のチェルミーがさらわれてしまった!父の助手であったチェルノブは父が遺したあらゆる運動能力を倍増させるコンバットスーツを身にまといデスタリアンに戦いを挑む!」
 要約してしまうと結構ありきたりですね。ゲームを開始するとストーリーが語られますが、虫の息のはずの父が延々と語るシーンは有名です。
 OPはかなり多いテキスト量で語られますが、漢字が使われていません。それにしても3人で一緒に開発していた「コンバットスーツ」を宇宙開発スーツと思っていたチェルノブもすごい。
・もろもろのこと
「システム、難易度等」
 グラフィックの描きかえやストーリー(世界観)の変更以外は基本的にアーケード版に忠実ですが、一部敵の性質が変わっていたりします。敵の弾や動きは速くなった感じで、難易度は上がったと言えるでしょう。
 アーケードに比べて初期状態のチェルノブのショットの飛距離やショットスピードが充分なので、黄色アイテム(飛距離・ショットスピードアップ)、の恩恵があまりなくなったような感じです。
「最終ボスとEDについて」
 最終ボスに関しては4段階のパターンが用意されており(アーケードは2段階)、4段階目のみアーケードと同じ攻撃(自由の女神にて)をしてきます。はっきり言って強いです・・・。何度か挑戦してパターンを見切りましょう!
 ちなみにあの素晴らしかったEDはパワーダウンしています。「OWATTE SHIMATTA」も普通に日本語の文章になっているし、チェルノブ惨殺シーンもありません。「エンド(カタカナ)」も普通に黒バックに「END」に変更。残念ですねえ。それにしてもEDの文章を見ると、さらわれたチェルミー(妹)は死んでしまっているようです。いつ!?最終ボスがチェルミーの変わり果てた姿なのでしょうか?
1面ボスを比べてみよう!
(左)アーケード版 (右)メガドライブ版
「BGMについて」
 地味なのか楽しげなのかよくわからないBGMも、MDの音源を駆使したアレンジで復活!しかも「はっ!はっ!うっ!」などの掛け声が入ったオリジナル曲も登場しています。アーケード版は2曲しかなく、全7ステージのうち5つのステージで使われた「チェルノブのテーマ」は有名ですが、MD版は全てのステージそれぞれに違った曲が使われていて変化に富んでいます。
「チェルノブの動き」
 鬼のようにスムーズだったチェルノブの動きは若干アニメパターンが削られているようで、ちょっとだけぎこちなくなっています。まぁそれでも充分スムーズですけど。
 AC版はチェルノブの死に方が1種類でしかも淡白でしたが、MD版は通常パターン(手足をもがくようになった)に加えて、水に落ちるパターンや重し(後半面の巨大なハンマーのようなやつ)に、ツブされて死ぬパターンなども追加されました。
・連射が・・・
 かなり気になった点としてアーケード版に比べて連射がきかなくなっているという点。アーケードでは速く連射すればするほど強力な攻撃ができました。最強のレーザーが途切れることなく一直線に飛ぶ様は気持ちよかったです。しかしMD版は表示弾数が減っていて、連射してもそれほど効果を生みません。なんとなくFC版「ファンタジーゾーン」のようなもどかしさを感じます。しかも、オプションで設定できるラピッドファイヤーを使っても手で連射した方が速いというのが…。ちなみにジャンプ中や立ち止まっている時の方が連射が速くなります
 その代わりなのか何なのか、「赤城山ミサイル」はAC版と比べてスピード、連射とも速く、さらに強力な武器になっています。
摩天楼の最終面と、自由の女神での死闘!チェルノブといえばこれ!
最終ボスの名前は「クィーン・デスタリアン」。チェルミー(妹)なのか!?
  グラフィックやBGMも豪華になり、一応グレードアップ移植ということになります。色々な事情から再現できなかった「チェルノブらしい」部分は仕方ないですが、それでもチェルノブをメガドライブに移植しようと努力したデコはやはりただものではないです。
 それにしてもアーケードに忠実な「チェルノブ」や「トリオザパンチ」などがパックになった「データイースト伝説」(SS)が発売されなかったのはかえすがえす残念です…。
対応機種 メガドライブ
データイースト
1992年10月16日発売 7800円

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